Long Stories
□蓮華の儚さよ
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巻き戻しの街
「ふーん。これもイノセンスの能力なんだぁ?」
【ロード様、あまり無暗に手を出されては…】
「何?この僕に指図するのぉ?」
生意気だなぁ…。
そう呟いた少女。
その背後に黒凪が音も無く着地した。
「あ、来たぁ♪」
『…やっぱり…』
はー…と目を覆った黒凪に少女が小首を傾げた。
少女の手には先にかぼちゃの飾りが付いた傘、その側にはカフェで破壊したアクマの代わりに呼び寄せられたのだろう、3体のレベル2のアクマが居る。
そしてその少女の足元には黒い包帯が人型になって落ちていた。
『可哀相に。』
「ねぇ、これ何?」
黒く焦げた包帯を摘まんで問いかけた少女に黒凪が小さく笑った。
私のイノセンス。
その言葉と同時にその包帯が動きだし少女を拘束する。
『゙黒ノ人形劇(ティーテレス)゙』
「っ、」
『常時開放してる私のイノセンス。…無暗に触るもんじゃあないね』
くいと包帯を引いて爆発させる。
しかしこんなものでは殺す事は出来ていないだろう。
案の定、何ともなさそうな顔でロードが起き上がった。
『はー…やだやだ。これだからノアは…』
「あれぇ?僕等の事知ってんだぁ」
『知ってるよ』
もう一度包帯を引いて爆発させる。
するとずっと黙っていたレロがぷるぷると怒りに震えながら口を開いた。
「だー!何度爆発させても無駄レロ!」
『ふーん。』
復活しかけたロードにもう一度爆発を。
ムキー!と暴れるレロを握っているロードはゆっくりと起き上がった。
いい加減にしろ…!とアクマ達が襲ってくる。
其方に目を向けた黒凪だったがアクマを止めたのは以外にもロードだった。
「ダメダメ。殺しちゃダメ〜」
『……。』
不可解な言葉に爆発の手を止めた。
徐々に元の姿に戻って行くロード。
彼女の大きな目が黒凪を映した。
「もうちょっとで面白い事をやってくれるんでしょぉ?」
『は?』
「千年公が言ってたよぉ。ボクはそれが楽しみなんだぁ♪」
だからぁ…。ピッと目の前にロードの人差し指が向けられる。
君は殺さない。殺させない。…誰にも。
ま、死なない身体だから心配してないけど♪
「お母さん、あれなぁに?」
「え?」
「やれ。」
ロードの声に応える様にアクマが其方に向かって行く。
黒凪の包帯がすぐさまアクマに向かった。
その瞬間に彼女の耳元でロードが微かな声で囁く。
「わー、やっさしい♪」
『!』
黒凪に振り返ったアクマ達が一斉に弾丸を放つ。
体中に巻かれたイノセンスで腹部への攻撃は防げたが咄嗟の事に頭部への防御が遅れた。
その所為で頭を撃たれ一瞬で意識を失い黒凪が倒れる。
再生しだす黒凪の頭をロードがレロで破壊した。
「んー…。すぐに再生するねぇ…」
黒凪の手に巻かれている包帯が色を無くして白く染まる。
その様子を見たロードは小さく笑って立ち上がった。
中々解けない様にどっかに括りつけといてぇ。
彼女の言葉に「はい」と頷くアクマ達。
ロードはレロを担いで歩き出した。
「さーて、次はイノセンスだなぁ…」
「ちょ、ロードタマ!?まだやるつもりレロ!?」
「あったりまえじゃん。折角来たんだしぃ」
そう言って笑ったロードがミランダの元へ向かって行く。
思い知れば良いよねぇ。
呟く様に言ったロードにレロが目を向けた。
「人間の汚さとか、…自分の弱さとかさぁ」