隙ありっ Short Stories

□隙ありっif
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  せかいはまわる

  コナン達と組織の立場が真逆だったら…。(コナン達=黒の組織、黒の組織=FBI捜査官たち)
  内容的にはわちゃわちゃしているだけ。

  怪盗キッドこと黒羽快斗の誕生日に因んだ作品。
  1ページ前のお話の夢主達でお送りします。



≪――…Ladies and gentlemen!≫

≪このように、また日本警察は変幻自在・神出鬼没の大怪盗…怪盗キッドに宝石を盗まれ――≫



 テレビにて大きく報道されている、世紀の大怪盗・怪盗キッド。
 彼の正体を知る者は、この日本、いや、世界に何人いることだろうか。



「工藤君、そこの飾りが斜めだわ。」

「おっけ。…こうか?」

「ええ。」



 灰原(ちなみに本名は宮野志保。しかしながらこの組織に加入した際に名乗っていた灰原哀という偽名が定着したため、そのまま呼んでいる。) の指示に従いながら壁一面に飾り付けた風船やらを飾り付けていく。



『秀一、もう一束渡してくれる?』

「こっちか?」

『ううん、肩に乗ってる方。』



 そして反対側の壁を飾り付けるのは、壁に垂らすための長い飾り付けを肩にかけて持っている赤井さんと、それらを受け取って飾り付ける黒凪さん。
 そんな2人の傍にある扉が開き、人数分のワイングラスを持つ降谷さんと皿を持つ諸伏さんが顔を覗かせた。
 そしてこの部屋に入ってきた2人は、すぐ傍で飾り付けまみれになっている赤井さんを見て「ふ、」と微かに笑みを零す。



「ははは、ソレ似合ってるよ。ライ。」

「ん? やあスコッチ。久々だな、もう戻ったのか。」

「まあね。長野土産もあるから後で取っていって。」

「…それにしても、随分と様になってきたなあ。」



 そう降谷さんが感心したように呟く。
 確かにかなり飾り付けが完成に近づき部屋の色づきもこう、派手になった。
 俺も手を止め、ソファから降りて灰原の傍により、部屋全体を見渡す。



「(あと2時間ぐらいで黒羽が帰ってくるから、ケーキと食事と…あ。) 諸伏さん、ギターって…」

「ああ、持ってきたよ。譜読みもバッチリ。ただ…ライも歌えるようにキーを下げようか考え中。」



 ちなみに以前FBIと対峙した時に使っていた、酒の名前を使ったコードネーム、ライ、バーボン、そしてスコッチ。
 曰く、バーボンこと降谷零さんとスコッチこと諸伏景光さん。この2人は幼馴染で、やがて共に暗殺者としてのキャリアをスタート。
 その際に酒の名前を使ったコードネームを使い始め、その後そこに赤井さんが加入し、ライ、と名乗って共に行動をしていたそうだが…。
 本人たちいわく、とある理由で一旦仲たがい (その理由は灰原の姉さんの黒凪さんだと言われている) が起こって、赤井さんのみが黒凪さんと共にうちの組織に加入。



≪おおっと! 一度はキッドに盗まれていた宝石を遂に西の高校生探偵・服部平次さんが取り返しました!≫



 画面に宝石奪取、の大きな文字と服部が映し出される。
 それを微笑ましく眺める降谷さんと諸伏さんを見て目を細める。
 その後、右翼曲折あったものの…一時は俺たちと敵対するかと思われた、バーボンとスコッチだったが、赤井さんと黒凪さんの尽力もあり、組織に加入。
 今となってはその本名らしき名前を俺たちに明かしてくれるほどにまでなった。というわけだ。



≪東の高校生探偵・工藤新一さんの代行としてキッドと初めて対峙したわけですが、手応えの方はいかがでしょう、服部君!≫

≪月下の奇術師も大した事ないで! ま、これからは工藤なんかに頼まず俺に頼めっちゅー事やな!≫

「そろそろ黒羽君も服部君もこちらに向かい始めるころじゃないかな。」

「そうだな。俺、煮込んでるシチューがどうなったか見てくるよ。」



 降谷さんがキッチンに引っ込んでいき、諸伏さんも徐にギターを取り出してチューニングを始める。
 そのタイミングで飾り付けも終わったのか、黒凪さんと赤井さんも俺と灰原の様に中央に集まって部屋全体を見渡した。



『うん、いい感じ。じゃあ私もキッチンに行って食べ物を運んでくるわ。』

「俺も行こう。」

『あら、ありがと。』



 そうして次々と料理を運び込み、今日の主役である黒羽と、黒羽を誘導する服部を待ち構える。
 そして…



「っはー、疲れた…」

「今日はなんや中森警部も目ェ血走っとったもんな。」

「あれはいつものことなんだよ、日に日に血走り度が増してるような気もすっけど…」



 ガチャ。その音が聞こえた途端に、一斉にクラッカーが鳴り響く。
 もちろんその予想だにしない事態に黒羽は目をひん剥いて固まるわけで。
 俺そっくりな顔が情けない顔をするものだから、思わず笑っちまった。



「「「誕生日おめでとうー!」」」

「っえ? お、おお…」



 黒羽が部屋の中を見渡し、最後に豪勢な夕食と真ん中に置かれたケーキを見る。
 ケーキの上のプレートに自身の誕生日、年齢、そして名前が書かれていることに気付いた黒羽がやっと自分を祝っているのだと気付いたのだろう、また「へ、」と声を発した。
 そして流れ始めたハッピーバースデーのメロディを聞きながら、黒羽のためにと用意された席に服部に押し込まれる。



「…あ、ありがとな」

「まさか殺し屋集団が集まる組織で誕生日祝うとは思ってなかったろ?」



 バースデーソングをBGMにそう黒羽へ問いかけてやれば、こくこくと頷きながら黒羽が嬉しそうにケーキを見る。そして。



「…あれ? 俺誕生日教えたっけ?」

「ん? ああ。教えてくれたさ。」

『それはもうバッチリね。』

「…ええー…。調べたんすか、こっわ…」



 はっはっは。なんて笑う組織の面々。
 これがあるからうちの組織は離職率というか、脱退率が少ない。
 というのはまあ冗談として。



「つか、めずらしーなあスコッチさん…」

「誕生日パーティって聞いたから、久々にね。はい、プレゼント。」

「え、プレゼントまで?」

「ほれ、俺もやるわ。」



 え、服部も?
 と驚く黒羽の元にどんどん集まっていくプレゼント。
 それを受け取ることに必死になっていた黒羽が、やっとこれで終わりか? と一息をついたころに、俺からも。



「黒羽、俺からも。」

「え、マジで…」



 おずおずと手を伸ばし、ずし、と重い俺のプレゼントに顔を引くつかせる黒羽。



「…重っ…」

「ははは。開けてからのお楽しみな。」

「ええ…」



 ヴィランズだってお祝いぐらいするさ!


 (え、赤井さんこれなんすか…?)
 (タイピン。)
 (タイピン…)
 (偶然丁度良さそうなのを見つけたんでな。空を飛ぶ時にでも使ってくれ。)

 ((これが出来る男の嗜み的な…?))
 ((服部とかせんべいなのに…))


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