Long Stories

□【黒子のバスケ】
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  私をお嫁さんにしてよね!

  黒子のバスケの桃井さつき成り代わり。
  青峰大輝オチ。



『大ちゃん!』

「あー?」

『この前また赤点取ったって聞いたよ!?補習になったらどーするの!』

「大丈夫だって。多分」



 多分じゃ駄目!と体育館の真ん中で声を上げる黒凪。
 その様子を見ていた今吉達が困った様に眉を下げる。
 今日は珍しく練習に来ているのだが、補習の危機だと聞くと億劫になってしまう。
 折角やる気が出ても"来れなく"なってしまうのだから困ったものだ。



『もー、また私の家で勉強ね。』

「はぁ!?なんで俺が…」

『なんで!?どうしてなんでなんて言えるの!』



 う、と青峰が言葉を詰まらせる。
 確かに赤点を取っておいて"なんで俺が"なんてフレーズは通用しないだろう。
 ぷりぷり怒る黒凪を見た今吉が足を踏み出した。
 その様子を見た他の部員達は徐に練習に戻る。



「こらこら、そこらへんにしとき。」

『今吉先輩…』

「桃井もほら、桜井が水欲しいって言っとたで」

『え!?あ、ごめんなさい桜井君!』



 うえ!?と跳びはねた桜井に同様の仕草をしてビビる黒凪。
 そんな2人の様子を見ていた今吉は小さく笑って青峰を見上げた。
 ほれ、お前も練習に戻り。
 そう言った今吉を見下した青峰はボールを落とし、体育館の入り口に向かった。



「なんや、今日はこれで終いか?」

「ああ。…つーか、今月分はこれで終わり」

「はぁ!?テメェ何ふざけた事…」

『大ちゃん!?』



 へいへい。と誰に応えているのか分からない様な返事をして去って行った青峰。
 全員が困った様に肩をすくませた。
 眉を下げた黒凪はすみません…、と今吉に頭を下げる。
 余計な事を言うんじゃなかった。
 目尻に涙を浮かべて頭を下げた黒凪に今吉が後頭部を掻いた。



「あー…、ま、しゃあないって。桃井が小言を言ってへんくても帰ってたわ。アレは」

『…はい』

「気にしな気にしな。桃井はようやってくれてんねんから」

『……、』



 そんな悲しい顔されると悲しいねん、な?
 そう言って頭をぽんぽんと撫でる今吉。
 その様子を尻目にうんうんと頷く部員達。
 青峰の事で落ち込んでいる黒凪や他の部員達を慰めるのは今吉の仕事。
 そんな雰囲気が確立されている今、彼が黒凪に対して優しくしている様子を見ても部員達は何も思わない。
 それは勿論、部内恋愛の話だ。
 他の部活の人間はまだ疑っている様子だが、これが普通なのだから仕方がない。



「おーい桃井。タオルくれ、タオル」

『あ、はい!』

「じゃあな」

『…ありがとうございます、今吉先輩』



 小さく頭を下げて若松の元へ。
 若松はタオルを受け取ると少し汗を拭い、彼もまた黒凪の頭を撫でる。
 あんま気にすんなよ、そう声を掛けてくれた彼にも黒凪は嬉しげに微笑んだ。
 その様子を体育館の入り口から眺めていた青峰は小さく舌を打ち、歩いて行く。



『はい、今日の練習は此処までです。後片づけはしますから、皆さん着替えを』

「いつもすまんなぁ。皆一応ボールは片付けとき」



 そう言った今吉に頷いて自分が出したボールを直す部員達。
 その様子を見ていた黒凪は深く頭を下げ、片付けに取り掛かった。
 次々と帰って行く部員達を見送りながら全ての片づけを終わらせる黒凪。
 息を吐いた彼女は鞄を持ち、体育館から出た。
 すると肩を叩かれ、振り返った時に頬に指先が触れる。



「よぉ」

『…大ちゃん』

「ご苦労なこったな、こんな遅くまで」

『待っててくれたの?』



 ふん。と顔を背けた彼に眉を下げた黒凪。
 鍵を閉め、職員室に直した2人は何を話すでもなく帰路を歩く。
 徐に絡められた片手に黒凪がチラリと青峰を見上げた。
 そしてとんと肩を彼の肩…正確には二の腕だが。にぶつかれば彼からも同様に返される。



『どしたの?外ではあんまり甘えないのに。』

「るせ」

『素直に練習これば良いじゃない。そしたら…』

「部内恋愛は禁止だろ」



 …だから来ないの?練習。
 黒凪にんなワケあるか。そう言って握る力を籠める青峰。
 続けざまに「バカ。アホ。」と罵られた黒凪はむむむと眉を寄せ足を踏む。
 今度は返してこなかった。



「…お前、大事にされてんだな」

『何に?』

「先輩とか」

『……それは私が大ちゃんに構って貰えなくてぐちぐち言ってたからです。』



 は?と振り返った青峰。
 そんな青峰からふいと顔を逸らした黒凪。
 可哀相だから慰めてくれてるだけだよ。
 そう言った黒凪に「あーもう、」と青峰が目元を覆った。
 青峰を見上げた黒凪は「なによ」と青峰の顔を覗き込む。



「こっち来んな」

『いやいや、一緒に帰ってるし』

「……。あー…」

『なによ、』



 笑い交じりにそう言って彼の片手を剥がす。
 意外とあっけなく離れた手は黒凪の手を離れ、次は彼女の顔を覆った。
 大きな手は黒凪の視界を遮るのには十分で、途端に視界が真っ暗になる。
 ちょっと。と彼の片手を剥がそうとするが、今度は中々離れてくれない。



「…お前、んな事言ったら先輩にばれるだろ」

『良いじゃないばれても。』

「良くねぇ。全然良くねぇ」

『なんでよ。』



 青峰の脳裏に浮かぶ。
 茶化される風景が。
 ばれているんだったら部活中に口喧嘩なんてしようものなら着替えている最中にでも…。
 はあぁぁ…。とため息を吐いた彼に「ゔ、」と彼の手を退かそうとしていた手を止める黒凪。
 眉を下げた黒凪は不安気に口を開いた。



『そんなにヤバい?』

「ヤバい。」

『……うう』

「ううじゃねーし。」



 ぺしっと叩かれ、うっと眉を寄せて目を瞑る。
 そんな顔を見ていた青峰はぷっと笑った。
 ばかみてーな顔。そう言って笑う青峰に黒凪が少し笑った。
 そして彼と繋いでいる手に力を籠める。
 ぷらぷらと振れば、彼はすぐに腕の力を抜いてくれた。



『このままどっか行きたいね、大ちゃん』

「あ?」

『先輩の事とか気にしないで良いぐらい、遠くまで』

「…例えば?」



 ハワイ?と言えば何処だソレ。と返される。
 ええー!?ハワイ知らないの!?と問えばアホ。と此方を見る青峰。
 場所だっつの。と言った彼に「いやそれも十分ヤバいから!」と言い返す。
 すると「そーなのか?」と訊き返す青峰。
 そんな青峰に黒凪は眉を下げて笑った。



『あはは。おバカだ』

「るせぇ」

『大人になって結婚する時に連れてってくださいねー』

「だから何処だっつってんだよハワイ」




 Marry me!


 (なんだよまりーみーって。)
 (はい、調べてね。)
 (教えろよ、そっちの方が手っ取り早いだろ)
 (いいから!宿題!)


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