隙ありっ Short Stories
□隙ありっ 番外編
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指輪の繋がりを
100000hit企画にて制作。
夢主と赤井秀一は変装済み。
※話の中で服部と沖矢が出会っていますが本編で初対面を果たすので忘れてください。笑
「昴さん!!」
「大変なんです、遥さんが…!」
突然のインターホンの後、どんどんと扉を叩かれ急いで扉を開けば切羽詰まったコナンと蘭の姿。
その後ろには小五郎も居て、沖矢は眉を寄せた。
確かに今朝から黒凪は何処かに出かけると言ったきり何処にいるか分からない。
一体何が?と問えばコナンが沖矢に掴み掛る。
「遥さんが誘拐されたんだ!居場所を見つけてみろっておじさんの所に…!」
「!」
「これが送られて来た映像だ…。」
渡されたタブレットを受け取り、覗き込む沖矢。
そこには何度か殴られたであろう神崎遥が映っていた。
彼女の背後に映っているのは灰色のコンクリート、側に小さな窓がある。
窓の向こう側にはタワーの様な物が微かに見えていて、一体何処まで連れて行かれたのかと背中が冷えた。
≪いいか?今日の日没までに見つけ出さなければこの女は死ぬ≫
≪……。≫
≪うわっ!?っ、大人しくしろ!≫
側にあった外された窓を蹴る黒凪。
その事に驚いた犯人がカメラの前にも関わらず黒凪を蹴った。
犯人の姿が映り込み、同時に黒凪も殴られる映像にコナンと沖矢は釘付けに、蘭は目を逸らす。
静かになった黒凪を見た犯人はカメラをガッと掴み、口を開いた。
≪日没だぞ、日没。それまでには見つけに来る事が出来るよなぁ?毛利小五郎…≫
「…………」
「…す、昴さん…、あの…」
バキッと音が鳴った。
…え?えええ!?と蘭の悲鳴が響き渡る。
まさか握力だけでタブレットにひびを入れるとは。
おっと、すみません。と頭を下げる沖矢。
が、彼から滲み出る怒りのオーラに誰も文句を言えなかった。
「とりあえず場所を特定しないと…」
「そうですね。…地図を持ってきます」
そう言ってすぐに地図を取り出し机の上に広げる沖矢。
机の周りに4人で座り、真ん中に地図を移動させる。
側でもう一度映像を流し全員で覗き込んだ。
黒凪と沖矢が最後に会ったのは今朝の9時頃。
現在は1時38分。居なくなってから4時間程経っている。
その間に映像が撮られたという事は少なくとも監禁場所まで片道4時間以内。
そこまでつらつらと話した沖矢は地図にその範囲内を赤く囲った。
「…遥さんの後ろにタワーが見えたよね。」
「ああ。…何処かで見た様な気がするんですが…」
映像を止め、蘭と小五郎にも見せる沖矢。
その問題のタワーをじっと見た蘭は「あ!」と手を叩いた。
コレ通天閣じゃないですか!?と言う蘭にタブレットを己の方向に向ける沖矢とコナン。
確かに昼間であるから断定は出来ないが、特徴的な形は通天閣の物とよく似ている。
コナンは携帯を取り出し、映像のタワーを撮影するとメールである男に送った。
「誰に送ったんだい?」
「大阪に居る探偵のにーちゃんだよ。多分すぐに……、!」
≪もしもし工藤?なんやさっきの映像≫
「平次にーちゃん!大変なんだ、遥さんが誘拐されて!」
何!?と血相を変えた平次は思わず立ち上がった。
すぐさまコナンから事情を聞き、改めて画像を見る。
大阪を知り尽くした彼にはすぐにそのタワーの目星がついた。
確かに大阪にある通天閣だ。
その情報を聞いた沖矢はすぐに立ち上がるとコートを羽織り車のキーを持つ。
「毛利さんもどうぞ、乗ってください」
「あ、あぁ…」
「コナン君、」
「うん。…すぐにそっちに向かうから、タブレットの映像も送るね!」
すぐに送られてきた映像を見る服部。
見終わった彼はすぐに服を着て家を出て行った。
一方沖矢達は急いで発進し、大阪へ向かう。
かつかつと気が気ではない様にハンドルを指先でノックする沖矢。
その様子に眉を下げた蘭達は心配げに外を眺めた。
「…!電話だ、」
≪工藤、大体の場所の目星はついたで。ただ2か所で迷っててな…≫
「んー…、…2つの場所の情報を教えてくれねーか?」
「こらっ、コナン君。お兄さんでしょ?」
う、と言葉を飲み込んだコナンは「平次にーちゃんお願いシマス…」と携帯の通話の音量を大音量にした。
沖矢は平次が炙り出した2か所の情報を聞き、運転をしながら口を開いた。
後者の方でしょう、と間髪入れず言った沖矢に「何ぃ!?」とガンを飛ばす平次。
が、沖矢は「争っている場合ではない筈ですが」と一喝すると道端に1人の青年を見つけた。
電話を掛けている色黒の青年だ。彼を見たコナンは沖矢に止めて!と声を掛ける。
「平次にーちゃん、乗って!」
「お!?…お、おぉ…」
「場所を教えて頂けますか?」
「あぁ?ホンマにそっちであってんねんやろうなぁ」
良いから。そう言って微笑んだ沖矢。
ゾクッとした悪感に包まれた平次は渋々と言った様に案内を始めた。
謎は全て解かなければ納得しない平次だが、沖矢の威圧感に丸め込まれるとは。
その様子を見ていた蘭達は微かに顔を青ざめて沖矢を見る。
彼の表情はいつもと何ら変わらない様に見えるが、実はかなり恐ろしい状況なのかもしれない。
「ココや。…っておい!?」
「中を見て来ます。皆さんはそこに居てください」
「1人で行く気かいな!ちょお待ち…」
「単独行動の方が色々とやりやすいもので」
バキッと指を鳴らして歩いて行く沖矢。
しゅーんと座席に座った平次。
よっぽど怖いのか、平次は怒るどころかいじけ始めた。
蘭は小五郎に1人で大丈夫かな?と心配げに問う。
小五郎は窓の外を見てケッと吐き捨てると口を開く。
「大丈夫だよ。犯人はどーせ1人…」
「いや、犯人は複数犯や」
「え?」
「掴まっとる遥さん、こっそり目で犯人のカウントしとった」
瞬きや瞬き。と言った平次にばっとタブレットを見る蘭達。
今回の映像は随分と鮮明だし、確かに瞬きが確認できる。
瞬きの数は5回。つまり5人居ると言う事だ。
「…凄い…、遥さんこんなに犯人について情報見せてたんだ…」
「格好もまんまと俺等に見せとるしな…。あのにーちゃんも間違えへんやろ」
「…でも5人だよ!?やっぱり危ない!」
「ら、蘭姉ちゃん!?」
バンと車から降りた蘭。
助けてくる!と蘭は走り去ってしまった。
それを見たコナンは「あー…」と顔を覆う。
平次も困った様に「ははは…」と笑った。
「野暮な事すんなぁ…」
「ホントに…」
「…ま、蘭がいりゃあ大丈夫だろ…」
3人して蘭が行ってしまったという事実から目を逸らす様に空を見上げた。
何となく分かっていたのだ、沖矢が何人犯人が居ようと独り勝ちする事を。
そして恋人が捕まっていたのだ、一人で行く事にも意味がある。
決して怒りで突っ走ったのではないだろう。