世界を君は救えるか×NARUTO
□世界を君は救えるか
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風影奪還編
『傀儡の口と関節…固めればやっぱり動かないんだ?』
「!」
サソリの目が傀儡に向かう。
確かに全ての関節と口元に結界が掛けられていた。
無表情のサソリと黒凪の視線が交わる。
サソリが黒凪から目を離さず指を動かした。
傀儡の動きを止められてもチャクラを止められたわけじゃない。
「(…何を考えてやがる)」
『…!』
「(この至近距離で何故俺を殺しに来ない)」
ぎゅるぎゅると回転した砂鉄の武器がサクラとチヨバアの結界を破壊しに掛かる。
3重に作っていた結界が徐々に破壊されていった。
結界を作り直そうと構えた黒凪の真上にも砂鉄の武器が降り注ぐ。
黒凪の意識が一瞬自分の絶界に向いた途端、結界が破壊された。
「ソォラァ!」
『!』
砂鉄が一気に分裂し鋭い刃が木の幹の様に細かく細かく伸びていく。
砂鉄が物凄い勢いで広がり、その衝撃で天井までも破壊されていった。
流石のサクラもそんな勢いで広がる砂鉄を殴り飛ばす事は出来ずチヨバアがサクラをチャクラ糸で操りその攻撃を避けていく。
天井が崩れ始め、瓦礫がサクラに意識を集中させているチヨバアに降り注いだ。
それを見た黒凪はすぐにチヨバアの周りに結界を作り丸腰の彼女を護る。
そしてサクラに目を向けた途端、細かい刃がサクラに降り注ぎ彼女が見えなくなった。
『(しまった、死んだかな)』
【…血の臭いがする。怪我を負ったのは確かだ】
「サクラ…!」
チヨバアの声に目を凝らしサクラを探す。
砂鉄の刃に囲まれ顔色の悪いサクラが立っていた。
鋼夜の言った通り、彼女の腕に傷がいくつかある。
サソリの攻撃に当たれば致死量の毒を飲んだ事と同じ状態になる。…砂鉄はどうか。
ふらりとサクラの身体が大きく揺れた。
「!やはり砂鉄にも毒を…っ」
「クク、じきに身体が痺れて動かなくなる」
サクラが倒れ込む。
その様子にサソリの顔に笑みが浮かんだ。
放っておけば3日は持つが…。
黒凪がサソリに背を向けサクラに向かって行く。
その真上を物凄い速度で三代目風影が進んでいった。
「お前は此処で殺す。」
「サクラー!!」
『…。(また上層部にどやされるな…)』
三代目風影の右腕にある武器。
それを見た黒凪は諦めた様に眉を下げた。
しかし起き上がったサクラが三代目風影を一撃で粉砕し「あ゙」と思わず声を出す。
『(あー…三代目風影壊しちゃった…)』
【(フン。即戦力は諦めるんだな)】
チヨバア、黒凪、サソリ。
3人の唖然とした目がサクラに向かった。
周りにある砂鉄が崩れサクラがチヨバアの元へ向かう。
黒凪が結界を解いてやりチヨバアもサクラに近付いた。
「(…どういう事だ…?あの小娘、俺の毒を受けて自分の意志で動いてやがる…)」
『…鋼夜、分かる?』
【……。薬草の臭いがする。解毒薬でも持ってきていたんだろう】
絶界を身に纏ったままサクラの側に行くとチヨバアに鋼夜が言った通りの事を話していた。
作った場所は砂隠れ。どうやらサソリは我々と戦う以前にカンクロウを毒で倒していたらしい。
その解毒の際にもう2つ程解毒剤を作り、持って来ていた。
『よく作ったねサクラ。五代目の教え?』
「うん。随分修行したから」
『…そっか。その解毒の効果はいつまで?』
「3分間。…それまでに方を付けないと」
分かった。そう言って頷いた黒凪がサソリを見ると小さく舌を打ち自分のコートに手を掛けた。
ゆっくりと外されていくコートのボタンに黒凪が小さく笑う。
恐らく三代目風影を壊された事に他の人傀儡を使っても無駄だと考えたのだろう、
「仕方がねぇな…」
「(黒凪が言っていた通り、自分の身体も傀儡に…!)」
「随分と久方ぶりだ、自分を使うのは」
コートを脱ぎ捨て、サソリが腰を落とす。
黒凪はじっと彼の身体の仕組みを見ると微かに眉を寄せた。
鋼夜も「分かり易い弱点だな」とボソッと呟く。
『(あの丸見えの弱点だけは改良して貰わないとね)』
【(ありゃあ狙い撃ちされると危ういんじゃないか)】
てかどうやって持って帰ろうかな。
傀儡の身体じゃ意識を奪う事は出来ないだろうし、変に攻撃したら壊れてしまう。
うーん、と考えている黒凪に両手を向けたサソリの手の平から炎が噴射される。
その炎を結界で受け止め、徐に無線の電源を入れた。
≪――…はい、刃鳥。≫
『あ、刃鳥さん。そっちにまじない班で手が空いてる人います?』
≪今なら主任の染木が自室に居る筈だけど≫
『蜈蚣さんは?』
蜈蚣も自室に。
その返答を聞いた黒凪は口を開きかけたが、身体を横に真っ二つに切り裂かれ目を見開き言葉を止めた。
視界にサソリが高圧で放つ水の柱が入る。
恐らくその圧で周りの岩ごと切り裂かれたのだろう。
「黒凪!!」
「まずは1人…」
「まさか間一族の人間までもがサソリの手に掛かろうとは…っ」
【(チッ)】
影から鋼夜の尾が伸び離れた上半身と下半身をくっ付ける。
その様子に眉を顰めたサソリだったが構わずサクラとチヨバアに目を向け水を放った。
走り回るチヨバアとサクラ、その2人を殺しに掛かるサソリ。
それらを横目に見ていた鋼夜は息を吹き返した黒凪を見て息を吐く。
無線からは黒凪の名を呼ぶ刃鳥の声がしていた。
≪黒凪?≫
『あ、すみません。…それじゃあ文弥くんと蜈蚣さんを川の国にある暁のアジトまで寄越してくれます?』
≪了解。≫
『元々洞窟だったんですけど、今は天井が崩れて中が丸見えなんで空から見ると分かり易いと思います』
伝えておく。その言葉を最後に切られた無線に目を細めると鋼夜が黒凪に声を掛けた。
そろそろ3分経つ、解毒の効果が切れるぞ。と。
その言葉に黒凪が顔を上げるとプロペラの様な武器を回しチヨバアに迫るサソリを捕まえ、サクラが拳を振り上げた所だった。
まずい、と結界を作ろうと構えるが一瞬遅くサクラの拳がサソリを殴りパーツがバラバラになり倒れる。
『(あ゙。)』
【(……)】
すぐさまパーツと共に落ちたであろう、サソリの胸元の核を探す。
すると核がぴくりと動き胴体のパーツに戻ると他のパーツ達もゆっくりと元の位置に戻り始めた。
恐らく核を壊さない限りは身体が元に戻る様に作られているのだろう、最後に頭が戻りサソリが復活する。
「残念だったな。この傀儡の体は何も感じない。」
「っ…!」
サクラにとっては己に毒が効かない3分を使い切っての猛攻だったのだろうが、一歩及ばなかったと言った所だ。
唖然とするサクラの背後で分かっていた様に目を細めていたチヨバアが徐にポーチの巻物に手を伸ばした。
「…もう終わりにしよう、サソリよ」
「?」
「これは己に禁じた術。…もう決して使う事は無いと思っておったが」
サクラがばっと振り返るとチヨバアによって開かれた巻物から十体の傀儡が現れる。
その数を見たサソリがゆっくりと口を開いた。
「傀儡使いの能力は一気に扱える傀儡の数で決まると言われている。…それがババア極意の指の数の傀儡共…」
「…!」
「それで城1つを落としたらしいな」
だが。
サソリのチャクラ糸が彼の背中にある巻物に向かい1つの巻物が取りだされる。
開かれた巻物から大量の傀儡達が上空に放たれ、開かれたサソリの胸元から無数のチャクラ糸が傀儡達に向かった。
カタカタカタ、と沢山の傀儡人形の音が響き渡る。
「俺はこれで国1つを落とした」
『…ざっと100はあるね』
「黒凪…!?」
「!(…何故生きてやがる…?)」
しっかりとくっついた身体にサソリが眉を寄せる。
黒凪は特に疲れた様子も無く立ち上がり空を見上げた。
無数の傀儡達が各々で武器を構える。
『…半数を結界で捕まえられたら良い方か』
「赤秘技・百機の操演」
動き出した傀儡達を1体ずつ、確実に結界に閉じ込めていく。
襲ってくる傀儡の攻撃を鋼夜が受け止め、その隙に結界を作り次々と傀儡を捕まえて行った。
全ての結界の強度を傀儡に壊されない程度に保ちつつ徐々に数を増やしていく。
頬を伝う汗に少し眉を寄せた。
「…ほう」
『結!』
「中々悪くない眺めだが…」
一気に攻撃を仕掛けてくる沢山の傀儡に更に眉を寄せる。
さっさと死ね。サソリの言葉に応える様に傀儡達が武器を黒凪に向けた。
目を見開いた黒凪が一気に20つほどの結界に傀儡を閉じ込める。
その様子にサソリが無表情に舌を打った。
続いてサクラやチヨバアの方に向かう傀儡達も結界で閉じ込めて行く。
「サクラ!この封印をサソリに投げつけろ!」
「はい!」
『!(封印?)』
物凄い勢いで走っていくサクラに目を向けその周りの傀儡達を閉じ込めていく。
耳元の無線が着信を知らせ、まじない班がアジトの側に到着した事を知らせた。
無線の電源を入れ手を休める事無く口を開く。
『文弥くん!?今何処!』
≪入り口のすぐそこ。…凄い数だね、あの傀儡を全部屋敷に転送する感じ?≫
『そう!まじないをアジト全体に掛けてて、転送する時言うから!』
≪了解。まじないを掛けるのに3分ぐらい頂戴ね。≫
ブツッと通話が切られ傀儡を閉じ込めつつサソリを見る。
サクラが思い切り投げた封印が一直線にサソリに向かって行った。
黒凪はすぐに目の前に迫った傀儡を結界で囲い、チャクラ糸を結界でぶつりとちぎる。
そしてちぎられ、一瞬弛んだサソリのチャクラ糸を掴み自分に引き寄せた。
「!」
魂蔵の力で筋力に力を流し込んでいた黒凪の力はすさまじく、サソリがくんっと引き寄せられる。
サソリはかすかに目を見開いて己の胸元から伸びるチャクラ糸を伝って己を引き寄せる黒凪を目に映した。
途端に封印がサソリに直撃し封印と共に壁に衝突した。
すぐさま壁に貼り付けになったサソリの周りに封印の紋章が浮かび上がる。
『…(核は逃げてる)』
【…。チヨバアの真後ろだ】
『文弥くん』
≪ほいよ。あと10秒ぐらい待って≫
核を移動させたサソリがゆっくりと立ち上がる。
チヨバアの元へと戻ろうとしていたサクラが焦った様に走り出した。
耳元で5、4…とカウントが始まった。
サソリが刀を振り上げる。
≪3、2……1≫
『解。』
「チヨバア様…っ!!」
≪転送。≫
大量の傀儡を閉じ込めた結界を解除すると同時にまじないが発動しサソリや傀儡達が一斉に姿を消した。
チヨバアもサクラも目を見開き周りを見渡す。
戦った後は残っているのに相手が何処にもいない。
先程までチヨバアを殺す一歩手前だったサソリさえも。
「…どういう、」
「…サソリ…?」
≪任務完了かな?≫
『うん、ありがと』
無線を切ってチヨバアとサクラに背を向けてアジトの出口へ向かう。
そんな黒凪にサクラの焦った様な声が掛かった。
「ちょっと待って!まだサソリが周りにいるかも…」
『サソリはさっき私が殺した。』
「っ!?」
『私は仲間の所に行かないと。』
影から現れた鋼夜にサクラとチヨバアの目が向いた。
鋼夜の背に乗った黒凪がアジトから出て行く。
時音と火黒の臭いを追う鋼夜の背中の上で無線の電源を入れ口を開いた。
『正守?ちゃんとサソリは転送された?』
≪うん、ちゃんと牢屋に入ってる。傀儡の量が凄くて収まってないけどね≫
『あ、やっぱり?そんな気はしてた。…私が行くまで手出しはしないでね』
≪はいはい。分かってます。≫
無線を切って足を止めるとデイダラを捕まえた火黒と時音が向こう側から向かって来ていた。
合流した黒凪は捕まっているデイダラの顔を覗き込み軽く手を振る。
デイダラは露骨に眉を顰め黒凪を睨んだ。
サソリ、捕獲成功。
(やあ、赤砂のサソリだね?)
(っ…?)
(この場所ではチャクラは使えないから無駄な抵抗は止めた方が良い。)
(その内君の担当が来るからそれまで待ってて。)
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