世界を君は救えるか×NARUTO

□世界を君は救えるか 番外編
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 ――何なの。何なの何なの何なの!!
 なんで私が間違ってるみたいな言い方されるのよ!普通は私の言ってる事が正解でしょお!?皆私の味方でしょお!?
 こいつだ、この女が居るから可笑しいんだ。
 ギロ、と目の前に立つ少女を睨み付ける。
 途端に頭に声が響いた。



「――そうさ。彼女が居る限り君が彼等の特別になんてなる筈がない」

「!!」

「此処はね、彼女によって変化させられた世界なのさ。彼女が支配してるんだよ。」



 彼女が自分なりの正義を振りかざして、結果的に暁のキャラクター達や木ノ葉の一部の忍が生き永らえてる。
 彼女のおかげで助かった人間も多いけど、意味も無く死んで行った人間もこれまた多い。
 …そうよ、あの女が間違ってるのよ。
 ルリの微かな声に黒凪達が振り返る。



「あんたは間違ってる!!皆を救うのは私なの、あんたじゃないのぉ!!」



 殺し合いなんて肯定するべきじゃない!
 涙ながらに叫ぶルリに黒凪が徐に一歩を踏み出した。
 あんたなんて只の偽善者じゃない、自分の考えに周りを巻きこんで楽しいわけぇ!?
 黒凪が膝を曲げ、ルリに顔を近付ける。



『私だってね、この世界がもう少し優しいものだったら殺しなんて肯定したりしなかった。…でもこの世界じゃ強さが無ければ殺される。』

「っ、そんなの皆と仲良くしてたいだけじゃない!皆を否定して自分が嫌われるのが嫌なだけでしょお!?」

『私がそんなタマに見える?』



 嫌われるのが嫌だから、なんて考えが出て来るのはあんた自身がそう思ってるからだよ。
 私はあんたと違ってシカマルに嫌われようと、カカシに嫌われようと全然構わない。
 イタチや限や火黒と一緒に任務に行けなくなっても構わない。



『ずっと一緒に居なくても良い。嫌われたって良い。…ただ生きててくれれば、それでいい。』



 生きてるだけで毎日じゃなくたって顔を見られるし、話してる姿だって見られるし、笑ってる姿だって見られる。
 …死んでしまえば何もなくなるんだよ。
 黒凪がルリの前髪を掻き分けて彼女の額に触れた。



『私は私が気に入った人が死ぬのが一番嫌いなの。だから何が何でも生かす。その為に行動してる。』

「っ、」

『その影響で何人も殺して来た。でも私は幸せよ、好きな人間は皆生きてんだから。』



 そしたらその結果、私に同調して一緒に喜んでくれる人が増えて行った。…それが間一族なの。
 ルリの身体が徐々に透けて行く。彼女は自分の身体の変化に気付き驚いて両手に目を向けた。
 世界中の全員を幸せになんて出来ないし、全員の考え方が統一される筈も無い。
 だったら私は自分と自分の大好きな人だけでも幸せになる様に動くだけなんだよね。



「何よぉ、なんで身体が透けてぇ…!」

『あんたは元の世界に帰りな。この世界には根本的に合ってないよ。』

「やだぁ、折角この世界に来れたのにぃ!」

『殺しが肯定されない世界にこそあんたの居場所はある。…ここじゃ無理だ。』



 うわあ凄い。時空を歪ませてるよ…。
 そんな風に呟いて眺めていた"神"はゆっくりと此方に目を向けた黒凪に目を見張る。
 次余計なちょっかい出したら――…
 その言葉が放たれた途端にルリが完全に消え去った。



『ぶん殴ってやる。』

「――…おぉ、こわ。」



 ひゅんっと消えた"神"にため息を吐いて立ち上がった黒凪は「何処に話してたんだよ」と言うサソリの言葉に「ちょっとね」と曖昧に返して歩いていく。
 そんな黒凪の様子にデイダラ達が顔を見合わせていると「久しぶりだったなァ、あの子に啖呵切る奴なんてさぁ」と火黒の声が聞こえて振り返った。
 火黒の言葉に小さく頷いた限は「墨村以来だ」と呟く様に言う。



「…喧嘩売られて拗ねてるって事か? うん」

【……いや、多分迷ってんだと思うぜ?】

「迷う?」

【あぁ。昔も良守クンに400年信じて来た自分の考えを覆されて最終的にキャパオーバーでぶっ倒れたしなァ】



 黒凪がぶっ倒れるとかヤバくね?と素直に言った飛段に一同が深く頷いた。
 あんな馬鹿でも考える事は考えてやがんのか…。そんな風に続けて言ったサソリにまた一同が頷く。
 今回は良くも悪くもルリと言う少女に随分と振り回された。
 だがその結果として普段は垣間見える事のない彼女の一面を見る事が出来たのだから最悪な日と言う訳でも無かったが。



「――黒凪。」

『…ん?』

「帰るぞ。どっちに歩いてんだお前は。」



 呆れた様に掛けられたサソリの声に振り返ると皆が正しい屋敷の方向に身体を向けて此方を見ている。
 あ、ごめん…。と引き返してきた黒凪を徐に限が持ち上げて一斉に走り出す。
 黒凪は目まぐるしく変化する景色をただぼーっと眺めながら限の胸に頭を預けて目を細めた。



『…限、』

「?」

『私間違ってるかなぁ』

「…俺にとっては間違ってない」



 多分あいつ等にとってもお前の行動は間違ってないよ。
 そう呟く様に言った限に目を細めて小さく笑う。



『――なら良いや。』




 時々不安になる。


 (自分を信じ続ける事は、)
 (やっぱり怖いから。)

 
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