世界を君は救えるか×NARUTO

□世界を君は救えるか
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  星隠れの里


 里に戻り星の元へと向かえばアカホシの命令で武器を構えた里の忍達が大勢立っていた。
 恐らくナツヒ達を迎え撃つ様にとでも命令を受けているのだろう。
 そんな彼等の前に堂々と降り立った黒凪はナツヒ、スマル、ホクトの背を押して現れたアカホシを見据える。



「…よく此処に来られたな、裏切り者め!」

「スマル…ホクト…何故お前達が裏切り者に…」



 呟く様に言った周りの忍にすぐさま「違う!」とスマルが反論した。
 俺の母様は里の皆の為に星を盗んだんだ!
 スマルの言葉を聞いたアカホシが眉を寄せ「殺せ!」と命令する。
 その声に反射的にボウガンを構えた忍達の手を黒凪が一瞬で結界で拘束した。



『話は最後まで聞く様に。』

「っ、なんだこの術は…!」

「星の修行はとても危険なものだ…!続けていたら全員死んでしまう!!」



 スマルの言葉に皆が顔を見合わせ眉を寄せた。
 アカホシ様、スマルの言っている事は本当ですか。
 震える声で言った忍達に眉を寄せ、アカホシが前に出る。



「戯言を信じるな!星の修行に耐えられないのは里を愛する気持ちが弱いからだ!里を愛する気持ちがあれば、皆が真の忍になれる!」

『見事な感情論…』

「だな」

「なんか宗教みたいだぞ…うん」



 呆れた顔で聞いていた黒凪が徐に全ての結界を解除する。
 両手が自由になっても忍達は迷った様に顔を見合わせたまま、武器を構えようとはしない。
 里の子供か、長か。どちらを信じるのか迷っているのだろう。



「――…僕の話も聞いてほしい!」

「!」



 声に振り返ればミヅラがふらふらになりながらゆっくりと此方に歩いてくる。
 そんなミヅラに里の忍達が徐に道を開けてやり、その姿に皆が顔を見合わせた。
 皆に見てほしいものが、あるんだ。
 苦しげに言ってミヅラが一気に服の胸元を開く。
 服の下にはチャクラに侵食されてボロボロになっているミヅラの上半身があった。



「っ、なんだあれは…!」

「あれが修行の影響だと言うのか…!?」

「…僕は、里を誇りに思っています。苦しくても里の為にと必死に…必死に修行を続けて来ました…!」



 それでも僕の気持ちは、僕の里を愛する気持ちは足りなかったんでしょうか。
 そこまで言い切ってから苦しげに咳き込むミヅラにホクトとスマルが駆け寄って行く。
 忍達が顔を見合わせる。ミヅラを見てからの彼等の表情は明らかに違っていた。



「あの言葉に、何よりあの身体に嘘は無い!」

「三代目が修行を長らく禁止していた理由はあれだったのか…っ」

「っ、裏切り者の3人を処刑せよ!!」



 切羽詰まった様に放たれた言葉に今度こそ忍達の敵意がアカホシに向いた。
 何を言う、あの子達は裏切り者では無い!
 そんな声に周りで傍観していた子供達もスマル達に駆け寄り護る様に立ち塞がる。



「も、もう無理だアカホシ…」

「そうだ、里の皆の意向に従って、」

「今更何を言っている!今頃良心を見せた所で我等の手は既に汚れておるわ!!」

「お、おいよせ…!」



 アカホシ、汚れているとはどういう意味だ!
 案の定聞き返された言葉にアカホシの部下2人が一気に顔を青ざめる。
 何も言わないでくれ、そんな目をアカホシに向けるがアカホシの目は血走り、その表情は怒りに染まっていた。
 止めに入ろうとした部下2人の両足を黒凪が結界で固定する。



「里の事を1番に考えられぬ里長など不要!だから俺が殺してやったのさ!」

「あ、あぁ…言っちまった…」

「くそ…もう終わりだ…」

「貴様等が三代目を…!!」



 忍達が一斉に武器を構え、アカホシの部下2人が縮み上がる。
 しかしアカホシはニヤニヤと嫌な笑みを浮かべたまま。
 徐にアカホシの手が胸元に伸びた瞬間、黒凪の結界が全ての関節を止めた。
 そしてアカホシの胸元に結界を作ると一気に押し潰す。
 さらさらと服の中から落ちた砂を見たアカホシの目が大きく見開かれ、絶叫が響き渡った。



『あれ?何か潰しちゃったみたい。』

「大事なモンをしっかり護らねぇのが悪い…」

「不慮の事故って奴だな。うん。」



 まだ叫んでいるアカホシに不機嫌に眉を寄せ、サソリが尾でその背中を軽く突き刺した。
 それだけでアカホシはぐったりと項垂れ、結界を解除すると地面に倒れ込む。
 ぽいと解毒薬を近くの忍に放り投げ「うるせぇから眠らせた…。それを飲ませれば目を覚ます…」とサソリが低い声で伝えた。



『…ずっと思ってたけどアカホシの事嫌いでしょ』

「基本的に他人は全員嫌いだ…」

『あらまあ暗い奴だこと。』

「あ゙?」



 ミヅラ!大丈夫!?
 そんな声に振り返って子供達の元へ向かう。
 苦しげに倒れているミヅラを抱えているのはナツヒで、彼女の縋る様な目が黒凪に向いた。



『んー…。サソリ、どう?どうにかなるかな』

「俺は医者じゃねェ…」

『…、設備の整った所で見て貰えば治るかもね。木ノ葉の病院に連絡取るよ』

「是非とも子供達を治してやってくれ…!」



 黒凪が里へ繋がる無線に手を掛けた瞬間にばっと頭を下げた男。
 恐らくアカホシを無くした後の星隠れのリーダー的存在なのだろう。
 そんな男を見た黒凪は微かに目を細め口を開く。



『でも子供達全員を完璧に見てもらうだけの医療費はありませんよね?こんな小さな里じゃ。』

「う、そ、それは…」

『間一族が払いましょう。ただその代わりと言ってはなんですが。』

「?」



 アカホシの胸元にある砂みたいなものに対するお咎めは無しって事で。
 にっこりと笑った黒凪に首を傾げた男の背後で「星が無い!」と他の忍達が焦っている。
 ね?と畳み掛ける様に首を傾げると男は「あ、あぁ…」と頷いた。



『よし、早速木ノ葉に連絡だー』

「ゴリ押したな…うん」

『良かったねスマル。これで皆助かるよ』



 にっこりと笑って振り返った黒凪にスマルが眉を下げた。
 最後まで迷惑掛ける。
 困った様に言ったスマルの頭に手を置いて再び無線に手を掛け、口を開いた。





























「全く!あの間一族の黒凪は何なんだ!急に木ノ葉病院に星隠れの子供を連れて来たかと思えば最安値で治療しろだぁ!?」

「ま、まあまあ綱手様…」

「チッ…!呼び出して説教をした所でどうせまたのらりくらりと誤魔化すのがオチだろうからな…!」

「そ、そうですよ。ですから此処は穏便に…」



 だが最安値はどうも納得が行かん!噂では里より間の方が儲かってると聞くぞ!
 えー、そんな噂があるんですか?
 突拍子も無く聞こえた声に綱手の眉間に一瞬で青筋が浮かんだ。



「入る時は"失礼します"だろうが!」

『あららご乱心。』



 お詫びに甘栗甘の最高級羊羹なんてどうです?
 置いて行け!とドスの聞いた声が響き黒凪が笑って綱手に近付いて机の上に置いた。
 イライラした綱手の目を見た黒凪はまたにっこりと笑う。



『ささ、お茶でも飲んで落ち着いてください』

「誰の所為でイラついてると思ってる!!」

『あははは』

「綱手様落ち着いて!」



 ガチャ、と扉が開きゆっくりとカカシが顔を覗かせた。
 あのー…、と間延びした声を掛けられた綱手はカカシを物凄い眼光で睨み付ける。
 完全にとばっちりではあるが睨まれたカカシは一瞬固まり静かに扉を閉めようとした。
 しかしそれを許さないのは黒凪で。



『ちょーっと待ってねえカカシさん。』

「今度はカカシを巻き込んで話を誤魔化すつもりか!」

『いやいや、誤魔化すつもりなんてこれっぽっちも…』

「笑顔で嘘を付くなー!」



 飛んで来たティッシュの箱やらを結界で弾きながらカカシを執務室へ引きずり込む。
 そうして黒凪が足で扉を閉めるとカカシはげんなりとため息を吐いた。
 …大体最近の間一族は目に余る!好き勝手やり過ぎだ!
 シズネに鎮められ羊羹を頬張りながら言う綱手にニコニコと笑顔を浮かべながら頷く。
 その顔を見た綱手の額にまた青筋が浮かんだ。



「…ねえ、君わざとでしょその顔。」

『はて何の事やら。』

「少しぐらいは反省した顔をしろー!」

「キャー!綱手様落ち着いてー!」



 いやあ、可愛い人ですねえ。
 暴れる綱手を見ながら言った黒凪に「え゙」とカカシが振り返る。
 …君さあ、綱手様はすごーーく年上なんだよ?もうちょっと敬いなさいよ…。
 そう言ったカカシに「そうですねえ」とそれでも尚笑顔を崩さない黒凪にカカシがげんなりとため息を吐いた。



 やりたい放題

 (…黒凪ってさ…なんかもう無理だよ…)
 (え゙、どうしたんだってばカカシ先生!?)
 (勝てる気がしないよー…、なんなのあの子…)
 (ええええ!?)


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