Long Stories

□世界は君を救えるか 番外編
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  ヒーロー協会兼、裏会

  転生トリップではありません。
  あくまでも結界師の世界とヒロアカの世界は同じの設定。
  この物語の時点で結界師の原作の時間軸から100年経っています。
  裏会はヒーローの情報を管理し統括する組織として存在し、夢主はその総元締。



『…校外学習?…あー…そろそろそんな時期か…』

≪そうだよ。今年も職場体験の名目で1年生を連れていきたいんだけど構わないかな?≫

『構わないよ。日にちはいつ頃になる?』

≪丁度1ヶ月後を予定中。あ、でも例の"あれ"の準備があるならもう少し遅くしても良いけど…≫



 いや、別にその準備に時間はかからないから。
 ちなみにこっちのレベルはどれぐらいが良い?
 大量の資料を読み進めながら黒凪がそう問えば電話の向こう側の根津は「うーん…」と少し迷う様に唸った。



≪そっちにも情報は行ってると思うけど、今年の1年生は早い段階でヴィランとの戦いを経験している。それに雄英体育祭でも大いに盛り上がったの見たでしょ?≫

『え、見てない。』

≪今年も見なかったの?本当にテレビ見ないんだなぁ君って…≫

『ごめんごめん。こっちも忙しいし…あ、あと私子供嫌いだし。』



 本当、そんななのによく校外学習を許してくれるよね。
 そう言った根津にギシ、と椅子の背もたれに体重を預けて近付いてきた閃にサインをした資料を手渡す。
 閃は電話をしている事に気を使ってか何も言わずに部屋を出て行った。



『だって雄英の卒業生は毎回うちにヒーロー登録しに来るでしょ?結局来るならいつ来ても一緒。』

≪まあ確かにそうだけど。…それじゃあ1ヶ月後で手配を頼むよ。レベルは10で。≫

『10?…10なら私だとか限になるよ?良いの?』

≪うちの生徒が傷つかなければね。寧ろそれぐらいの脅威の方が成長するだろうし。≫



 ふーん。スパルタな世の中だねえ。
 そう言って通話を切り限が運んできた資料に目を向ける。
 限は通話を終えた様子の黒凪を見ると徐に口を開いた。



「また雄英の校外学習か?」

『うん。今年のレベルは10だってさ。私等の出番だよ』

「あぁ…今年はレベル高いらしいからな」

『え、あんたテレビ見てんの?そんなに豊作なんだ?今年。』



 ――…エンデヴァーの息子も居るし、ワン・フォー・オールの継承者もいるらしいぜ。
 そう言って入って来たのは資料を抱えた閃。
 それに爆豪って言う天才も居るらしいし。後はインゲニウムの弟も。
 ドサッと置かれた資料にげんなりとする黒凪。
 閃はそんな黒凪を見ると徐に部屋の中に在るテレビをつけた。



「ほら。随分前なのにまだ雄英体育祭の話題が出てる。よっぽど凄かったんだろ。」

『へー…。』



 第1位となった爆豪君は――…。
 エンデヴァーの息子である轟君。
 あの緑谷と言う少年…。
 …と、このようにニュースを何度切り替えても雄英高校の1年生の話題ばかり。
 そんなテレビを眺めていた黒凪はドサッと椅子に凭れ掛かり息を吐いた。



『毎年4、5人だったよねえ。あれに参加すんの。』

「また今年もすんのか…。レベルは?」

『10だってさ』

「10!?…やっぱ今年は思い切るなぁ雄英…」



 それともそんなレベルを指定してくるって事はよっぽど…。
 いやいや、そんな事より黒凪と限と火黒を入れても後2人予定を確認して呼ばないといけねーし…。
 そんな事をぶつぶつ呟く閃に限と黒凪が顔を見合わせる。



『…もういっそ竜姫で良いんじゃない?竜姫とあと………鋼夜とか』

「テキトーだなオイ…」

『でも裏会の中じゃかなりの手練れでしょ?良いじゃんそれで。』

「…じゃあ竜姫さんの予定確認しねえとな」



 そう言ってのそのそと出て行った閃に続いて限も部屋を出て行く。
 黒凪は徐につけられたままのテレビに目を向ける。
 テレビのニュースではまだ雄英高校の生徒達についての特集が流れていた。






























「わー…でかいな…」

「此処が裏会総本部…!」

「全ヒーローの情報を総括するいわば世界の管理課の最高峰…。裏会の幹部中の幹部には"個性"が一般に現れていなかった時代から超能力を持ち今まで生き延びてる人もいるって噂だし、やっぱり凄い人達の集まりなんだろうな。しかも噂だと…」

「っせーぞデク!」



 うわぁごめん!
 ぶつぶつと話していた緑谷がすぐさま考える事を止めて反射的に爆豪の怒鳴り声に謝った。
 そして再び目の前に聳えたつ建物を見上げ、感嘆した様に息を吐く。
 とても長い階段の先に立っている屋敷の周りは薄い雲で覆われていた。



「ぼーっとすんな。時間の無駄だ」

「「「はーい…」」」



 皆でゆっくりと階段を上って行く。
 階段を上り切って扉の前に辿り着くと雄英の生徒達を待ち構えていた様に金髪の青年が小さく頭を下げた。
 そんな青年を見た相澤は「どうも。本日はよろしくお願いします」と丁寧にあいさつをして青年よりも深く頭を下げる。
 どう見たって相澤よりも年下の彼に何故そこまで敬意を払うのか、と生徒達が顔を見合わせる中で扉が開かれた。



「どうぞ。…あ、そこ段差あるんで。」

「聞いたか?気ィ付けろよー」



 皆が門を潜ると青年が扉を閉ざして相澤の前を歩いて行く。
 今から軽く案内するんで。そう言った青年に「あの!」と芦戸が手を上げた。
 青年の目が芦戸に向く。彼女はそんな青年の反応に気兼ねする事無く口を開いた。



「お兄さんのお名前ってなんて言うんですか?」

「あ、俺も気になってた。案内してくれるんなら名前知りてーよな。」

「…あー…、一応裏会の幹部に属してる影宮閃です。担当は情報収集や隠密行動を主にする部隊の統括…。…よろしく」



 あんなに若いのに幹部――!?
 皆がそう声を上げると「一応言っておくけど俺もう100年は生きてるんで」そう言って再び歩き始めた閃に皆がシーンとする。
 …え、じゃああの人が噂の幹部中の幹部…?
 そうひそひそ話しだす生徒達に「しまった、余計な事言ったな…」と閃が眉を寄せた。
 そんな雰囲気で裏会の中をざっと説明し、やがて生徒達は本日のメインイベントである「腕試し」の会場へ辿り着く。



「えー…と。毎年恒例の"腕試し"ですが…其方は生徒さんを何人出します?」

「此方からは4人。レベル10だと聞いてるんでそれなりの成績を出した4人にしときました」

「分かりました。じゃあこっちからも4人連れてきます。其方の4人を一歩前に並ばせといてください」



 そう言って歩いて行った閃を見てから相澤が生徒達に目を向ける。
 生徒達の中から一歩前に出て来たのは爆豪、轟、飯田。そして緑谷。
 緑谷はドキドキと動いている胸を手で押さえて緊張した様に息を吐く。4人共各々のコスチュームを見に着けていた。
 裏会総本部を見学出来る校外学習。
 毎年恒例のこの行事は最後にメインイベントとして特別な予定が組まれている。



「("腕試し"…。裏会総本部に属する人達と雄英高校の生徒が"個性"で戦って、文字通り腕試しをする場…)」

《毎年の向こうの強さのレベルは校長先生が決めてる。今年のレベルは最高レベルの10だ》



 1週間前に相澤によって発表された言葉が過る。
 レベルが10だからな…。裏会の人間と戦ってもどうにかなりそうな奴をこっちでピックアップしておいた。
 その中から話しあって4人選べー。
 そんな相澤の言葉によって選ばれた4人である爆豪、轟、飯田、緑谷。
 4人は閃によって連れてこられた裏会の4人に意気揚々と目を向けた。



『お、テレビに出てた人達がいる』

「ねえ、ホントにあたしとあの子達が戦うワケ?大丈夫?」

【まーどうにかなるんじゃね?】

「……」



 白髪の少女に金髪のグラマラスな女性、包帯男に目付きの悪い少年…。
 ヒーローと言うよりはどちらかと言えばヴィラン。そんな印象の4人だった。
 ぽかーんと生徒達が4人を眺めている中で一歩前に踏み出して話し始めたのは白髪の少女だった。



『どうも雄英高校の皆さん。私はこの裏会の総元締をやってる黒凪。よろしくね』

「総元締…。…総元締ぇ!?」

「それってNo.1って事じゃ…」

「えええっ!?」



 あ、そうそう。私此処のNo.1。
 にへ、と笑って言った黒凪に「え゙――!?」と生徒達の驚いた声が響く。
 今年で600歳ぐらいになりまーす。
 さらっと放たれた言葉にもまた「ええええ!?」と驚きの声。
 その様子に楽しそうに笑った黒凪は「まあ落ち着いて」と皆を落ち着かせると笑顔で口を開いた。



『とりあえずこっちの自己紹介しておくね。この金髪の人は竜姫。此処のNo.2。』

「よろしくねん♪」

『で、こっちの包帯男は火黒。こっちは限。2人共私の側近。』



 何も言わず突っ立ってるだけの火黒と限に黒凪が困った様に笑い「そちらは?」と立っている4人に目を向けた。
 相澤が最初に爆豪に目を向け彼が徐に口を開く。



「雄英高校1年、爆豪勝己。」

『わー、体育祭で1位だった子だ』

「…ケッ」

『あれ?反応悪いなあ。…まあいいや、次。』



 爆豪の隣に立つ轟が口を開く。
 轟焦凍。そうとだけ言って黙った彼に「うんうん、次。」と黒凪が隣の飯田に目を向けた。
 雄英高校1-A、飯田天哉です!Aクラスでは学級委員長をさせて頂いております!本日は宜しくお願い致します!
 あの人、かっちゃんとか轟君みたいなタイプの人の扱い分かってるなぁ…。
 そんな事を考えながら黒凪を眺めていると飯田の自己紹介に満足した様に笑った彼女の目が此方に向いた。



『君は?』

「は、はい!雄英高校1-Aの緑谷出久です!え、えっと…よろしくお願いします!」

『うん。よろしくね。…それじゃあ早速やる?"腕試し"。』



 黒凪が笑って小首を傾げると爆豪が「あの。」とぶっきらぼうに手を上げた。
 俺はあんたと戦いてえ。そしてすぐさま上げられた手は人差し指を伸ばし黒凪へ向けられる。
 その指先を見ていた黒凪は「いいよー」と随分とあっさり承諾した。



『君って上昇志向が高いタイプだね。結構好きよ。』

「んな事ぁどーでもいい…早くやろうぜ…!」

『はいはい。んじゃあ皆下がってねー』



 それじゃあ軽くルール説明。
 勝敗は折角だから今年の体育祭の最終科目と同じで場外に出すか戦闘不能にしたら勝ちにしよう。
 戦う場所は…、そう言って周りを見渡した黒凪は隅の方に立っている男に向かって「おーい」と手を振った。
 それを見た男が地面に手を着くと瞬く間に地面が盛り上がり、爆豪と黒凪を乗せて巨大なステージを作り上げる。



『あ、今のは裏会所属の人ね。土を操る異能者…じゃない、"個性"持ってる人。』

「制限時間は」

『無いよ。』

「殺すつもりでやっても構わねェよな?」

『勿論。』



 にっこりと笑って言った黒凪は「それじゃあ始め。」と軽い調子で言い放つ。
 それを聞いた生徒達がごくっと生唾を飲み込み、爆豪が黒凪を警戒した様子で構える。
 対する黒凪は警戒した様子も無く爆豪を見ていた。


 
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