Long Stories

□蓮華の儚さよ
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 復活の葉



『…あ、ユウだ』

「起きたか」



 目を開いて最初に見えた長い髪に小さく微笑んで黒凪は大きな欠伸を漏らした。
 おはよう黒凪ちゃん、そんな声に細めた目を向ける。
 黒凪と目を合わせると室長であるコムイがにっこりと笑った。



「流石は神田君。相変わらず誤差が無いね」

「るせえ」

『あー…この流れはあれでしょ、次の任務…』

「そうそう。寝ちゃった君を神田君が連れて来る偶にあるパターンだよね」



 全く、眠っている団員を引き摺り出すほど人が足りてないのかよ…。
 ボソッと毒づいて再び欠伸を漏らす。
 すると背後で「あ。」と驚いた様な声が掛かった。
 のそりと神田の背中の上で振り返ると目を見開いて此方を見ているアレンが居る。



「黒凪!?もう大丈夫なんですか!?」

「チッ、るせぇ…」

『大丈夫大丈夫。眠くて寝てただけ』

「ほ、本当に寝てただけ…?」



 そう言ってんだろうが。
 ギロッと睨みを効かせて言った神田にアレンも同様に目を向ける。
 そんな2人を止める様にコムイが間に入るとアレンを見て笑顔を見せた。



「アレン君って寒いの苦手?暑いのは?」

「?…別にどちらも大丈夫ですけど…」

「そっか!それは良かった!」

『ね、私にその確認は?』



 君は神田君が居れば良いでしょ?
 笑顔で言ったコムイに「分かってるね」と目を細めて笑った。
 その笑顔はやはりまだ本調子ではない様に見える。



「ある村で吹雪になったと思ったら突然熱風が吹き出すと言う異常気象が起きているんだ。」

「成程、その原因がイノセンスかもしれないと…」

「その通り。だから君達の任務はそのイノセンスの回収。良いね?」

「分かりました」



 チッと眉を寄せた神田の眉間をつつく。
 背に乗った状態でやっている為神田はその手を止める事が出来ない。
 止めろと低い声で唸っている訳だが黒凪は何とも思っていない様子で眉間をつつき続けていた。

























「よーっす。俺等も一緒に行くさ〜」

『…エクソシストが総勢5名じゃん。私要らなくない?』

「要る要る!黒凪の包帯があれば寒くも無ければ暑くも無いってコムイが言ってたさ!」

『うーわ、私はエアコンかっての。』



 だははは!言えてるさー!
 予想以上に本気で笑うラビに神田と黒凪、この2人の眉間に深く皺が刻まれる。
 その顔を見たラビはまたプッと吹き出した。



「顔を顰めるタイミングも一緒!?マジで仲良いさお前等!!」

『え、やった』

「喜ぶな。馬鹿野郎」

「(うわー…カオス…)」



 爆笑しているラビ、それを傍観しているブックマン。
 ちょっと喜んだ黒凪にキレかかっている神田。
 今この状況がどんなものかと問われると正確に答えられる自信がない。
 そんな状況下でアレンは肩身が狭い思いで縮こまっていた。



 
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