Long Stories

□【銀魂】
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  君が居ればいくらでも強くなれる。

  銀魂の高杉晋助成り代わり。
  銀時寄り。夢主は女性。



『銀時』



 ゆっくりと手を伸ばし、冷えた頬に沿えた。
 微かに目を開いた銀時が顔を上げる。
 カチャリと銀時が抱えていた刀が音を立てた。
 彼は見張りの為に外に座り、刀を抱えている。
 夜遅くでもある上に疲れも溜まり眠ってしまったのだろう。



「…んだよ、高杉」

『ほっぺどーしたんだよ。』

「いって!ダイレクトに触んなよ!」

『なーにがダイレクトだ』



 こうか?とつねってやる。
 すると銀時は足をバタバタさせてのた打ち回った。
 いだだだ!と目尻に涙を浮かべた銀時にぱっと手を離してやる。
 彼は頬を抑え、恨めしげに黒凪を見上げた。



「…お前だってなー…」

『……いって!』

「やっぱ横腹に一発くらってんじゃねーか!」



 女の子なんだからもうちっと気を付けろ!
 そう言った銀時の頭に踵が落ちた。
 勿論黒凪が腹癒せに落とした踵だ。
 風に揺れる着物と鎧の隙間に微かに赤い血が見える。
 銀時はその赤を見ると目を逸らした。



『大体お前が戦場に連れて来たんだろうが!』

「お前が居たら力が出るんですー。」

『ざっけんな死にかけとるわ!』

「死ななきゃいいじゃん」



 死ぬわ。女なんだから。
 言い切った黒凪に思わず言葉を止めた銀時。
 マジで?そんなに酷いの?大丈夫?
 そんな風に言いながらすすす、と黒凪に近づく。
 ふんと目を逸らして黒凪は腕を組んだ。



「今も死にそうなのか?」

『風呂入れなくてな』

「…良いトコのお嬢様は違うねぇ。言う事が」

『あのなぁ…。あたしは女なんだから、』



 振り返った黒凪に笑顔を見せる銀時。
 黒凪は微かに目を見開いて動きを止めた。
 数秒程見つめ合うと銀時がニッと更に笑顔を見せる。
 …何を笑ってるんだコイツ。



「俺が死なせねーよ」

『あ?』

「大丈夫大丈夫」

『…何の自信だ。ったく』



 ほれ、交代。
 そう言って刀の鞘で銀時を押しのける。
 渋々立ち上がった彼が座っていた場所に腰を下ろした。
 居眠りをしていた銀時と同じように刀を抱え、前方を見る。
 銀時はがしがしと頭を掻いて中に入って行った。
































「戦闘開始ー!」

「っしゃあ!高杉、俺の後ろに……」

『ヅラ、背中任せたぞ』

「任せろ」



 くぉら!と銀時が声を上げる。
 が、気にせず目を見合わせた桂と黒凪は走り出した。
 すぐに敵の中に消えて行った2人。
 ぐぐぐと眉を寄せていた銀時は怒りと苛立ちのままに敵を斬り伏せて行った。
 ザックザックと斬り進める事数分。



「…あ。おーい高杉ぃー」

『んあ?』



 黒凪が振り返った拍子に目の前の敵をざくーっと斬り捨てる。
 うおおお、と銀時は倒れた天人を見下す。
 血を払う為に刀を振れば、ブンッと風を切る音が耳に響いた。
 全然死にかけてねーじゃん。
 銀時はそんな言葉を心の内に秘め、再び刀を振り回し始めた黒凪を見る。



『……、よいっ』

「サラッと斬れるもんだなー…。何で研いでんの?」

『ほっ、』

「…高杉さーん?」



 だからなんだよ、
 そんな風に返しながら目の前の敵を斬っていく。
 ぱしゃっと血が顔にかかっても気にする素振りを見せなかった。
 つかヅラの野郎何処行ったんだよ。
 視線を巡らせれば少し離れた場所で仲間を庇いながら戦っていた。
 ま、アイツなら死ぬことはねぇだろ。



『そいやっ』

「高杉ー」

『…しつこいっ』

「俺が!?……黒凪ちゃーん。おーい」



 なにさ。と黒凪が振り返る。
 血に濡れた刀を肩に担ぎ、トントンと肩を叩いていた。
 何?と銀時を見ながら背後の敵を切り捨てる。
 その様子を数秒程見ていた銀時は何々そう言う事?とニヤリと笑った。



「そーいやお前名字嫌いだったな?」

『ちょっと村に降りれば名も知れた名家だからな』

「うへぇ、嫌味ですコト。……護ってやるよ、黒凪。こっちこい」

『………』



 ここでもそんな事言ってんのかよ…、と呆れた様に眉を下げる黒凪。
 銀時は刀を振り上げ、黒凪は咄嗟にしゃがみ込んだ。
 黒凪の背後に居る天人が真っ二つに裂ける。
 ぐっと目元にかかった血を拭った銀時は手を差し出した。



『…血でぬるぬるじゃん』

「いーだろ。戦う男って感じで」

『……くく、言えてる』



 ぐっと手を掴んでやった。
 そうすれば銀時は嬉しそうに笑う。
 そして彼は決まってこう言うのだ。




 俺今無敵モードな。


 (あっぶねぇ!何やってんだよヅラ!)
 (俺では無い。よく見ろ、その刀)
 (……テメェか黒凪!)
 (手が滑った)
 (どう手が滑ったら俺の顔の真横に刀が刺さるわけ!?)


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