隙ありっ Short Stories

□隙ありっ 番外編
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  暑い日のお話

  赤井秀一と夢主は共に変装中。
  夢主は神崎遥として黒羽快斗が通う高校の教師をしています。



『学校もないし幸せだわ、本当に。』

「何だ、もう夏休みの季節か」

『えぇ。高校は期末考査が終われば夏休みも同然だから』

「ほぉ…。と言う事はこれから平日も此処に居る訳だな」



 うん?と顔を上げた黒凪。
 するとにやりと笑った沖矢が自分を見下している。
 格好良いが、顔が赤井じゃない為少し眉を下げて笑った黒凪。
 そんな彼女の反応に気づいた沖矢も微かに眉を下げ、立ち上がった。



『…秀一?』

「悪いが、今日はボウヤ達がお前のカレーを食べに来るんでな」

『カレーって昨日作ったあれ?夏のお昼によく食べられるわね…』



 そう言ってカレーを温めている沖矢を見る黒凪。
 するとピンポーンと言う音と共に昴さーん、遥さーんと可愛い声が微かに聞こえた。
 あらあらと立ち上がった黒凪は扉を開けてやり、コナン達に笑顔を向ける。
 まず歩美が黒凪に抱き着き、お邪魔しますと光彦や元太が中に入った。
 遅れて歩美も中に入り、最後にゆっくりと歩いて中に入るコナンと灰原。



『いらっしゃい、2人共』

「おう。悪ぃな騒がしくしちまって」

『良いわよ。…ほら、志保も早く中に入りなさい』

「うん」



 扉を閉め、3人でリビングへ向かう。
 すると元太達はテレビの電源をつけ、仮面ヤイバーを視聴していた。
 頑張れー!なんてテレビに向かって声援を送っている子供達を見た黒凪はふふふと微笑んだ。
 そんな黒凪に声を掛けた沖矢は側に有る炊飯器を顎で示す。



『何?炊けてるか見てほしいの?』

「あぁ」

『…ん。炊けてるよ、ルーは?』

「後もう少し。…やあ、久しぶりだね」



 沖矢の言葉に右側に視線を向ける黒凪。
 そこには沖矢を笑顔で見上げるコナンと眉を寄せて見上げる灰原。
 コナンは何か手伝う事ない?と子供らしく訊き、灰原はふんと顔を背けた。
 小さく笑った沖矢はコナンに全員分のコップを、灰原にはスプーンを手渡す。



『可愛いよね、子供って』

「僕はあまり好かないけど…」

『確かにアンタ公園とか嫌ってたもんねぇ』

「いつの話してるんだよ、遥」



 笑いあう2人。
 傍から見れば随分ほのぼのした様子だが、恐らく内心では互いに変えた口調に笑いをこらえている事だろう。
 コナンは互いに沖矢昴と神崎遥として接する事を嫌っている事を知っているから。
 栄養のバランスを取る為にと野菜を切り始めた黒凪。
 その様子を何気なく見ていた灰原だったが、遥さーんと走り寄る歩美に目を見開いた。



『うわっ!?』

「もう少しで出来る?遥お姉さん!」

『うん!だからもうちょっと待っててね?』

「はーい!」



 再びテレビの元へ向かう歩美。
 彼女を見送った沖矢は黒凪の手を掴み、目の前に持って行った。
 黒凪の指先は少し切れていて、血がぷくっと出ている。
 歩美に感付かれまいと笑顔を見せた黒凪だったが、ズキッとした痛みに少し眉を寄せた。



『っ、』

「痛むか?」

『うん、ちょっと。でも唾でも付けておけ、ば……』

「ん?」



 ぱくっと指を沖矢に銜えられてボンッと顔を赤らめる黒凪。
 うわわわ!?と驚愕する黒凪と「なっ…」と目を見開く灰原。
 そしてそんな灰原にその光景を見せまいと彼女の腕を引くコナン。
 何!?え!?拍手の為に書いた短編だからこんなシーンがあるの!?なんで!?てかどうしたの秀一さんんん!?



「…くくく、落ち着けよ」

『おおお落ち着いてるから!大丈夫!』

「……お前のそんな反応を見るのは久々だな。あの玄関で裸を見せられた時以来……」

『きゃあああ!』



 止めて言わないで!と悲鳴を上げればどうしたの!?と元太達が来てくれた。
 そして急いで離れた2人を不思議気に見上げる3人。
 流石に何も知らないいたいけな少年少女にさっきの光景は駄目だろう。
 黒凪は耳まで赤くなっていて、沖矢は何でもないよと平然を装いながらも必死に笑いをこらえていた。




 熱に頭でもやられましたか!?


 (あの男…)
 (…灰原…?)
 (いくらお姉ちゃんが好きだからって…!)
 (あ、おい灰原!?)
 (離しなさいよ!私は100歩譲って諸星大ならまだしも…っ)
 (え、あ、その諸星大なら許したのか?)
 (はあ?)

 (良かったな赤井さん…)

 
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