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□灯火三題 -泣きそうなほどに愛しい-
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 あたたかいが好き
 with 沖田総悟 from 銀魂



「……。なんでィ」

『…何でも。』

「俺の睡眠を妨げといてそれはねーんじゃないですかィ?」

『……だーってずっと寝てたんですもの』



 さっきまで起きてた。
 と返せばふるふると首を横に振る。
 目ェ開けてただろ?と問えば一瞬動きを止めたが、また首を振る黒凪。
 何処から何処までの範囲を眠っていたかについてはじっくり話し合う必要があるかも知れないが、先程のは確実に寝ていただろう。
 折角彼の仕事も休みで2人でゆっくりしていたというのに、額にアイマスクを着けて目を閉じていたのだから。



『…そんなに眠いの?』

「んー…。」



 最近は毎回こうだ。
 仕事が忙しいのは分かっているが、2人きりの時に毎度こんなふうにぼーっとされては少し寂しい。
 どんなに話題を振っても微妙な返事しか返さないし、何だか見ていて此方もぼうっとしてしまいそうだ。



『……。最近、疲れてるみたいだけど』

「…、すみませんねィ」

『別に良いけど…。……ううん、良くないよね』



 そう言い直した黒凪を片目だけ開いて見る沖田。
 そんな彼の目を見た黒凪はすくっと立ち上がる。
 「何処に行くんでィ」と問いかける彼を見下した黒凪は「帰ります」と返した。
 その言葉に微かに目を見開いた沖田。



『疲れてるみたいだし、ちょっとの間距離でも…、きゃあ!?』

「ちょっと待ちなせェ。そう意味じゃないんでさァ」

『いやいや、貴方疲れて…』

「じゃあ一緒に寝ましょうや」



 去ろうとすれば着物の帯をがっと掴まれ、後ろに倒される。
 痛みが襲うかと思えば彼の膝の上に落下した。
 何なの、と振り返れば肩に顎を乗せられ後ろから抱きしめられる。
 寝ましょうぜ、と肩に額をこつ、と当てた沖田の声が徐々に小さくなっていく。



『ちょっと、総悟』

「……んー……」

『んーじゃなくて、』

「ん。」



 いや、ん。でもないから。
 と声を掛けるがずるずると肩の場所にあった頭が下に下がっていく。
 やがて横にふらっと倒れた沖田を受け止めようとするが止めきれず2人で畳へダイブ。
 黒凪は自分の上に乗っている沖田の腕を見ると「ちょっと、」と沖田の顔を覗き込んだ。
 が、彼は声に少しの反応は示してくれるものの目を開こうとしない。



「暖かいですねィ。…これなら布団何て要らねェや…」

『春なんだから当たり前でしょ、冬じゃないのよ?』

「アンタが暖かいんでさァ」



 少し目を開いてそう言った総悟。
 彼の目は真っ直ぐと黒凪を捕えていた。
 そしてゆっくりとした動作で頭を抱えられる黒凪。
 170cmと平均と比べると少し小柄な彼だが、黒凪と比べると大きい上にがっしりとしている。
 寝惚けているとはいえ抜け出す事は到底無理そうだった。



『……もう…』

「俺は暖かいのが好きなんでねェ。…良い寝心地でさァ」

『……。』



 仕方がないなぁ、と彼にならって目を閉じる。
 その様子を片目を開いて見ていた沖田は少し微笑んだ。
 普段構ってくれない総悟はあまり好きじゃない。
 でも構ってくれて、優しくしてくれる総悟は好き。
 それでもずっと気持ちが変わらないのはやっぱり彼の事がどうしようもなく、



『(好きなんだろうなあ…、私が)』

「………」

『…ふふ、酷い隈』



 目元をすっと撫でる。
 普段の彼にはあまり現れない隈。
 それが目に見えて現れているのだ、本当に疲れていたのだろう。
 それでも私に会ってくれるのだから、愛されているのかなぁ。
 …なんて思いながら。ね。




 暖かい昼下がりに。


 (またあいつ等屯所の廊下で…)
 (良いじゃないかトシ!可愛い寝顔をしているしな!)
 (……チッ。今日だけだからな)


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