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□言葉で3題
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 言葉の咎め
 with 土方歳三 from 薄桜鬼



『死ぬな!…死ぬなよ…!!』

「……。」



 顔を覗き込む。
 涙が落ちた。
 ピクリと微かに反応を示して彼の目は開いて。
 ゆっくりと、此方に瞳を向けた。



『土方、土方…っ』

「…る…せぇよ…」

『起き上がれよ…!お前鬼に勝ったんだ、薄桜鬼って名前だってあの風間に、』

「……あぁ。…そう、だな」



 ぽたた、と涙が落ちる。
 涙を手の甲で拭った。
 左側には既に息絶えた風間が倒れている。
 彼は私の許嫁だった。
 でも私はこの男に惚れて。



『鬼の私と生きると言ったじゃないか…!』

「…そう、だな」

『お前が私を連れ出したんだ、鬼の一族の中から』



 土方の瞳が空を見上げる。
 本当は嫌いなんかじゃなかった、ただ愛する事が出来なかっただけで。
 黒凪の言葉に困った様に笑う。
 知ってるよ、と掠れた声で土方が言った。



『風間の事、別に嫌いじゃなかった…っ』

「…あぁ。知ってる」

『でもアンタが殺した!…生きろよ、私を独りにするな…っ』

「……お前、が、…独りに…」



 虚ろな目で言う土方に黒凪が「うん」と頷いた。
 土方の血に塗れた手がゆっくりと持ち上がる。
 黒凪がすぐさま掴み取りパチッと視界が一瞬光った。
 ――…あぁ、まだあれ゙が起きてしまう。
 これは咎だ。私が土方に掛けた、咎。



『…土方、』



 ぱたりと手が落ちる。
 呼吸はもう、していない。
 またパチ。…と。
 黒凪の目から大粒の涙が零れた。
 …これは咎だ。



『次は死なないで』



 冷たくなった唇に口付けを1つ。
 視界が徐々に白濁していく。
 何も見えなくなって、何も感じなくなって。
 …そうしてまた私は桜の下に居る。



「……黒凪?どうした、っ、」

『…あ。大丈夫?頭痛い?』

「あぁ、…っ。…変な夢を見た」

『…どんな夢?』



 誰かと戦ってた気がする。
 …本気の殺し合いだ。
 黒凪の脳裏に彼の言葉が過った。



《…変な夢を見たな》

《どんな夢?》

《お前を護って、五稜郭目前で死んだ夢だ》

《…そう》



 随分鮮明な夢なんだね。
 涙を零しながら言った。
 土方は酷く驚いていた、どうして泣いているのかと。



《……目覚めの悪い夢だったな》

《どんなの?》

《お前を攫いに来た風間と戦った》

《うん》



 変若水を飲む前に殺されちまってよ。
 すぐに死んじまった。
 不思議と五稜郭での不意打ちは難を逃れたのにな。
 笑い交じりに言う土方に涙を堪えて頷いた。



「お前を攫いに来た風間と桜の下で戦った。」

『うん』

「俺は既に変若水を飲んでたから羅刹になって戦って、」

『…うん』



 相討ちになる。
 黒凪は「そっかぁ」と目を伏せた。
 独りにしないでってお前は柄にもなく泣いてたな。
 笑い交じりに言った土方に「バカにすんな、」と腕を叩いてやる。
 土方は「悪い」と眉を下げて笑った。



『…んじゃあさ』

「ん?」

『次風間と戦ったら勝てるんだろ?』

「…あぁ。次は負けねぇよ。」



 お前を独りにもしない。
 そう言った土方に黒凪は笑って「期待してる」と言った。
 これは、咎だ。




 何度も何度も繰り返して。


 (それでも私はこの人と生きていたいから。)
 (だから、)
 (何度でもやり直させて。)


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