隙ありっ Short Stories

□隙ありっif
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  真っ黒トライアングル

  300000hit企画にて制作した番外編。
  ジン→夢主←赤井秀一と言った三角関係だったらのお話。



「…チッ」

『「!」』



 カチャ、と物騒な音が響きすぐさま赤井を庇う様に黒凪が手を伸ばす。
 その手を見たジンはまた舌を打って赤井を睨んだ。
 そして煙草を銜えたその口元から低い低い声が顔を出す。



「ライ…何度言えば分かる」

「さて、何の事だか。」

「俺の弟子に手ェ出すな」

「そうは言ってもアンタのじゃないだろう」



 煽る様に言った赤井に収めかけていたベレッタがまた姿を見せた。
 ジン、と咎める様な黒凪の声が掛かる。
 チラリと黒凪を見たジンはベレッタを仕舞うと彼女に手を伸ばし座っていたソファから立ち上がらせた。



『ちょ、何…』

「仕事だ。来い」

『来いって、ちょっと!』



 黒凪を抱き上げ歩いて行くジン。
 その背中を見た赤井は肩を竦めチラリとジンの肩から顔を覗かせた黒凪に目を向ける。
 息を吐いてヒラヒラと手を振る赤井に眉を下げた黒凪は大人しくジンの腕の中に納まった。



『…逃げないから降ろして頂戴。重いでしょう?』

「別に構わねェよ。」

『…。で?仕事って?』

「んなモンは無い」



 は?と黒凪が怪訝に眉を寄せる。
 そしてすぐさまジンと共に進んでいる道に目を向けた。
 この通路は、と目を見開いた黒凪はジンを見上げ眉を寄せる。



『…射撃場?』

「あぁ。暫くお前の面倒を見てなかっただろ」

『!…もう、別に構わないのに…』



 射撃場に入って降ろされた黒凪は放り投げられた耳栓をパシッと受け取る。
 そうして装着すれば同じく耳栓をしたジンが黒凪の側に寄って来た。
 彼の手には銃が握られている。



「構えてみろ」

『…最近気付いたんだけれど』

「あ?」

『私、貴方と違ってこの構え方の方が撃ちやすいの』



 ジンの隣で彼と同様に拳銃を地面と平行に倒していた黒凪はゆっくりと手首を回した。
 地面と垂直に拳銃を持った黒凪は目を大きく見開き引き金を引く。
 弾は真っ直ぐと的を射抜きその命中率にジンが微かに目を細めた。



『どう?上達したでしょ』

「…あぁ。大したもんだ」

『あら珍しい。貴方が褒めるなんて』



 ところで、そう言って黒凪が手を伸ばした。
 自分の顔に向かって伸ばされている事を悟ったジンは徐に背を丸める。
 そんなジンの小さな気遣いに微笑み彼の長い前髪を指で退けた。



『貴方は両目照準?それとも片目?』

「…両目だ」

『私と一緒ね』



 ふわりと笑った黒凪に目を伏せ拳銃を持っていない右手が彼女の頬に向かう。
 愛おしげに頬に添えられた右手に少し目を見開いた黒凪は照れ臭そうに眉を下げた。
 ゆっくりと右手で撫でられる頬に思わず左目を閉じた時「おいおい」と声が掛かる。
 其方に目を向けると先程別れたばかりのライ、諸星大が立っていた。



「…ライ」

『大君…』

「あまり見ていて気分の良い物では無いな」

「だったら出て行け…。撃つぞ」



 おお怖い、と肩を竦めた赤井に黒凪が困った様に眉を下げる。
 仕事じゃなかったのか?と続けざまに懸けられる声にジンが眉を寄せる。
 何も言わないジンを庇う様に黒凪が間に入った。



『私が無理を言ったのよ。仕事をするぐらいなら私の射撃を見てって…』

「ほう?」

「…。ライ」



 出て行け。再びジンの低い声が向かう。
 黒凪に目を向けた大だったが首を横に振る彼女に眉を下げ背を向けた。
 出て行った彼を見送った黒凪は徐にジンを見上げ「ねえ」と彼の頬に手を伸ばす。



『あまり彼と喧嘩しないで』

「…」

『いがみ合う2人を見るのは辛いわ』

「…とんだ女だな、テメェも…」



 ニヤリと笑ったジンが徐に口を開いた。
 俺とアイツは相容れねぇよ…。
 その言葉に黒凪が眉を下げる。
 一生な、と付け加えられると目を伏せた。



『…頑固なんだから。』

「そりゃあ頑固にもなる。女が懸かってんだからな」

『…あのねぇ…』



 冗談だと思うか?
 そんな声に顔を上げると思った以上に間近に顔があり固まった。
 あんまり俺を見くびるなよ…
 そう言いながら近付いてくるジンに、その深い緑色の瞳に目が逸らせなくなる。



『ちょ、』

「此処で襲ってやろうか」

『っ!』



 細められた目が黒凪の目を捉えて逃がさない。
 硬直する黒凪の背に両腕が回ると左手に握られていた拳銃の銃口が射撃場の入り口に向けられた。
 はっと其方に目を向けると此方を睨んでいる大が立っている。



「そこまでされると見逃せない」

『だ、大君』

「鬱陶しい野郎だな…」



 ぐっと引き寄せられ頭をジンの胸元に押さえつけられる。
 む゙、と声をくぐもらせる黒凪に眉を寄せて赤井がジンを睨んだ。
 くいくいとジンの服を引くと微かに緩まる力。
 黒凪はチラリとジンを見上げた。



「…離せ」

「そりゃあ無理な話だな」

『(無理なの…!?)』



 じりじりと近付いてくる赤井から目を逸らさず黒凪の髪に鼻を埋めるジン。
 そのくすぐったさに黒凪が少し眉を寄せた。
 ムッと眉を寄せた赤井がジンの右手を掴みぐいと持ち上げる。



「流石にお前でも仲間は撃てないだろう、ジン」

「…。テメェが本当に゙組織の仲間゙ならな」

「組織の仲間だから躊躇無くお前の手を掴めたんだが?」



 睨み合う両者。
 一方ジンの拘束が解かれた黒凪は長身の2人に挟まれどうすれば良いのか迷っていた。
 此処は大の元へ行くべきか?それとも2人の間から逃げるべきか。



『(…2人の間から逃げるべきっ)』

「待て」

「駄目だ」



 がしっと2人の長い脚が黒凪の行く手を阻んだ。
 躓きかけすぐさま動きを止める黒凪。
 彼女はゆっくりと2人を見上げた。




 お、落ち着いて。…ね?


 (あれは何です?)
 (あら、貴方知らないのバーボン)
 (ええ。あんな奇妙な絵面は久々に見ましたよ)
 (ライとジンがあの子を取り合ってるのよ。何処が良いのかしらね)
 (…取り合ってる…)
 (…まさか混ざる気?)
 (い、いえ)


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