世界を君は救えるか×NARUTO

□世界を君は救えるか
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  遥かなる再会


 北の湖にあるアジトに辿り着き、大蛇丸の案内で中に入る。
 そしてとある一部屋に入ると大蛇丸がゆっくりと黒凪達に目を向けた。



「――…丁度私も貴方と話をしたかったのよ。間一族の時期当主さん」

「…時期当主?」

「あらカブト。貴方気付いてなかったの?」



 中忍試験のあの時だって後から現れた間一族の人間や周りの忍達を見ても彼女の実力は規格外。
 面白そうだったから木ノ葉崩しの際にあわよくば連れ帰ろうとしていたのに。
 大蛇丸の目がゆっくりと細まる。



「…貴方、木ノ葉がぐちゃぐちゃになっても現れないんだもの」

『……』

「あれは一体どうしてだったのかしら?」

『…別に。木ノ葉よりも優先させなければならないものが偶然現れただけ。』



 黒凪が目を細めて言った。
 脳裏にあの時の事が蘇る。
 …大蛇丸が木ノ葉崩しを実行した日、火の国の中でも北端の位置で巨大な力が暴発した。
 その力には覚えがあった。…弟の、宙心丸の力だった。



《おい、里はどうするんだよ!》

《構わない。里の忍に護らせる》

《…後から文句を言われるんじゃないのか》

《文句ぐらい後でいくらでも聞いてやる。…それより宙心丸だ》



 あれを放っておけば世界のパワーバランスが崩れる。
 間一族も扇一族も総出で其方に向かった。
 まじない班の手で周りに結界を作り、宙心丸の力を結界師全員で抑え込む。
 …宙心丸の力を抑え込むには随分と長い時間を費やした。



「…詳細は教えてくれないようね。」

『あんたに言ったら絶対に手を出すだろうからね。…知らない方が良いよ。あんな恐ろしいものは』



 ふうん、と大蛇丸が口元を吊り上げたまま言った。
 一方のサソリとデイダラは顔を隠したまま黙っている。
 チラリと大蛇丸とカブトの目がそんな2人に向いた。



「…大蛇丸様、あれがサソリの本体ですか」

「……そうねえ。顔を隠しているから分からないけれど」

「…カブト…テメェいつから術を解いてた…」

「掛けられてすぐに大蛇丸様に解いて頂きました。」



 あ、そう言えばさ。
 黒凪の声にカブトが振り返る。
 まさかサソリの部下になる前の時点で大蛇丸の部下だったなんて事ないよね?
 小さく笑って問いかけた黒凪にカブトがにっこりと笑った。



「その通りです」

「…チッ、最初から仕組まれてたか…」

「ええ。ボクは元々暁なんて大嫌いでしたよ。」

「そうかよ」



 殺気の1つでも飛んでくると思っていたのだろう、軽い反応にカブトが微かに目を見開いた。
 そんな様子に大蛇丸がゆっくりと口を開いた。



「カブト…貴方本当に何も知らないのね。サソリは暁の事なんて何とも思っていないわよ」

「…そうでしたか」

「フン。生憎俺にはプライドなんてもんは無いんでな」

「……貴方変わったわね。その心境の変化が暁を抜けて間一族に加わった経緯にあるのかしら?」



 黙ったサソリに小さく笑って黒凪に目を向ける。
 貴方達は一体何をしているのかしら。…どうやら最近は暁に関わっている様ね…。
 じっと黒凪を見つめて問いかけた大蛇丸に徐に口を開いた。



『うちも人手不足でね、暁を引き入れてんのよ。』

「へえ…」

『だから下手に暁には手を出さないでね。…横槍入れたら殺すよ』

「あら怖い。…そんな無茶な計画をいとも簡単にやってのける所が間一族だものね…」



 実際にサソリと、そこまで言って大蛇丸の目がデイダラに向いた。
 もう1人の新人を無事に引き入れた様だし。
 ククク、と心底面白そうに笑った。



「私達にとっても暁は邪魔な存在なのよ。好きにやって頂戴。」

『そう。ならよかった。』

「話はそれだけかしら?」

『ううん、あともう1つ。』



 うちはサスケに会わせてくれる?
 にっこりと笑って言った黒凪に大蛇丸が目を細める。
 黙った大蛇丸に黒凪がアジトに探査用の結界を広げた。
 アジト全体を飲み込んだ気味の悪い気配に中に居る全員が思わず眉を寄せる。



『――見つけた。』



 眠っていたサスケが目を見開いてゆっくりと起き上がる。
 ピクリと黒凪が眉を寄せた。
 …ああ、邪魔なのも来たね。
 黒凪の言葉に大蛇丸とカブトが入り口の方向に目を向ける。



『ナルト達も来てる。…さっさと身支度しなよ、大蛇丸』

「あら、逃がしてくれるの?」

『うん。まだ好きに動いてて良いよ。…でも時が来れば』

「…大蛇丸」



 掛けられた声に振り返る。
 サスケの目がゆっくりと黒凪に向けられ、捉える。
 そして徐に細められた。



「…何処か覚えのある気味の悪さだと思った」

『大きくなったねえ』

「…黒凪」



 何故歳を取っていない。
 この姿が1番動き易いのよ。
 淡々と会話をする黒凪とサスケを黙って見守るデイダラとサソリ。
 途端にサスケが目を細めた。



「――!」

「殺気垂れ流してんじゃねーよ。うん」

「…ガキが」



 音も無く踏み出して刀に手を掛けたサスケの腕や足に一瞬でサソリのチャクラ糸が巻きつき、抜かれかけた刀の柄尻の部分をデイダラが足で止める。
 一瞬で動いた2人にサスケの目がチラリと向いた。



「(…千鳥流し)」

「いって!」

「…オイ、止めておけ。腕が千切れるぞ」



 痺れに耐え切れずデイダラがサスケから離れ、動こうとするサスケをサソリが何とも無い様に拘束し続ける。
 傀儡の身体に雷は通らない。チラリとサソリを見たサスケは刀を力任せに抜いて糸を切った。
 サスケの腕の部分の着物には血が滲んでいる。



「…ずっと気に食わなかった。お前のその目…」

『?』

「戦う事に必要性を感じていない目だ…。悲しみを、憎しみを知らない」



 振り下された刀を結界で受け止める。
 ぐっとサスケの顔が近付き視線が交わった。
 サスケの瞳の奥には増悪が見える。



「…閃や限は元気か?どうせ今ものうのうと生きてるんだろ」

『うん。元気よ。』

「お前はどうせ、大切な人間を殺された事なんて無いんだろうな」



 今此処で、あいつ等を殺せば…
 チラリとサソリ達に向けられたサスケの目に黒凪が目を細める。
 お前のその胸糞悪い目も変わるのか?
 薄く笑みを浮かべて言ったサスケに黒凪が呆れた様に笑った。



『別に君と不幸自慢をする気はないけどさ。』

「!」



 ぶわ、と溢れ出したどす黒い力に目を見開いてサスケが飛び退く。
 黒凪を覆う絶界に大蛇丸はニヤリと笑みを浮かべた。
 サスケの目が黒凪に向く。
 伏せられていた彼女の目がサスケを映した。



『私は一度、大切な人を全員失った事がある。』

「……」

『だけど此処で…この世界で再び会う事が出来た。…だから今は誰1人欠ける事の無い様に必死に戦ってる』



 まあ君の大切な人が戻って来る事はもう無いだろうけどさ。
 親にも愛されず、大切だと思った人を救えず。
 …そんな事を繰り返していたら私はこんな風になったんだ。
 彼女の心の奥深い場所に根付くどす黒い部分を目の当たりにしているサスケは何も言わない。



『…うちにはこんな風な痛々しい奴ばっかりなんだよ。そんな人間を何人も見て来た』

「…」

『あんたもこうなる。…絶対に。』



 馬鹿な選択したよ、あんた。
 眉を下げて言った黒凪にむっと眉を寄せて刀を振り上げる。
 ふっと解かれた絶界に瞬時に反応してデイダラがサスケの前に割り込んだ。
 目の前に放り投げられた小さな起爆粘土にサスケの目が向く。
 黒凪がすぐさま構えた。



「喝ッ!」



 巨大な爆発にアジトに侵入していたナルト達が顔を上げる。
 一方のデイダラとサソリは黒凪の結界に護られて無傷だった。
 サスケ、大蛇丸、カブトは爆発を回避し崩れた屋根から外に出ている。



『大蛇丸。ナルト達が近付いて来てる』

「…あらそうなの。じゃあさっさと御暇しようかしらね」

「待て。あいつを殺す」

「無理だよサスケ君。君が彼女を殺すのは無理だ」



 サスケのイラついた目がカブトに向いた。
 すると「サスケ」と黒凪が声を掛けサスケが振り返る。
 下に立っている黒凪はにっこりと笑った。



『あんたを救うのは私じゃない』

「…何?」

『もうちょっとだけ待ってな。…その内あんたも救われる』



 そうしたら迎えに行ってあげる。
 サスケが怪訝に眉を寄せる。
 黒凪の目がチラリと大蛇丸に向いた時、サスケの名を叫ぶ声が微かに聞こえた。



『…サソリ、デイダラ。適当に変化して』

「サスケー!!」



 ナルトの声にすぐさま変化するサソリとデイダラ。
 そんな2人から目を逸らした瞬間にナルトを筆頭に第七班がサスケの前に現れた。
 サスケはそんなナルト達を見るとすっと目を逸らして消えて行く。



「くそ、また逃げられちまった…!」

『て言うか君達何?私等をつけて来たの?』

「ゔ、そ、それは…」

「そ、そんな事より!」



 サソリの顔を覆った布をサクラが一思いに剥ぎ取る。
 その下に見えた顔はサソリとは全く違った顔をした青年だった。
 思わず固まったサクラは安堵した様に息を吐き、黒凪の視線にビクッと肩を跳ねさせる。



『…あのねえ』

「いやー、君達が大蛇丸の所に向かったって聞いてさ。気になって付いて来た感じ?」

『…カカシさん。またサスケの時みたいに大蛇丸を殺すなって言うつもりですか?』

「…せめてサスケを取り戻すまでは」



 駄目です。私達の仕事を邪魔しないでください。
 即座にそう言った黒凪に「ゔ」とカカシも固まった。
 じと、と全員を見渡して徐にため息を吐く。



『…まあ今回は良いとしましょう。でも次は在りませんからね。』

「お、おう!悪かったってばよー…」

『…帰るよ。』



 黒凪の言葉に何も言わずにサソリとデイダラが頷いて彼女について行く。
 その背中を見てカカシとヤマトが顔を見合わせた。



「…妙ですね。大蛇丸を取り逃がしたにも関わらず、あの態度。しかもアジトの捜索はしない様ですし」

「そーだねえ。ま、間一族は昔から何考えてるか分からない一族だし。」

「……。」



 通常運転。

 (…相変わらずだな。お前の相手をイラつかせる会話)
 (図星突いたら皆基本的に怒るだけよ。)
 (態と図星を突きに来るから厄介なんだよな、うん)


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