世界を君は救えるか×NARUTO

□世界を君は救えるか 番外編
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『はい、着きましたー。』

「此処だな。」

「っしゃあ!やってやるってばよ!」

『…忍の皆さんも着きましたー…』



 黒凪の声に「ん?」と振り返ったのは派遣された小隊のシカマル、ナルト、サクラ。
 そして最後に現れたのは小隊のリーダーであろうカカシ。
 キャー!と嬉しそうに飛び跳ねるルリに「なんでこの面子なんだろう…」と黒凪が物思いに耽る。



「あれ、黒凪じゃないの。さっきぶりだネ。」

『…ドーシテコノメンツナンデスカー』

「丁度非番だったんだよねえ、それが。」

『ウフフフ、コレガテンノイタズラ…』



 なんでカタコトなんだよ…。と先程と同じことを同じ様な表情をしてシカマルが言う。
 そして彼は黒凪の側に立っているデイダラ達を見るとその人数の多さにげんなりとした。
 ナルトとサクラもその珍しい程の大人数体勢に顔を見合わせる。



「…間一族がこれだけ居ると私達逆に邪魔になってる気がしてきた…」

「なんかそれ分かるってばよ…」



 そんな会話をしているとピクリとイタチが顔を上げ、デイダラ達に目を向ける。
 黒凪も徐に視線を上げるとイタチの背中から降りて構えた。
 その様子にナルト達も背後を振り返り武器を構える。



『丁度鉢合わせたみたいね。全員此処で仕留めるよ。誰1人これ以上進ませない事。』

「よし。」

「分かったってばよ!」

『返事したね?じゃあナルト達もその段取りで。』



 敵も突破しようと一気に散り散りになっていく。
 それを追ってデイダラやサソリなど暁メンバーが積極的に移動して行った。
 その後に続こうとしたシカマル達を「君等は私と此処で主力を迎え撃とう」と黒凪が声をかけ、その意図を察して限と火黒も散り散りになる。



「(上手く顔を隠してる間一族の方に俺達が向かわない様に仕向けたって感じだねえ)」

「(ったく、相変わらず得体の知れねぇ奴等だぜ…)」

「(やっぱり私達をあの顔を隠してる人達に近付けないつもりなんだ…)」

「どっからでも掛かってこい!」

「私も此処で主力を迎え撃ちますぅ!」



 馬鹿が1人…いや、2人。とナルトとルリ以外の思考が見事に一致する。
 そんな中で6人の前で足を止めた忍達は散り散りになってもこれだけ居るのかと嫌になる程の人数が集まっていた。
 ざっと見て20人。1人3、4人は倒さなければならない計算だ。



『…それじゃあルリちゃん、貴方に3人任せるね。』

「はぁい!(こんなの楽勝だわぁ、どうせモブだしぃ)」

「ナルト、サクラ、シカマル。分担して行くぞ!」

「「「はい!」」」



 ナルト達4人が一気に走り出し、黒凪が外側に立っている忍を左右で2人ずつ結界で殴り一気に気絶させた。
 カカシも着々と倒していき、ナルトも影分身を用いて倒していく。
 皆の手際の良さに一瞬だけ出遅れたルリは翼を出して風を起こした。
 しかし扱い慣れていない翼は聊か強すぎる風を作りだし皆が突風に踏ん張りルリに目を向ける。



「えいっ!」

「っ、(敵味方関係なしかよ…)」

「(戦い方もよく分からない子だなぁ、アレ…)」

「(羽が白すぎて目が痛いってば)」

「(黒凪も呆れてるし…何なのあの子?)」



 びゅんびゅん時間おきに吹き荒れる突風に黒凪も髪を乱しながら敵を倒していく。
 すると一旦風が止み「きゃあっ」と声を上げてルリが転がった。
 うん?と皆が振り返ると既に彼等の周りに立っている忍は居ない。
 後はルリの前に立つ3人の男だけだった。



「あーらら。全員やられたらしいねえ。」

「どうして寄りにも寄って我々にこの女が宛がわれたのか…。」

「明らかに一番弱いじゃん!」



 げらげら笑う男達にルリがかーっと顔を赤くさせ「助けてぇ、カカシさぁん」とカカシに助けを求めた。
 しかしそれより早くルリの前に立ったカカシが徐に腰を下ろし、シカマルやナルト、サクラも構える。
 面倒だし此処は彼等に任せよう、と目を細めた黒凪はだらりと脱力した。



「我々3人はこの盗賊団のリーダー的存在…いわばスリートップ。」

「そう簡単にやられはしないさ。」

「俺はちょっち弱いから弱そうな奴から攻めてくぜい!」



 最後にそう啖呵を切った男が向かった先はシカマル。
 少し目を見開いたシカマルが印を結び影を伸ばす。
 お?と眉を上げた男は器用に影から逃れてクナイを構えた。
 その軽い身のこなしにシカマルが眉を寄せるもナルト達は残りの2人に苦戦している。



「シカマルぅ! 私が助けるわぁ!」

『あらら。』

「!ちょ、」



 シカマルの影の軌道範囲に入り込んだルリははっきり言って邪魔そのものだ。
 更に動きを制限せざる得なくなったシカマルは男に懐を取られてしまう。
 しかし黒凪は動かない。振り下されたクナイを見たシカマルが「おい!クナイ!」とルリに指示をだしルリが「え、え、」と言いながらシカマルのホルスターからクナイを出して振り上げる。



「お、偶然にしちゃあ上手く受け止めたな!」

「っ…、い、痛ぁい…」

「助かった…悪いな」

「う、ううん…って言うか黒凪さぁん!ちょっとぐらい手伝ってよぉ!」



 そう叫ぶルリにちらりと目を向けて「分かった」と言いながら黒凪が構え、苦戦しているナルトやカカシに手を貸した。
 それを見て「違うでしょお!?こっちよぉ!」と声を掛けるルリに「あいつは俺には手を貸さねえよ」とシカマルが眉を下げて言う。
 ええ!?と顔を上げたルリは彼の表情を見て目を見開いた。



「俺はあいつに好かれてねぇんだ。だから…」

「嫌われてるって事!?あの女ってそんな事で無視したりするのぉ!?」

「はは、まあな」

「なんでぇ!? なんでシカマルが嫌われるのぉ!?」



 ルリの言葉に「俺が不幸じゃないから。」とシカマルが言った。
 その言葉に「何それぇ…」と呟いてこれだ、とルリが思う。
 あの女の汚い部分。ルリはそれを理解すると周りに響き渡る様な大声で話し始めた。



「ありえなぁい!そんな子供じゃないんだからさぁ!」

「…。(でも昔オレは、その子供っぽさに気付かされたんだよなぁ…)」



 こんな状況でそんな事を考えてる場合じゃない。それは分かってる。
 でもルリの言葉に思い出してしまったのだから仕方がないじゃないか。そんな事を1人考えて改めて振り上げられたクナイを目に移す。
 すぐに印を構えた。しかしそれより早く男の関節に結界が作られガンッと後頭部を殴りつける音が響く。
 ガクンと頭を降ろした男に小さく笑ってシカマルが黒凪に目を向けた。



《なんでもめんどくせーって言うけどね、あんた》

《あ?》

《そんな事言って殺されても私知らないよ。》

《……。》

《ちょっと、黒凪もシカマルも睨み合わないでよー…》



 黒凪とシカマルの険悪な雰囲気を見てシカマルと仲の良いチョウジが間に入ってくる。
 アカデミーに居た頃、黒凪は慣れないこの世界にイラついていた時であり、またシカマルの全てを"めんどくさい"と言う考えに自分が合わなかった事もあり彼等は常に険悪だった。
 シカマルもその頃は子供であった為、今ではやる時はやっているがあの頃は面倒だと何事も適当にやり過ごしていた。



《だってコイツが…》

《あんたが毎回言ってるのに止めないからでしょ。演習でペアになったら結局私が助ける羽目になるんだから》

《もー、黒凪もなんでシカマルにばっかりそんな事言うのさ…》

《嫌いだから。》



 ずばっと放たれた言葉にシカマルもチョウジも思わず沈黙する。
 シカマルもド直球にそこまで言われるとは思っていなかったのだろう、驚いた様に固まっていた。
 怖いものなんて無いんでしょ。幸せそうで良かったね。…でもこの世界じゃそんな事言ってると真っ先に死ぬよ。
 正面から放たれた厳しい、いや、寧ろ酷いと言うべきか。
 まだアカデミー生であるシカマルにその言葉は堪えたらしく、彼はいじけて歩いて行ってしまった。



「(あの時はなんでそんな酷い事を言うんだって、本気であいつが嫌いだった。…でも)」

『私が居なけりゃ死んでたね。』

「死なねーよ。どうにかしてた。」

『ふーん。』



 …なぁ、まだ俺は平和ボケしたガキに見えんのか、あんたには。
 シカマルのそんな言葉に黒凪が振り返る。
 ちょっとシカマルぅ、あんな女に話しかけなくていいよぉ!と縋り付いて来るルリに「悪い、ちょっと黙っててくれ」と言って再びシカマルが黒凪を見た。
 黒凪の脳裏にアカデミーの頃に初めてシカマルと組んだ演習の出来事が過る。



《シカマルの命、取ったー!》

《!(やば、シカマルが殺される…)》



 勿論これは演習だ。だがこの世界に早く慣れようと必死だった黒凪や限達は真剣にやっていて。
 それはこの世界の残酷さを子供ながらに理解していたからで。…だから「何とかしなければ、」と構える。
 しかし今にも武器を振り下されんとするシカマルは随分と余裕の顔をして。
 そして言ったのだ。



《…めんどくせー…。めんどくせーからやられるぜ、黒凪。》



 …と。
 あの言葉を聞いた時は平和ボケしたガキが、と大嫌いだったものだが。
 黒凪が小さく笑みを浮かべて口を開く。



『ううん。今のあんたは結構好き。今のはちょっとした意地悪。』

「それと確認だろ。俺が諦めたか諦めてないかの。」

『かもね。でも諦めてても助けてたよ。』



 アカデミーからの昔馴染みなんだからさ。
 そんなシカマルと黒凪の会話を聞いてルリが呆然と座り込む。
 何なの、なんでちょっといい話になってるのよ…。
 そう考えて戦いを終わらせたカカシ達に目を向ける。



「シカマル、大丈夫か!?」

「あぁ。何ともない。」

「災難だったな。まあ今回は運が無かった。」

「はは…、そっすね。」



 ちょ、ちょっとナルト!
 そんなルリの声に「へ?」とナルトが振り返る。
 ナルトは昔から不当な扱いを受けてたし、この話を聞いたら絶対黒凪を嫌う筈!とルリが口を開いた。



「さっき黒凪がシカマルの事が嫌いだからってシカマルの事を見捨てたりしたのぉ!」

「へ?」

「おいおい、それは言い方が悪いぜ。さっきの会話聞いてりゃ…」

「不幸じゃないから好きじゃないんだってぇ!どうせ自分も不幸じゃないくせに、意味分かんないよねぇ!」



 ルリの言葉に「あー…。なんて言うかその…うーん…」とナルトが歯切れ悪くそう言って眉を下げる。
 すると散り散りになっていたデイダラ達や限達も戻ってきて「なんだなんだ」とルリの様子に興味津々な様子を見せた。
 それを見たルリは「皆も聞いてよぉ!」と黒凪を指差す。



「黒凪って実はぁ、とっても嫌な奴なのぉ!」

「…大丈夫? 君だいぶ責められてるケド…」

『私の事を嫌う人間なんて山ほどいますよ。偏見強いし。』

「あ、自覚あったんだ…」



 不幸じゃない人が嫌いなんだってぇ!それでねぇ、不幸じゃなかったら死んでも良いみたいなのぉ!
 なんだかんださっきはシカマルを護ったけどぉ、私が居なかったらきっとシカマルは殺されてたんだよぉ!
 そんな事を喚くルリに「へー」と言った反応しか返さないデイダラ達。
 その反応にルリの怒りはヒートアップして行く。



「なんなのぉ!?なんで皆そんな反応…、あ!皆黒凪が上司だから言えないのぉ!?こんな女皆でやればすぐに倒せるよぉ!」

「そう言ったことは関係ない。黒凪さんには恩がある…だから共に行動しているだけだ。」

「つーかそいつの性格が色々とやばい事は分かってる。うん。」

「俺もそこの所は一応理解済みだ。」

「そうかァ? 俺ぁ好きだぜェ」

「それはお前も頭がおかしいからだろう。」



 なんか聞いた事ある声…。
 なんて思われない様にイタチが話し始めたあたりで彼等を結界で包んだ。
 ちょっと、なんで結界で閉じ込めちゃうのよ。と声を掛けてくるサクラに「色々と事情があって。」と笑顔を張りつけると報告頼んでも良いですか?と声を掛けて彼等を無理矢理里へ帰らせる。
 そして自分の結界を摺り抜けて中に入れば先程の会話の続きが耳に入って来た。



「性格悪い事が分かってるんだったら何で嫌わないのよぉ!」

「あいつの考え方に難癖付ける理由が無ェんだよ。基本的に俺等と同じなんでな。」

「はぁっ!?」

「俺達は人を好んで殺す様な人間の集まりだ。だからこそ黒凪さんの考え方に理解を示す事が出来る。」



 無表情で的確にサソリ達が言いたい事をまとめ上げたイタチ。
 しかし彼だけは暁のメンバー達の中でも根本が違う。
 だからこそイタチだけは黒凪の事を距離を保って黒凪"さん"と呼ぶのだろう。
 そんな事を考えている限にルリが「限くぅん!」と助けを求める様に声を掛けた。



「限君なら分かってくれるよねぇ!?だって限君は人を殺す事を楽しんだりしないしぃ…」

「…。でも人に虐げられてきた。」

「!」

「そんな俺の事を受け入れてくれたのは、あいつが最初だ。」



 彼等の言葉に黒凪が嬉しそうに笑みをこぼす。
 するとルリが視線を泳がせ「で、でもぉ!私は黒凪の考え方に皆が染まったら駄目だと思うのぉ!」と再び喚き出した。
 黒凪の考え方を理解出来ちゃ駄目なんだよぉ!そんな彼女の言葉に皆がげんなりと顔を見合わせる。



「今からでも遅くないよぉ、もう皆人を殺しちゃ駄目ぇ!」

【お前マジで言ってんの?】

「え…」

【この世界じゃあ弱けりゃ死ぬんだぜ?そんな生温い考えが通用するかよ。】



 だからこんな風に歪んじまったわけだろォ?俺達はさ。
 火黒の言葉にルリの言葉が詰まる。
 俺からしたら君の方がよっぽど変だなぁ。妙に平和ボケしてるって言うかさァ…。
 そう言ってニヤリと笑う火黒にルリが俯いた。


 
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