隙ありっ Short Stories

□探偵作品関連
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  犯罪はご法度、ですよね

  江戸川コナン成り代わりの赤井秀一オチ。
  探偵連載"隙ありっ"とは全く関係ありません。

  ※夢主は女性です。



 地面にべっとりと付いた血を目を細めて見つめる。
 そして側の死体を見ればこれまた不可解な状態で発見されておりこの事件も解き明かすには時間が掛かるだろうと容易に想像できた。
 その事に微かにため息を吐くとぽんと頭に微かな重み。
 顔を上げれば汗がにじんでいた頭に帽子がかぶせられた。



『大丈夫だよ、ありがと』

「あかん。お前はまだまだお子様なんやから熱中症に気ぃつけんとな」

『…じゃあ借りとく。顔もあんまり出したくないしね』



 ぽつりとそう呟くと服部が隣にしゃがみ込んだ。
 死体をじっくりと見るつもりかと思えば目が此方に向いた。
 服部の顔を見返せば彼の顔は想像していたものよりも真剣なものだった。



「…何処におる、組織の人間かもしれへんっちゅーやつは」

『……。あの人混みに紛れたニット帽の男。哀の事を探ってる』

「……」



 服部はチラリと黒凪が言った特徴と合致する男を見るとすぐさま目を逸らした。
 目が合うと危険だ。
 黒凪は眼鏡をくいと上げると長い黒髪を帽子の中に入れる。
 幾分か涼しくなった、そう思ったと同時に次は服部とは逆方向から肩を叩かれた。



『!…哀。さっきあれ程出て来ないでって』

「あのねぇ。目の前で人が殺されていて心配じゃない筈…、!!」

『…だから言ったでしょ。゙あの男゙がいるの』

「……っ、」



 灰原が徐に胸元を抑える。
 やはり彼女の言う組織特有の気配は確かに感じるらしい。
 確実にあの゙ニット帽の男゙から。
 黒凪は徐に目を細めると灰原の手を引いて博士の車に向かう。



『とりあえず落ち着いて。さっさと私と服部君で謎は解くから隠れて置く事。ね?』

「…ええ、分かったわ」

『じゃあね』



 車の扉を閉めて走って事件現場へ。
 戻れば数分だったと言うのに服部が大体の証拠や謎は解き明かしていた。
 今回は自分の出る幕は無いらしい。
 流石だと素直に笑顔を見せニット帽の男を探した。
 男は静かに周りを見渡している。



『(やっぱり探してる…、)』

「工藤。この事件、さっさと片付きそうやで」

『うん。ネタばらしは服部君に頼むから』

「おう、任せとき」



 すたすたと刑事達の元へ向かう服部。
 その背中を見送った時。
 「おい」と低い声が背後から掛かった。
 目を見開いて振り返ればニット帽の男。



『…え、な、何?お兄さん…』

「茶髪の少女を知らないか。探している」

『し、知らないよ?私見てない、』

「……そうか。゙君なら゙知ってると思ったんだがな」



 冷たい瞳が黒凪を睨む様に見下して来る。
 黒凪はゾクリとした感覚を覚えると顔を青ざめた。
 それでも目を逸らす事はしない。
 …少しでも怪しい素振りを見せたなら。



「…くく、そう睨むな。何も取って食おうとしてる訳じゃない」

『!』

「……。君の正体に心当りが1つある。聞きたいか?」



 男の言葉に目をこれでもかと言うほど見開いた。
 私の正体に心当たりがある!?組織の人間が!?
 ぶわりと汗が噴き出した。
 まずい、蘭や博士に被害が…。



「君の正体が俺の予想通りなら゙これ゙が何か分かるか」

『…え、』



 男のポケットから微かに見えたカード。
 そのカードには見えるだけで゙FB゙の文字。
 カードの大きさからしてあと1文字または2文字入るだろう。
 すぐに思い浮かんだのは連邦捜査局、FBIの名前。



『…FBI、』

「その通り」

『で、でも貴方は組織の人間だって…』



 男が小さく人差し指を折り曲げ前後に揺らした。
 その動作を見るとまるで扉をノックする様だった。
 ノック、NOC。…Non Official Cover。
 …FBIから派遣された組織のスパイ。



「さて、俺の正体が分かった所で君の謎解きだ」

『!』

「率直に聞こう。君は工藤黒凪、組織の毒薬で殺された筈の高校生探偵だ。違うか?」

『…信用していいの』



 その言葉を聞くと男が黒凪の目の前にしゃがみ込んだ。
 そして黒凪の手にFBIの身分証を握らせる。
 男の影に入っている間に身分証を確認し、男の名が赤井秀一であると理解した。
 カードを返すと赤井が静かに口を開く。



「俺達FBIに協力してほしい」

『!』

「君は独自に組織を追っているらしいな。…君の推理力と行動力は目覚ましいものがある、協力を要請したい」



 軍人の様な言い回しをする赤井に只ならぬ気配を感じた。
 黒凪は赤井の顔をじっと見上げるとポケットから紙切れを出し電話番号を書き記す。
 それを赤井に渡し背を向けた。



『此処では場所が悪いから、また仕切り直しましょう。この事件の解決もあるから』

「…解った。連絡は俺からする」

『よろしくお願いします、赤井さん』

「こちらこそ。工藤さん」




 これが私達のファーストコンタクト


 (もしもし、工藤さんだな)
 (…恥ずかしいから゙工藤さん゙は止めてください。黒凪で十分です)
 (なら黒凪ちゃん。次はいつ会える)
 (明日ならどうにか。場所は…)


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