世界を君は救えるか×NARUTO

□世界を君は救えるか
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  一族


『――と、言うわけで。』



 たん、と複数の書類を机に打ちつけた黒凪が顔を上げる。
 1つの机を囲む様に座っている面々を見た彼女が口を開いた。



『人手不足です。』

「…あー…」

「なんで?」

【どっからどー見ても人手不足だろォ】



 納得した様に眉を下げた正守とさっぱり分からないと言う様に周りを見渡す良守。
 対照的な兄弟を見てため息を吐いた黒凪を見かねて会議に出席している時音が説明する様に口を開く。
 しかしかぶせる様に「七郎のトコの部下使えばいーじゃん」と言った良守の頭を叩き改めて時音が話し始めた。



「扇一族の部下の皆さんは確かに異能者ばっかりだけど、…言葉は悪いけど力不足。」

「わー、はっきり言っちゃった。」



 はははと笑う七郎に「ごめんなさい」とすぐさま謝った時音だったが「でも俺もそれは自覚してる」と眉を下げて言った彼に彼女も眉を下げた。
 間一族とその分家として数えられている結界師達。
 彼等は基本的に暗部が扱い切れない様な仕事や里の警護を担当している。



『あのね良守君。私達に回される仕事は基本的にとても危険なものばっかりなの。』

「…そーなの?」

『そーなの。暗部が担当すれば無駄な死者が出かねないS級犯罪者の相手やとても大きな敵組織の壊滅だとか、そんなものしか私達には流れて来ない。』



 それは大勢の相手に対応出来る結界術と里に認められた私達の戦闘力の高さから任されているもの。
 でも実際にそんな仕事を任せられるのは七郎を覗いたこの部屋に居る全員だけ。
 良守の目が部屋に居る人間に向けられる。
 正守、良守、守美子、時音、黒凪の結界師と火黒、限、閃。
 七郎は扇一族として里全体を日夜護り続けると言う義務がある為除外。
 少ねえ!と良守が机をばーんと叩いて立ち上がった。



『でしょう?しかも単独行動は禁物だから最低でもツーマンセルになる。』

「し、繁じいと時ばあ連れてくりゃ良いんじゃ…」

『あのお二人も確かにかなりの術者だから問題はない。でもあの人達にはもしもの時の里の警護を任せてる。』



 父様は木ノ葉の上層部だから勿論動けないし。
 君も分かったと思うけど、この人数でこれ以上の仕事はこなせない。
 その所為か少し前から暗部の被害をいくつか聞いてる。



『多分父様が私達に流される予定だった任務の中から難易度が低いものをいくつか暗部に流してるんだとと思う』

「随分気を使われてるわよね。」

「はー…暗部ももう少し頑張ってくれないかなぁ」

「…あ、夜行は?夜行の戦闘員なら…」



 あいつらなら既に暗部の手伝いに回してる。
 それでも暗部の人間だけが死んでうちの者は深手で済んでたりするから上も煩くってさ…。
 体の作りが違うから仕方ないって毎回言ってんのにね。
 両手を組んで話す正守に同調して黒凪もげんなりした様子で言った。



『大体上層部って煩いんだよ。無駄に沢山任務を流して来るくせに夜行の救護班貸せとか…』

「そんなわけで夜行もてんやわんや。…もういっそ斑尾達の封印解いてやろうかなって思ったね」

『暴れると余計に面倒だって時音ちゃんに却下されたけど。』

【アタシだってそんな下働きはイヤだね。】



 俺も正直嫌かなー。
 人間の命令に従う気はない。
 ゆるゆると現れた斑尾と白尾。
 黒凪の影から現れた鋼夜も2匹の言葉に同調した。



「じゃあどうすんだよ。」

『…そこで考えてみたんだけどさ』



 1番手っ取り早いのが木ノ葉に所属してる忍以外で実力が高いのを集めるって案なんだけど。
 それ誰の案?すぐさま問うた正守に「はい。」と黒凪が手を上げる。
 正守は一旦言葉を止めると息を吐いて黒凪から目を逸らした。



【他の里から洗脳でもして連れて来るって事かァ?】

『それもちょっと考えた。』

「私が却下しておきました。」

【うんうん。俺もその方が良いと思うぜハニー】



 んじゃあどうすんだよ!
 良守が耐え切れない様に言った。
 その言葉に黒凪がニヤリと笑う。



『丁度良いのが最近動き出してんだよね。』

「"丁度良いの"?」

『そ。…尾獣を集めてるって言うS級犯罪者組織。』

「…まさか暁?」



 無表情で問うた守美子に「その通り。」と黒凪が頷いた。
 暁だったら抜け忍だから里からとやかく言われる事もないし、悪い事に使わなきゃ文句も言われないよ。
 緩く笑って言った黒凪に「どうやって従わせるつもり?」と時音が言った。



『暁のメンバーって殆どが報酬だとかで動いてる奴ばっかりで明確な目的は持ってないらしいのよ』

「一応世界征服が目的で動いてんだろ?暁って」

『それを夢見て動いてる奴が何人いるかって話よ。多分人を殺せるからだとかそんな理由の奴が大半だと思う』

「…確かにそんな連中なら手中に収めるのは案外簡単かもね。使い勝手は良いかもしれない。」



 そいつ等の面倒を君が見てくれるならだけど。
 正守の目が黒凪に向いた。
 彼と目が合った黒凪は「勿論全ての責任は私で良い。面倒だって私が見る」と宣言する。
 それを聞いた面々は「それならいいか」と顔を見合わせた。



「性格に難がある人の扱いが上手だものね。」

【おいおい、そりゃあ誰の事だァ?】

【アンタと鋼夜だろ。】

【あ?銀露テメェ…】



 はいはい、喧嘩は無し。アンタもその尻尾直しなさい。
 ぐぐぐと影から飛び出した鋼夜の鋭い尾を押し込み黒凪が部屋に居る面々に目を向けた。



『それじゃあ私はこれから暁に関する案件だけをこなすから。連れてくメンバーも選ばせてね。』

「何て自分勝手な…」

「諦めろ、アイツはあんな奴だ」

「…ま、俺がどうにか回すよ。」



 兄貴は黒凪に甘過ぎんだよ、と目を細めた良守に困った様に眉を下げる。
 すると襖の向こうから「頭領ー」と正守を呼ぶ声が聞こえた。
 襖を開くと夜行の副長である刃鳥が立っている。



「刃鳥?どうかした?」

「あ、頭領。どうやら風影が暁に連れ去られたらしくて」

『暁?』

「ええ。砂は木ノ葉の同盟国でもありますし一刻を争う事態なので我々にも出動要請が。」



 正守の目が黒凪に向いた。
 彼女は立ち上がると「その暁の特徴は?」と刃鳥に問いかける。
 すると刃鳥の背後から翡葉が顔を見せて口を開いた。



「今の所確認されてるのは1人だ。金髪の若い男らしい。」

『おー。我愛羅とタイマン張って勝ったんだ。』

「あぁ。爆発する術を使うんだとよ」

『爆発?……その場合なんて言うんだろ、爆遁?』



 そんなの聞いた事無いけど…。
 時音が言った言葉に皆一様に頷いた。
 まあ、得体の知れない術を使うから強いんだろうね。
 そう呟いて立ち上がった黒凪は徐に部屋の中を見渡した。



『んー…。1番連れて行きたいのは七郎君なんだけど…』

「僕は里の警護で抜けられないですねー。…こっそりなら行けますけど。」

「止めとけ、紫島さんが流石にノイローゼになるぞ…」

『…その爆発が術の1種なら時音ちゃん連れていこっかな。移動手段は鋼夜を使えば良いし、今回は私等だけで。』



 怪我するなよ、と心配げに言った良守に時音が笑う。
 大丈夫。私空身使えるし。
 そう言った時音に良守が小さく頷いた。



『あ、刃鳥さん』

「ん?」

『"我々にも"って事は他に誰か風影奪還に向かったんですよね。誰ですか?』

「確か第七班と第三班だったかしら。カカシ班とガイ班って言ってたわ」



 って事は勿論カカシも行ってんだよなァ。
 笑いながら言った火黒に「行きたい?」と問えば「あァ」とすぐさま答えてくる。
 顔を見合わせた時音が頷いた為「じゃあ一緒においで」と黒凪が笑った。



『さーて。人員補給だから殺さずにね。』

【へいへい】

「わっ、」

【ギャー!お前ハニーに何してんの!?】



 時音を背に乗せて立ち上がった鋼夜が黒凪を見る。
 乗れと言う合図だったが火黒が彼女を抱えた為舌を打った。
 いってらっしゃい。と正守が笑顔で手を振る。
 それに黒凪が手を振り返した瞬間に一斉に全員がその場から離脱した。




 暁狩り、始動。


 (あ。アイツいつの間に俺にメモなんか残して…、……。)
 (?どうした、閃)
 (…いえ、また面倒な事を任されたので…)
 (…"暁のメンバーの過去を全て洗い出せ"、か。鬼畜だね)
 (しかも期限が2週間ですよ…)


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