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□君が、笑う
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 些細なおしゃべりで、笑う
 with ラビ from D.Gray-man



 私は彼が好きだ、大好きだ。
 こんな戦争中に何言ってんだって思うけど。
 でも私は彼が好きで。
 得体の知れない彼が好きで。



≪ラビ、30cmジャンプして≫

「ほいよっ」

≪次バク転して弾丸回避≫



 私のイノセンスは視神経に寄生している。
 その為発動すればこの世界中の何処までも見る事が出来る。
 だがこのイノセンスは珍しく戦闘には特化していなかった。
 私は司令塔。いつも黒の教団の窓から外を見て戦ってくれているエクソシスト達に指示を出す。
 今も私は窓の外を眺めながら無線でラビに指示を出していた。



『…一旦側の路地に入った方が良いね。その後3秒後に飛び出せばAKUMAの前だよ』

≪オッケーさ≫

『……信じてね。大丈夫だから』

≪いっつもソレ言うさぁ。…大丈夫、俺は信じてるから≫



 軽い調子でそう言った彼は黒凪が言った通りに動いた。
 その度に私は口には出さないものの何度もお礼を言っている。
 偶に私を信じず突っ切って死ぬ人がいるから。
 …それでも死なない例外は、いるんだけれど。



≪…黒凪?聞こえてっか?おーい≫

『あ、何?』

≪終わったさー≫

『…本当だ、お疲れ様。じゃあ私次は神田の無線に行くから』



 おっけ、と返事が返りすぐさま無線を切り変える。
 耳元からは無線が繋がった事に気付いたのか神田が「おい」とぶっきらぼうに声を掛けてくる。
 この男は少し困った男だ。
 出会って間もない頃は殆ど話も聞かず突っ切って傷だらけで帰って来た。
 あまり良い印象は持っていない。だからこそヘルプのサインが出たのは驚いた。



≪どうすりゃいい。≫

『…数が多いね。とりあえず左の路地に入って』

≪チッ≫

『それから…。…!』



 言葉を止めた黒凪に「どうした、おい。」という声と共にガンと音が響いた。
 恐らく無線を叩いたのだろう、切羽詰まった場面だから仕方がない。
 が、黒凪は見えた背中に口元を緩めると神田に指示を出した。
 そのまま路地を進んで鉢合わせたAKUMAを倒して、と。
 その指示を聞いた神田は微かに眉を寄せる。



≪…逆方向に居るAKUMAはどうする≫

『そっちは大丈夫。助っ人が』

≪助っ人?≫

≪おーい、助けに来てやったぜユウ!≫



 あ゙?と眉を寄せる神田。
 黒凪が持つ無線はどれだけ距離があったとしても通じるものだが、直接AKUMAと戦っているエクソシスト達が持つ無線は互いが近くに居ないと通じない。
 …つまり今神田の無線に声を掛ける事が出来たラビは彼の近場に居ると言う事だ。
 黒凪の゙神田の無線に行ぐと言う言葉に機転を利かせてやって来たのだろう。



≪テメェ…、どういうつもりだ≫

≪もうちょっと黒凪と話してたいっていう下心さー≫

≪あ゙ぁ?≫

『その場で跳躍。あ、神田の方ね』



 俺も跳んじゃったさ!と笑い交じりの声が聞こえてくる。
 黒凪は思わずくす、と笑った。
 そして「ラビ、イノセンスをぐるっと回して」と言う指示に従ったラビはAKUMAを2体破壊する。



『大丈夫?』

≪俺は大丈夫さー≫

≪…チッ。馬鹿ウサギが来たなら俺はもう良い≫



 そう言って無線を断ち切った神田に微かに目を見開く。
 まさか気を使ってくれた、…なんて事ないよねぇ。
 黒凪は眉を下げ再びラビに指示を出し始める。
 やがて数分でAKUMAを全て破壊しラビは地面に倒れた。
 他のエクソシスト達の様子を見れば彼等も同じ状況の様でラビの方へ視線を戻す。
 ラビは黒凪の名を呼びながら空に向かって手を振っていた。



『…そっちじゃないよ、ラビ』

≪あれ?黒の教団ってこっちじゃなかったさ?≫

『方角は合ってるけどもう少し右だね』

≪ココ?≫



 そこ。と笑顔を見せながら言う。
 ラビはにへらと笑って再び手を振った。
 黒凪は見えないだろうけど、と手を振り返す。



≪黒凪、今日朝飯食べたさ?≫

『まだ食べてないや』

≪やっぱ?なんか疲れてるさ、声が。…俺今日朝飯こっちで食べたんだけどな、≫



 こっち、とは任務先の事だろうか。
 店の名前を告げられた黒凪は癖ですぐさまその店を探してしまう。
 無事に見つかった店はラーメン屋だった。
 名物は激辛ラーメンだと書いてある。



≪名物の激辛ラーメン食べたんさ。任務が上手く行きますようにって≫

『うん』

≪そしたら予想以上に辛かったもんで死にかけたんだよなぁ≫

『死にかけちゃったの?任務前なのに?』



 くすくすと笑う黒凪にラビも微笑む。
 その表情を見た黒凪は眉を下げた。
 疲れてる私の為に態とそんな話をしてくれてるのかな。
 彼は優しいから。



『…ありがと、元気出た』

≪だはは、黒凪は俺のしょーもねぇ話にいつも笑ってくれるさー≫

『面白いんだもん。…じゃ、無事に帰って来てね』

≪勿論さー≫



 ぷつっと無線を切って背を伸ばす。
 肩はバッキバキに凝っていた。
 ま、いつもの事なんだけど。
 じゃあ私も激辛ラーメンでも頼んでお昼ご飯を満喫しよう。
 そう意気込んで食堂に向かった。




 笑ってくれるから、


 (辛ッ!?)
 (あー…、涙出て来た…)
 (ジェリー、このラーメン凄ぇ辛いさ!)
 (えー?辛くしてって言ってたじゃない)
 (成程、あのタバスコの数は尋常じゃないと思った…)


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