世界を君は救えるか×NARUTO

□世界を君は救えるか
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  不死の破壊者


「…飛段に2人、俺の方に4人か…。お前達、飛段を見縊り過ぎだ」

「……」

「だがお前達の判断は正しい。俺とお前達では戦闘経験が違い過ぎるからな。」



 お前達の額当てを見ていると最初に戦った木ノ葉の忍を思い出す。
 角都の腕から触手が溢れ出し始めた。
 …初代火影をな。彼の言葉にカカシ達が一斉に目を見開いた。



「(初代火影と戦ったと言う事は80年前には既に忍だったと言う事か。)」

「そんな、アイツ何歳なのよ…!」

「(と言う事は俺の年齢とあの頃の年齢を足しても…)」



 はっと無道が目を見開いた。
 気付いたのだ、戦闘経験値は同等かあちらの方が上である事に。
 この世界にも腕のある人間が居ると思っていたが、そう言う事か。
 若干顔をキラキラさせて考える無道にいのとチョウジの怪訝な目が向いた。



「はたけカカシ…、減らされた分はお前の心臓を頂く」

「…。」

「どうやら奴の狙いは君にあるらしい。」



 無道がカカシの隣に移動し「少し残念だが君の援護に回ろう。」そう言って仮面の方に黒い玉を向かわせた。
 それを見た角都は「また"それ"か…」と呟くとカカシに向かわず無道に向かって行く。
 少し目を見開いた無道は角都の攻撃を避け、後ろに後退して行った。
 角都はその背後にいるいのとチョウジを見ると無道を其方に誘導し仮面が雷を2人に向けて放つ。



「(…。仕方がないか)」



 黒い玉をいのとチョウジの前に出して攻撃を受け止める。
 その一瞬の隙に角都が手を硬化させて無道の心臓を突き刺した。
 血を吐いて倒れた無道を一瞥して火と風の仮面が相手をしているカカシを見る。
 仮面に集中しているカカシの一瞬の隙をついて触手を向かわせ、捕えた。



「カカシ先生!」

「ちょ、ちょっと!死んじゃったの!?」



 倒れたままの無道に駆け寄ったいのが声を掛けるが起き上がる気配はない。
 一方のカカシは角都の触手に捕えられ身動きが取れず、角都の手がカカシの心臓に伸びていく。



「っ、」

「終わりだ…。っ、ぐ!?」



 突然胸元を抑えて苦しみだした角都。
 その様子を見たカカシは「間に合ったか、」と息を吐いた。
 いのとチョウジもそんな角都に気付いた様で、脳裏にシカマルを思い浮かべ微かに笑みを浮かべる。



「ま、まさか…っ」

「お前の相方の儀式に、お前の血を利用した。」



 ドンッと角都が横に倒れた。
 それを見下して起き上がり「何処で…俺の血を…」と呟いた角都に応える様に口を開く。
 最初に雷切で攻撃した時だ。角都が目を見開いた。



「あの時に一緒に血を抜かせてもらった」

「く、…そ…」



 角都が目を見開いたまま動かなくなる。
 その隣で起き上がったカカシは心臓部分に張り付いている触手を抜き取り、走って此方に向かってくる3つの仮面に目を向けた。
 すぐさまチョウジが前に出て身体を巨大化し、張り手で叩き潰す。
 しかし仮面から伸びた触手がチョウジを締め上げ、すぐさま大きさを元に戻した。
 途端に火と風の仮面がカカシ達に攻撃を仕掛け、その隙に雷の仮面が角都の心臓部分に入っていく。



「っ、しまった…!」

「え、何…」

「…まさか仮面の心臓を…!?」



 ドクン、と角都の身体が大きく跳ね上がり、ゆっくりと立ち上がっていく。
 そうして向けられた角都の目にいのとチョウジが固まった。
 火と風の仮面も角都の元へ戻って行き、体中から触手が溢れ出す。
 マスクも外れ、口からも触手が溢れ出した。



「…本体も化物だな…っ」

「そんな、生き返った…?」

「……俺の心臓を2つ潰されたのは久方ぶりだ…」



 一瞬でカカシ、いの、チョウジを地面から現れた触手が拘束した。
 そして角都から溢れ出す触手の中から火と風の仮面が顔を出す。



「カカシ…貴様の心臓を奪って補充する気だったが、気が変わった」

「っ…」

「この場で全員塵にしてやる」



 開いた仮面の口から炎と風が同時に吐き出され巨大な一撃が3人に向かう。
 眉を寄せた3人はぐっと目を瞑った。
 しかしその瞬間、風と水の攻撃が角都の攻撃を相殺しカカシ達が顔を上げる。
 カカシ達の前に増援で駆け付けたナルト、サクラ、サイ、ヤマトが立っていた。



「…増援か」



 ボソッと呟いた角都を警戒しつつサイとサクラが刀とクナイで触手を切り裂く。
 そうして解放されたカカシ達は増援で駆け付けたナルト達を見て安堵の息を吐いた。
 ナルトが角都を睨む後ろでサクラがシカマルを視線のみで探す。
 するとそんなサクラを見てカカシが口を開いた。



「サクラ、サイ。シカマルがもう1人と少し離れた場所で戦ってる。パックンに案内させるからそっちに向かってくれ」

「!…解りました」

「はい」



 カカシが口寄せしたパックンが臭いを嗅いで走り出し、その後をサクラとサイがついて行く。
 そうして残った5人で角都に目を向けた。
 そんな中で徐に角都を睨んでいたナルトが1歩前に出て口を開く。



「此処から先は…俺がやるってばよ」

「…ヤマト、完成したのか」

「…。いえ…5割程度です」



 でも以前のナルトとは別人ですよ。
 薄く笑って言ったヤマトから視線をナルトに移す。
 そんな5人を離れた木の上に座って見ている無道は足を組み、顎に片手を持って行った。



「(この先あの男をこっそり掻っ攫うなら死んだままで居た方が楽ではある。ただ手を出さなければ下手をすれば里の忍が殺されるか、逆にあの男が殺されるか分かったものじゃない。)」



 さて、どうしたものか。
 じーっと角都を眺めながら考える。
 カカシは新しく現れたナルトとヤマトに角都の能力について説明していた。
 するとナルトが軽く影分身で様子を見つつ足を止め、3体の影分身でチャクラを圧縮していく。
 キ――ン…と高音が響き渡り、無道がナルトに目を向けた。
 風が巻き起こり、そのチャクラの強さに無道が微かに目を見張る。



「(あれは飲み込むのに随分と時間が掛かりそうだな)」

「(…食らうとまずいな、あれは)」

「(あの男が直撃すれば確実に死ぬだろう)」



 無道が立ち上がり気配を絶って近付いて行く。
 術が完成し、3体の影分身が角都に攻撃を仕掛けていく。
 それら3体を角都が倒した途端に生じた一瞬の隙を見てナルトが術を片手に飛び込んできた。
 完全に角都の隙を突いた。無道が黒い玉をナルトに向けて放とうとする。
 しかし角都に直撃する寸前で消え去ったナルトの術に攻撃を止め、隠れて様子を窺った。



「(なんだ、失敗したか)」



 すぐさまヤマトとカカシが援護をしてナルトを角都から引き離し、尻餅をついているナルトに皆で駆け寄って行く。
 まだ完全に完成していない術なのだろう、失敗したナルトに皆が微妙な顔をしているのが見えた。
 そうしてヤマトとカカシが角都を睨んで戦闘態勢に入るとナルトが再び先程の術を角都に放ちたいと言い始める。
 その言葉に無道はげんなりとしてナルトを見下ろした。



「危ない橋だってのは分かってるってばよ…でも此処を越えねーといつまで経ってもサスケには追いつけねえ。」

「…ヤマト、お前はどう思う」

「任せて大丈夫だと思います。…それにまだナルトの格好良いとこ、見てないでしょ?」

「……決まりだな。」

「(やれやれ、これだから力の持った子供は苦手だ。)」



 恐らく次は成功するだろう。
 あの術から角都を助け、尚且つ連れて帰るとなれば。
 …屋敷に帰ってから一度死ぬぐらいの覚悟は持っておこう。
 ため息を吐いてタイミングを見計らう様に覗き込む。
 話していた通りにもう一度ナルトが前に出て影分身を作り術を発動した。



「(…全く同じ方法で来るつもりか?)」

「(これだから単細胞は…)」



 再び3人の影分身が走り出し、後方に術を片手に持つナルトが居る。
 角都は目を細めると触手を上手く使って上空に飛び上がった。
 ほう、と無道が目を見開く中で角都が触手を後方にいるナルトに向けて一気に伸ばしていく。
 ズドンッと突き刺さった触手にカカシ達が眉を寄せた。



「(よし、オリジナルを仕留めた)」

「(…菊水と白菊に連絡を入れておくか)」



 角都の触手に貫かれたナルトが倒れている。
 それを見た無道は無線に手を伸ばしたが、ボンッと消えたナルトに目を見開いた。
 そして顔を上げると陽動に走らせたと思われた3人の影分身が角都の背後に向かって行く。



「!?(陽動にオリジナルを…!)」

「(おっと、これはまずい。)」



 角都に術が直撃し、吹き飛んで行く。
 それを追った無道は巨大な竜巻と物凄い突風に眉を寄せた。
 これは確実に死ぬ。そんな言葉が頭に過ったが致し方ない。
 黒い玉を周りに付けて飛び込み血塗れの角都を血塗れになりながら救出した。
 黒い玉に乗って突風に後押しされる形で森の方へ向かって行く。
 その勢いのままで森に入った途端に力尽き、角都と共に地面に落ちて転がって行った。



「っ、なんて術だ、全く…」

「……」



 虫の息である角都を横目に黒い玉を細く圧縮させて自分の心臓を貫いた。
 そうして倒れ、やがてけろっとした顔で立ち上がる。
 ボロボロになった帽子をかぶり直し角都を肩に担いだ。



「黒凪ちゃん、そっちはどうなったんだい?」

≪まあどうにか。そっちは?≫

「死にかけているが捕獲したよ。救護班に回しておく。」

≪分かりました。≫



 そうして通話を切り、角都を背に担いで黒い玉に乗って屋敷へ向かう。
 屋敷に戻ると血だらけになっている無道にまず正守が驚き、角都の状態に菊水がため息を吐いた。



 角都、捕獲成功

 (また物凄い状態で持ってきたな)
 (いやあ、俺も彼を助ける為に一度死んだのでね。)
 (え、死んだんですか無道さん)
 (ああ。華麗に自殺してやったさ!)
 (自殺に華麗も華麗じゃないも無いですよ。)

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