隙ありっ Short Stories

□隙ありっ 番外編
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  I Love you!

  100000hit企画にて制作。
  甘めでご所望でしたがムリでした…。スミマセン。



『…あの、秀一さん?』

「ん?」

『これは一体…』

「……良いだろ? 今日ぐらい。」



 いつもよりも幾分か低く、掠れた声。
 その声にため息を吐いた黒凪は困った様に眉を下げた。
 そして諦めた様に赤井の頭に置いていた手を顔の横にぽす、と落とす。
 手の甲にはベッドの柔らかい弾力が伝わって来た。



『どうしたのよ、こんな夜中に…』

「俺も男なんでな…」

『…嫌よ? 私だって疲れてるんだから。』

「分かってるさ。俺も疲れてる」



 そんな風に言いながら臍の辺りに顔が有った赤井はもぞもぞと動き始める。
 今現在は真夜中のベッドの中。
 なんだかお腹がくすぐったいな、なんて思って目覚めて見ればあら驚き。
 布団の中に潜り込んで秀一が何故か抱き着いていた。
 赤井は布団の中から顔を出し、黒凪と目を合わせる。



『もう、髪の毛ボサボサじゃない』

「お前も寝癖で酷い事になってるぞ?」

『私は無意識だもの、仕方無いじゃない』



 そんな会話をしている内にも赤井は黒凪に手を伸ばし、ぎゅう、と抱きしめた。
 鼻先が肩に当たってすん、と赤井の匂いが香る。
 目を細めた黒凪は両足で赤井の足を挟んだ。



『ねえ、本当にどうしたのよ。珍しい』

「こう言う日もある」

『ないわよ、貴方の場合滅多に』

「良いだろう?たまには」



 な?と言いながら目を閉じる赤井。
 微かに笑っている。
 …何よ、ちゅうしろっての。
 もう、と呟きながら黒凪が顔を近づけた。
 触れる唇。
 満足した様子の赤井は片目を開いた。



『はい、お返ししてください。』

「…くく、」

『はーやーくー』



 はいはい。
 そう言う様に眉を下げた赤井が顔を近づける。
 ちゅ、と小さなリップ音。
 今のキスは2人共目を開いていた為、ずっと視線が交わっていた。
 …先に顔を赤くさせたのは黒凪だった。



『…目、閉じて頂戴よ』

「何言ってる、お前も開いてただろ?」

『……。私は良いの』

「何があっても公平にってルール作ったの覚えてないのか?」



 脳裏に過る過去の約束。
 ちゃんと付き合うにあたって、と言う名目の元話し合いをした事がある。
 ちなみにあの時は2人でテレビを見ていた。
 私は珈琲を飲む秀一の隣で足を抱えて、肩には2人で1つのブランケットをかぶっていた。
 その時に2人で決めたのだ。
 ゙何があっても公平に゙。そんなルールを。



『……。』

「くく、お前の負けだな」

『貴方に口喧嘩で勝てた事ないじゃない』

「あぁ、そう言えばそうか」



 ちょっとのドヤ顔でそう言った赤井。
 ふん、と顔を逸らした黒凪。
 赤井は眉を下げると「怒るなよ、」と黒凪の頬にキスをした。
 振り返った黒凪は少し唇を突きだす。
 笑った赤井は素直にキスを送った。



『…ふふ、ありがと。』

「あぁ。お安い御用さ」

『……貴方疲れてないの?眠そうだけれど』

「そう見えるだけだ。妙に今日は目が冴えてる」



 ふうん、と黒凪が小さく笑う。
 正直私は少し眠たいんだけれど。
 それが赤井にも多少は伝わっているのか、あまり無理に起こそうと言う感じはしなかった。
 眠るなら眠って良い、そう言う様に優しく頭を抱えてくれる赤井。
 黒凪は眠気に負け、目を閉じる。



『今日も一日お疲れ様、秀一…』

「あぁ」

『早く寝るのよ。明日も仕事でしょ?』

「……あぁ」



 すぅ、と寝息が聞こえ、赤井の肩から力が抜ける。
 いざ目の前で眠ってしまえば自分にも不思議と眠気が襲ってきた。
 小さく欠伸を漏らした赤井も徐々に目を閉じていく。
 薄れ行く意識の中で黒凪の手を緩く掴んだ。



「…愛してる、本当に」



 そう、本当に。
 組織に居た時とは違う。本気で愛している。
 笑顔が綺麗で、落ち着いていて。
 動作もゆっくりとしていて気品があって。
 でも気が強い部分もあって。
 此処まで自分が惚れ込むなんて思っていなかったのに。



《大好きよ、秀一》



 ああ、彼女の言葉が脳裏に過る。
 綺麗な笑顔だと思っていた。ずっと。
 今日はとても幸せな夢が見られる気がする。
 目が覚めれば自分の愛しい人がいる。
 ……なんて素晴らしい日々なのだろうか。




 愛しい、恋人


 (秀一、…秀一起きて)
 (んー…?)
 (そろそろ起きて貰わないと私準備が…)
 (今日は休めよ…)
 (何言ってるの、無理よ。……ほら起きて。)
 (ん、)
 (……腕をどかしなさいよ、ちょっと。)


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