世界を君は救えるか×NARUTO

□世界を君は救えるか
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  不死の破壊者


【――!おい、右手伸ばせ】

『え、こう?』

ゴフッ

『あ、無道さんおはようございます。』



 ズザーッと掴み取ったマフラーを見た鋼夜がブレーキをかけ、共に黒凪に捕まっている無道も引き摺られて止まる。
 彼と共に走っていたらしい巻緒、大、亜十羅もすぐさま足を止め振り返った。



『無道さーん。起きてー』

「…やあ黒凪ちゃん…俺は今とても美しい走馬灯を見たよ…」

『大丈夫ですって、走馬灯見ても私達は生き返りますし。…あ、今もしかして1回死にました?』

「…何とかギリギリ持ち堪えたとも…」



 流石ですね。と笑っていると無道と共に居た3人が此方に駆け寄ってくる。
 そして無道の側に居る黒凪を見ると一斉に目を見開き、まず亜十羅が彼女の元へ両手を広げて飛び込んだ。
 ぎゅーっと思い切り抱きしめられ黒凪の手から掴んでいたマフラーが落ちる。



「黒凪じゃないのー!」

『亜十羅!?よかった、無道さんに会えたんだ!』

「あー、良かった!あんな事があったからあんた達が居るって話半信半疑だったのよー!」

「…やはり完全な信用を得る事は難しい様だね」



 帽子を綺麗にかぶり直して困った様に言った無道。
 亜十羅の言う"あんな事"とはあの世界にて部下達を虐殺した事だろう。
 その記憶も持っている無道だったが、生憎この世界にて彼を完膚なきまでに負かした総帥はまだ見つかっていない。
 その上あの世界で本当の死を迎えた時(本人によると)改心したそうで、間一族の一員として過ごしている。



「…あの、閃と秀は…?」

『居るよ。屋敷に戻れば2人共。』

「戦闘班はどれぐらい集まってる?」

『白道さんと黄道さんがまだです。その2人が見つかれば全員ですよ』



 そうか、と巻緒が少し嬉しそうに言った。
 その背後では大も安心した様に微かに微笑んでいる。
 これだけ時間を掛けてまだ3人だ。もう少し集めてから戻ってこようかと思っていたんだがね…。
 そう言って地面に胡坐を掻き腕を組んだ無道に目を向けた。



『あぁ、そう言えばなんで戻って来たんです?戻る気が無かったんなら尚更…』

「呼ばれている気がしたからさ!」



 ぴんと人差し指を立てて笑顔で言った無道にため息を吐く亜十羅達。
 しかし黒凪は「おー!」と手を叩いた。
 正解です!私が呼びました!
 そう言った黒凪に「え゙」と固まる3人、そしてぱあっと顔を輝かせた無道。



「俺の予想ではぼうやに呼ばれたのかと思っていたが、まあそこは良いだろう!」



 ぐっと両手を握られ黒凪もニコニコと笑顔を向ける。
 そんな2人に「なにあれ」と顔を見合わせる亜十羅達。
 するとそんな黒凪達の元へ1つの竜巻が近付き中から七郎が姿を見せた。



「暁と20小隊の内の1つが衝突したので一応報告に来ました。」

『あ、やっぱり衝突しちゃったか…』

「何?あんた達任務の最中だったの?」

『うん。その任務に無道さんの力が必要だから此処まで来たの。』



 ほう!俺の力が!
 笑みを浮かべて陽気に言った無道を見、亜十羅が困った様に振り返った。
 木ノ葉の里まではまだ距離があるし、屋敷の場所分からないのよね…。でも無道さんを連れて行ったら黒凪が困るし。
 そう言った亜十羅に「じゃあ僕がお送りしますよ」と七郎が笑顔を向ける。



『じゃあ3人をよろしくね。七郎君。』

「はい。」

『えーっと、暁は何処の換金所だっけ?』

「地図ありますか?」



 地図を広げ、七郎が徐に1つの換金所を指差した。
 そこへはほんの少し距離がある。
 黒凪と共に地図を覗き込んでいた無道が足元に少し大きな黒い玉を出現させた。
 そして黒凪を横抱きにし、それを見た鋼夜はすぐさま黒凪の影に戻る。



「急ぎだろう?俺の方が恐らく速い。」

『頼みます。…じゃあね七郎君』

「ええ。気を付けて。」

「それじゃあ出発だ!」



 ギュンッと黒い玉に乗って物凄い勢いで進んで行った無道。
 黒凪は物凄い風に眉を寄せつつ徐に無道の肩に触れる。
 その手をチラリと見て無道が笑った。



「随分と蓄えてあるだろう?」

『そうみたいですね。…抜かりないなあ』

「それは君もだろう?かなり力を蓄えているじゃないか。」

『相手が不死だと聞いて急いで蓄えたんですよ。』



 ほう、不死…。
 少し驚いた様にそう返した無道に黒凪が顔を上げる。
 すると彼女の耳元にある無線が着信を知らせた為音量を上げて2人で耳を澄ませた。



≪ガガ、…黒凪か?伝え忘れた事があったから聞いてくれ。≫

『うん』

≪飛段って奴の能力についてなんだが、多分相手の血を取り込む事で自分と相手の傷をリンクさせる能力だと思う≫



 まず最初に相手に傷をつけて血を取る。
 そんでその血を舐めると身体に変な模様が浮かぶんだ。
 それから自分の周りに妙なサークルみたいなのを書いて…。



≪そのサークルの中に入り、あとは自分自身を傷付けるだけ。それで血を取った相手も自分と同じように負傷する≫

「ほう。とても興味深い能力だな。」

≪…無道さん?≫

『不死には不死をってね。』



 へえ、考えたな。
 そう言った閃は「角都の方はサソリとデイダラが言ってた通りだ。」そう言って一旦途切れた会話の最中に草の中を駆け抜ける様な音が無線に届いた。
 恐らく閃は今朝に言っていた通りにジャシン教や冥安について調べに外に出ているのだろう。
 少しぐらい休みなよ。と伝えて無線を切り、黒凪が徐に口を開いた。



『さっき言ってた飛段ってのは銀髪の男らしいです。そいつと一緒に行動してるのが角都。そいつの場合は5つの心臓を持ってるらしくて』

「と言う事は5回殺せば死ぬな。我々よりも死ぬ回数に制限があると。」

『ええ。でも角都の場合は5つの心臓の分、5つの性質変化を持ってるらしく実力は随分と高いそうです』



 まあ私達は全然生き返りますし、その最中に5回殺せば良いんで。
 どうにかなるでしょ。あっけらかんと言った黒凪と同様に無道も特に焦った様子も無くニヤついているだけ。
 そんな2人の会話を聞いていた鋼夜は「これが不死同士の会話か」とため息を吐きたくなった。
 彼等に死ぬと言う恐怖は無い。
 代わりに他人が死んでしまうと言う恐怖の重みを、人一倍背負う事となるが。


 
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