隙ありっ Short Stories

□探偵作品関連
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「…あの、赤井さん?」

「悪いな。こんな姉で」

「いやそれは良いんだけど……爆睡だね…」

「あぁ。全くもって起きない」



 だらーんとしている黒凪をソファに寝かせ、ふー…と息を吐いて赤井がその隣に座り込む。
 流石は大柄な赤井の双子の姉と言う所だろうか、姉である彼女も優に175cmは超えているのではないかと思われる。
 そんな彼女を真顔で運び込んだ赤井さんはやはり凄いし、高身長と合わせてグラマラスな体系をしている黒凪も凄いと思う。



「(マジで何なんだろこの血筋の人達…)」

「姉さん。おい。…困ったな、全く起きない」

「(…"姉さん"って呼んでるんだ…)」



 なんだか新鮮な気分だ。あれだけ凄い彼にも母親がいるし、父親だっている。…姉だっているのだ。
 赤井が黒凪の頬を何度か軽く叩くと彼女はやっと目を覚ました様に動き、大きな欠伸を1つ。
 しかし彼女はまだぼーっとしたまま。



「あ、やっと起きたのね貴方のお姉さん。お水入れて来たけど…」

「…あ。ジョディさんそこ軽い段差…」

「え?」



 しまった余計な事を言ったかもしれない。
 コナンの一言を皮切りにバランスを崩したジョディに彼女に声を掛けた本人が顔を青ざめる。
 コップはプラスチック、落ちても大丈夫だ。…ただ中身が飛び散った方向が些か悪く。



『ぅわっ!?』

「っ、大変!」

「構わんさ。水でもかぶれば流石に起きるだろう」

『…確かに目は覚めたけど…』



 水を頭からかぶった黒凪の厚化粧が崩れて物凄い事になっている。
 せ、洗面所使う?扉を出て左だけど…。
 そう言ったコナンに「是非使わせて頂きます…」とすごすごと洗面所へ歩いて行く。
 その背中を困った様に見送ったジョディはすぐさま自分が溢した水の後始末に動いた。
 床やソファに飛び散った水が殆どジョディによって拭き取られた頃になって洗面所の扉が開かれる。



「わ、赤井さ…」

『え?』

「え、あ、…えっ?」

『…あ、私黒凪です。秀一の双子の姉…』



 えええっ!?とキャメルの驚いた様な声が聞こえてくる。
 彼は先程まで玄関の方でジェイムズに電話を掛けていたから、黒凪が居る事に気付いていなかったのだろう。
 やがて2人でリビングに戻るとコナンとジョディも目を大きく見開いた。



「「(そっくり…!)」」

『昔は秀ちゃんも髪の毛を伸ばしてたから見分けがつかなくて…』

「身長で判断出来る筈なんだがな」



 確かに並んでみればその身長差は歴然だ。
 しかし化粧を完全に落とした彼女は完全に赤井秀一そのもの。
 …いや、姉であるなら赤井の方が黒凪そのものであると言うべきか。



『そう言えば秀ちゃん、何だかうちの上司ともめてるみたいだけど…』

「あれはあっちから吹っ掛けて来た喧嘩だ。俺は悪くない」

『そうなの?大変だったのねえ』

「あぁ。大変だった」



 …不思議だ、彼女と会話をする赤井さんが何故か可愛く見えてくる。
 こう見ると彼も列記とした誰かの"弟"であるのだと認識出来た。
 ちょ、いくら弟だからってそんなに簡単に信用しちゃって良いの?
 私達は今貴方達と敵対しているFBIで…。
 そう言うジョディに黒凪がにっこりと笑った。



『秀ちゃんが言ってる事が本当か嘘かは双子だから分かります。…私達、お互いに唯一無二の存在じゃないですか』

「え、ええ…」

『だから何があっても信じるって決めてるの。…ね、秀ちゃん』

「あぁ。」



 仕事の面ではあまり期待してないがな。
 小さく笑って言った赤井に黒凪も困った様に笑う。
 言動や物腰からとても赤井の双子の妹とは思えない彼女だが、そのそっくりな顔を見てしまえば確かに双子なのだと認識せざるを得えない。



『で、どうして私をこんな所に呼んだの秀ちゃん。また何か助けて欲しいの?お金?住む場所?』

「いや、今回はそう言った類の頼みじゃない。…組織を一緒に追ってほしいと思ってる」

『……』

「姉さんが加わればこの上なく俺は安心だ。あまり身内を巻き込みたくはないが、そろそろ奴等も本格的に動き出していているんでな」



 協力してくれないか。姉さん。
 赤井のその言葉を最後にじーっと暫し全く同じ顔が見つめ合う。
 その奇妙な状況にコナン達が唖然としていると黒凪が徐に微笑んだ。
 …余談だが、微笑んだ顔は赤井そっくりでありかなりのイケメンである。



『分かった。秀ちゃんがそんなに言うなら協力する』

「助かる。」



 赤井さんから頼み込むなんてなんだが不思議な感じですね。
 そんなキャメルの言葉にジョディもうんうんと頷いている。
 コナンも想像も付かなかった様な赤井の姿に思わず何度か頷いた。




 You can't tell a book by its cover


 (そう言えば秀ちゃん、きっちゃんは元気?純ちゃんは?)
 (2人共日本にいる。今度会いに言ったらどうだ)

 ("しゅうちゃん"、"きっちゃん"、"すみちゃん"か…改めて聞くと多いな、兄弟…)
 (シュウがちゃん付けされてるなんて面白いわね…)
 (はい…)


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