隙ありっ Short Stories

□隙ありっ 番外編
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  11/22 いい夫婦の日

  いい夫婦の日に因んだ番外編。
  夢主と赤井秀一は共に変装済み。



『あら、もう11月22日なのね。…随分寒くなって来たわ』

「寒くなって来たなら暖房ぐらい付けたらどうだ?」

『最近家計が厳しいんだもの。私1人なら我慢すれば良いかなって。』

「風邪をひいたらどうする。」



 別に構わないじゃない。
 そんな黒凪の言葉にストーブのボタンを押した赤井が振り返った。
 私が風邪を引いても貴方には移さない様にするわ。
 そう言った黒凪に眉を下げ彼女の隣に座る。



「飯はどうする」

『ちょっとぐらいなら買って来れば良いじゃない』

「お前の看病は?」

『別に構わないわよ。』



 ならお前を心配する俺は?
 黒凪の言葉が止まった。
 固まった黒凪の肩にバサッとブランケットを掛ける。



「お前が風邪を引くと気が気でないんだがな」

『…恥ずかしい事言うわねぇ』

「そうか?」



 そうよ、もう。
 目を逸らした黒凪の頬は微かに赤い。
 その頬を見た赤井は小さく微笑みテレビをつける。
 本日はいい夫婦の日!そんな声が部屋に響き渡った。
 そんな今日は夫婦の中がより深まるこの商品を…。
 テレビに映ったキャスターが笑顔で読み上げる内容に2人で顔を見合わせた。
 赤井の顔を見た黒凪はくすっと笑う。



『ふふ、いい夫婦の日ですって。早く夫婦になりたいわね』

「なんだ、プロポーズか?」

『何言ってるの。私は待つ側でしょ』

「そうだな。…もう少し待ってくれ」



 指を組んで言った赤井に黒凪の目が再び向かう。
 赤井も薄く微笑んで黒凪に目を向けた。



「奴等との決着が付いたら必ず結婚しよう」

『…プロポーズ?』

「いや、それは後に取っておいてくれ」

『じゃあ今のは何よ。』



 笑い交じりに言えば赤井はテレビに目を向ける。
 約束だよ。
 赤井の言葉に黒凪が笑顔のまま眉を下げる。



「約束する。…必ず俺もお前も生きて全てを終わらせると」

『…約束よ。』

「あぁ」



 決して離れてしまわぬ様に。
 …決して違えてしまわぬ様に。
 私達はその為に武器を手に取る。



『…そう言えば部屋の整理しなきゃいけないわ。貴方が起きて来るのを待ってたの』

「整理?」

『ええ。いい加減ちゃんと整理しないとね。』



 黒凪の言葉に片眉を上げた赤井が徐に立ち上がる。
 そうして部屋の中を歩き回り部屋の"整理"を始めた。
 それから数時間後にインターホンが鳴り響き2人が顔を上げる。



『コナン君かしら』

「だろうな。来ると連絡は入っていないが…」



 玄関に向かい外を覗くとやはりコナン。
 彼1人だと言う事を確認すると扉を開いた。
 すぐに滑り込む様に入ったコナンは素顔である黒凪に気を使った様だった。



「ごめんね、ちょっと小説を取りに…」

「なんだ、やはりボウヤだったか」

「うん。こんにちは、赤井さん」

「あぁ。…それより黒凪、ベレッタM92は何処に仕舞ってある?」



 あぁ、それならリビングのテレビの下にある引き出しの中よ。
 2番目の底の下に入れてあるから。
 すらすらと言った黒凪の言う通りにリビングに向かう赤井。
 コナンはごく当たり前の様に出てきた拳銃の名称とそれを仕舞っている場所に思わず固まった。



『今丁度整理をしていた所なの』

「…ちなみに何の整理を…?」

『?…家中に隠してある拳銃の整理だけれど』

「そ、そう…頑張ってね…(他人の家に何隠してんだこの人達…)」



 アークティク・ウォーフェアは貴方の部屋よね?
 あぁ。クローゼットの天井にある。
 そんな2人の会話を聞きながら書斎に向かうコナン。
 書斎に入ったコナンは目当ての小説の隣にある本の形をした入れ物を見つけた。
 まさかと思い開く。
 中身は思っていた通り…、



「それはコルト・ガバメントだ。」

「っ!」

「ジンに奪われたんでな、新しいのを調達し直した」

「へ、へえ…」



 こら。お子様には危ない代物よ。
 黒凪が背後から手を伸ばし拳銃が入った入れ物を持ち上げた。
 彼女は中身を確認すると手に持っていたメモ帳に文字を書き込み始める。



『えーっと、…コルト・ガバメントは書斎ね。』

「弾は?」

『…大丈夫。入ってるわ』

「なら次は風呂場のワルサーPPだな」



 私のなんだから丁重にね。
 そんな黒凪の声に赤井が「はいはい」と返す。
 風呂場にまで…と固まるコナンの横でコルト・ガバメントを元に戻す黒凪。



「…ちなみに他には何処に…?」

『私の部屋のタンスの中にレミントンM870があるわ。後はキッチンの食器の奥にグロック17、下駄箱にトカレフTT-33。後は…』

「も、もう大丈夫。…結構あるんだね、」

『備えあれば憂いなしって言うでしょう?』



 ふふふと笑う黒凪に一瞬ゾクッとした。
 俺の家は大丈夫なんだろうか…。
 恐らくこの家の至る所に武器があるに違いない。
 コナンは憐れみと心配を籠めて己の家を見上げた。



 結局物騒夫婦。


 (ねえ、ミネベアM60は何処?)
 (?俺は知らないが…)
 (…あ。私の部屋だわ)
 (何処に入れたか覚えてるのか?)
 (確か下着入れの中に…)
 (ゴホッ)
 (きゃあ!なんで珈琲を溢すの!)


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