theme

□小悪魔なきみに恋をする
7ページ/7ページ



 そして再び惑わされた
 with 雲雀恭弥 from 家庭教師ヒットマンリボーン



『あら、おはよう恭弥』

「………」



 はぁ。と浅いため息を吐く雲雀。
 その様子を見て窓際に座る少女はくすりと笑った。
 少女の名は黒凪、自称風紀委員副委員長。
 そう、"自称"なのだ。会長である雲雀は認めてはいない。
 …ただ。



『…危ないなぁ。止めてよね、いい加減』

「……。相変わらず隙が無いね、君も」

『でしょう?』



 音も無く投げ飛ばしたトンファーを軽々しく片手で掴み取る黒凪。
 実力は申し分ないのだ。この中学校の中でも飛び抜けている。
 …自分とも同等なのだろう、戦闘力に関しては。
 それでも馬は合わない。興味も湧かない。



『ね、恭弥朝ご飯食べた?』

「…自分で考えなよ」

『食べてないでしょ』

「……」



 ほい、と目の前に置かれる弁当箱。
 毎度のことながらこれも欠かす事は無い。
 殆ど食べない朝食。
 偶然食べて来た日でも彼女は僕の弁当を作ってくる。



「…要らない」

『元気出ないよ?食べて』

「要らない」

『……。食べてよ、ね?』



 少ししおらしく、だが心配げに。
 ああ、この子は本当に男の扱いに慣れている。
 そんな彼女の言葉に乗る気など更々無いのだが。
 思わず何も言わず弁当に手を伸ばしてしまう僕はどうかしているのだろうか。



「………」

『美味しい?』

「…良いんじゃない」

『いえい』



 微かに頬を染めて笑った。
 その表情から一瞬目を逸らせなくなる。
 …本当にどうかしている。最近の僕は。
 また深くため息を吐いた。



『…最近母さんが煩いの』

「ふぅん」

『並盛辞めろって言うのよ』

「……へぇ」



 成績はずっとキープしてるけどどうも風紀委員が気に入らないらしくて。
 そう言うと興味を示していなかった雲雀がチラリと目を向けた。
 恭弥の事も嫌ってるみたい、と言うと自分自身の話題には興味が無いのかまた「ふぅん」と目を逸らす。



『辞めた方が良いかな』

「…君がそう思うならそうすれば」

『……恭弥は良いの?』

「別に。退学届ならいくらでもあるけど」



 引き出しに手を掛け中身を見せる雲雀。
 中には退学届けが大量に詰め込まれていた。
 その様子を無言で見る黒凪。
 雲雀は弁当を食べ終えると無表情で黒凪に投げ渡す。
 弁当箱を掴み取った黒凪は目を伏せるとやはり何も言わず立ち上がった。



「…帰るのかい」

『うん。…多分もう来ないね』

「……、」



 雲雀の目に映ったのはいつの間に取ったのか、退学届けがあった。
 退学届をひらりと指先で摘まんで軽く揺らした黒凪は小さく微笑む。
 じゃーね。雲雀サン。
 そう言って踵を翻すと艶やかな髪が揺れ、その様子がスローモーションの様に雲雀の目に映った。



「……黒凪」

『〜♪』



 黒凪は口笛を吹いていて気づいていない。
 そろそろ応接室の入り口に辿り着く。
 雲雀は静かに立ち上がり足を踏み出した。
 手を伸ばす。その手は退学届けに真っ直ぐと伸びていた。
 その手をひらりと躱す黒凪。
 少し振り返ると目を細めて微笑んだ。



『…ね、恭弥』

「……。何」



 静かに睨んでくる雲雀の目の前に顔を寄せる。
 黒凪の顔を雲雀は無表情に見返した。
 この時雲雀は微かな"嫌な予感"に内心舌を打つ。



『嘘だよ』

「…チッ」

『ぅおっと、』



 トンファーが振り上げられる。
 それをパシッと受け止め黒凪はにぱっと笑った。
 何だその笑顔は。
 この世に嫌な事等無いとでも言ってしまいそうなほどの幸せそうな笑顔。



「咬み殺す」

『やってみれば?』

「ワオ、良いね」

『おっ。本日最初の"ワオ"ですねぇ』




 きみは永遠の小悪魔


 (…あ!雲雀さんと六道さんだ、獄寺君煙草しまって!)
 (あんな奴等俺が返り討ちにしてやりますよ、十代目!)
 (そう言う意味じゃなくて…!)
 (へぇ、返り討ちにするんだ)
 (いいねいいね。かかってきなよ)


 
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ