隙ありっ Short Stories

□探偵作品関連
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  犯罪はご法度、ですよね

  江戸川コナン成り代わりの赤井秀一オチ。
  探偵連載"隙ありっ"とは全く関係ありません。

  ※夢主は女性です。



『(…あれ?)』



 見覚えのある車に思わず足を止めて目を見開いた。
 黒の外車、名前はシボレー。
 小学校からの下校途中だった黒凪は運転席に座る人物を確認すると少し離れた場所で改めて足を止めた。



「?…どうしたんですか、黒凪さん」

「何だよ黒凪。トイレか?」

「大丈夫?体調でも悪いの?」

「……。」



 一斉に振り返った光彦、元太、歩美、灰原。
 その4人にニコッと笑った黒凪は「用事を思い出したから!」とお馴染みの言葉を並べてくるりと方向を変える。
 急いだ様子で走り去った黒凪に顔を見合わせ、首を傾げる一同。
 黒凪はシボレーの元へ戻ると待っていた様に此方を見ている赤井に笑顔を見せた。
 赤井はハンドルに凭れていた体を起こすと動作で助手席の扉を示す。
 黒凪は慣れた様子で扉を開き赤井の隣に座った。



『最近急に寒くなりましたね…。』

「子供は大変だな。こんな雪の日でも外を歩くのか」

『子供は風の子ですから。赤井さんこそ何してたんですか?』

「君を待ってた。」



 エンジンを掛けた赤井に「え?」と目を向けた。
 すると車がゆっくりと発進し車を抜いて道を進んでいく。
 流れる景色を横目に赤井をチラリと見上げた。
 赤井はそんな黒凪に目を向け彼女の赤くなった鼻先を見ると少し目を細めた。



「…。温かい珈琲ならあるが…」

『やった』

「…生憎俺の飲みさしでな」

『?…構いませんけど…』



 あっけらかんと言った黒凪に息を吐いて珈琲を差し出した。
 両手で受け取った彼女は言葉の通り何の躊躇も無く喉に流し込む。
 それを呆れた様に横目で見てカチリと暖房をつけた。



『にしても私を待ってたって、何かあったんですか?』

「あぁ。組織の連中の情報がまた入ってな」

『最近多いですね、』

「これだけ日本に留まっているんだ、よほどの大物が標的なんだろうさ」



 ハンドルを切り曲がった車に思わずしがみ付く。
 そんな黒凪に小さく笑った赤井はビジネスホテルに車を止めると慣れた様子で中に入って行った。
 黒凪もそんな赤井に小走りで着いて行く。
 そうして1つの部屋に辿り着くと2人で中に入り込んだ。



「ただいま帰りました」

「お帰り。…あらクールキッドじゃない!」

「成程、強力な助っ人とはそのお嬢さんの事だったのか」

「ええ。こう見えて頼りになるもので」



 頭に大きな手の平が乗せられた。
 そんな赤井に目を向けると離れた左手の手の平が視界に入る。
 ぽんと叩かれた両肩に前に目を向けるとしゃがんだジョディがニコッと笑顔を見せた。



「久々ね。」

『うん、ジョディ先生も元気そうだね!』

「聞いたわよ?最近はシュウと一緒に奴等を追っているそうね」

『殆ど役に立てて無いよ…。赤井さんが敵をどんどん倒して行くんだ!』



 ニコニコと子供らしく話す黒凪に内心で舌を巻く赤井。
 そんな赤井を見つつ黒凪を見たジェイムズは小さく笑った。
 それでは奴等について話をしても良いかな?
 少し大きな声で言ったジェイムズに全員の視線が集中する。



「恐らく標的はこの3人の中の誰かだ。」

『!…標的は絞れてないの?』

「生憎な。奴等も情報をそう簡単に流す様な事はしない」

「ただ、この3人が居る場所に奴等が現れたという情報が入ってるの。」



 それも沢山。
 真剣な顔で言ったジョディから再び机の上に並べられた写真を見る。
 1人は女性の知事、もう1人は男性の裁判員、最後の1人も男性で医者。
 ジェイムズが女性の知事を担当しジョディが男性の裁判員。
 黒凪と赤井は最も狙われている可能性が高い医者の男を監視する事となった。



「あ、そうだシュウ」

「?」

「煙草。忘れてたわよ」

「あぁ…」



 手を伸ばした赤井。
 しかしジョディの手から受け取る寸前で手をピタリと止めた。
 首を傾げるジョディに笑みを見せた赤井は手を引っ込めていく。



「子供が居るんでな。今日は預かっててくれ」

『別に良いよ?私気にしないし…』

「いや、身体にはあまり良くないからな。…側にあると吸いたくなるから頼む」

「…解ったわ」



 きゅ、と煙草を持ち背を向けるジョディ。
 その背中を見送った赤井は黒凪に手を伸ばし彼女を持ち上げた。
 わっと目を見開いた黒凪に知らぬ顔をして抱える。



『…あの、これは…?』

「子供が出来るとどんな感じかと思ってな」

『子供って…』

「分かってる」



 へ?と赤井に聞き返すとチラリと彼の目が此方に向いた。
 君は子供じゃない。
 その言葉に「分かってるなら…」と眉を寄せると頬を赤井の長い指が撫でた。



「君はれっきとした女性だ」

『!?』

「そうだろう?」

『そ、そーですけど』



 女性をこうやって抱えるのは初めてだな。
 そんな事を言いながら歩き出した赤井に顔の熱が収まらない。




 犯罪の手前辺りまで来てるよね?


 (…赤井さんってロリコンだったり)
 (ゲホッ)
 (あ、違いますよね!?すみません!)
 (……。君に対してならそう捉えられても)
 (ギャー!!もう良いです!もう何も言わないで!!)


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