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□君が、笑う
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 ぼくのとなりで君が、笑う
 with 市丸ギン from BLEACH



 僕の隣で笑う君が好きや。
 はい、と嬉しげな声が返事を返す。
 でも藍染隊長の隣で笑う君は嫌いやねん。
 …はい。次は少し真剣みを帯びた声だった。



「この意味分かる?黒凪ちゃん」

『分かりますよ』

「ホンマに?」

『はい』



 ギンは細い目を微かに開き笑った。
 目の前に立ち彼を見上げる少女、黒凪。
 彼女は藍染が率いる五番隊の第三席である。
 そんな黒凪は流魂街の出身で、ギンとは昔からの付き合いだ。



「じゃあゆってみ」

『市丸隊長は大事な事隠してます』

「……」

『…一体何するつもりなんです?』



 市丸隊長、なんて随分他人みたいに言うんやなぁ。
 誤魔化す様に言えば黒凪は黒い瞳をついと彼に向けた。
 ギンは少し困ったように眉を下げる。
 わざとらしく肩を竦めるギンは口元に笑みを浮かべた。
 黒凪はその表情を見て「あ」と思わず呟いてしまいそうになる。



「敵わんなぁ、黒凪ちゃんには」

『……何処行くんですか?』

「ん?」

『何処に、行っちゃうの』



 手を伸ばす。
 ギンは一瞬その手に応える様に腕を持ち上げたが、力を抜いた。
 そして黒凪の手は空を切る。
 彼が一歩下がったのだ。
 黒凪の目が揺れ、泣きそうに眉を寄せる。



「ごめんな」

『ギン、』

「…ごめん」



 そうとだけ言って彼は目の前から消えた。
 …そして、尸魂界からも。
 彼は黒凪の上司である藍染と共に私達の敵となって。






























「――…あーあ。」

『……』

「なんで来たんよ、黒凪ちゃん」



 風で銀色の髪が揺れる。
 黒凪は懐かしい髪色と笑顔に目を細めた。
 構えている斬魄刀がカチャリと音を立てる。
 ギンは余裕の表情を浮かべ斬魄刀には手を触れなかった。



『貴方の隣に戻りたいからです』

「…阿呆な子やなぁ」

『ええそうですよ。…女の子はね、ギン』



 ん?と何でもない様に首を傾げるギン。
 ああ、変わらない。私達の関係は何一つ変わっていない。
 ギンは己を真っ直ぐと見据える黒凪に思わず目を奪われた。
 ほんの少しの間会っていなかっただけだ。
 でも髪も伸びて、少し大人びた様に見えて。



『好きな人の為ならなんだって出来るの』

「………」

『命だってかけてやるわ。…大好きよ』

「…うん」



 後頭部を掻くギンは眉を下げた。
 照れてる、と直感で悟る。
 そんな彼の反応に黒凪は懐かしげに笑った。
 ギンも思わず笑顔が零れそうになる。
 普段の感情を隠す様な笑顔では無い、本当の笑顔。
 …でも。



「何をしているんだい、ギン」

『――!』



 ―――…僕の隣で笑う君が好きや。
 大きく見開かれた黒い瞳に硬直する。
 彼女の背後に立つ男は優しい笑みを浮かべていて。



『藍染…!』

「やあ、六道君」



 でも、僕はなぁ黒凪ちゃん。
 藍染の手が音を立てずに斬魄刀に伸びた。
 君の事は好きやけど、藍染隊長の隣で笑う君は嫌いやねん。
 …僕の目の前で血を流しながら落下する君は、僕が見て来た君の中で。




 1番嫌いやった。


 (頼むわ、神サマ)
 (信じてないけど今回はホンマに頼む)
 (どうかあの子を)
 (僕の前に一生現さんといてください)


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