世界を君は救えるか×NARUTO
□世界を君は救えるか
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雪の国編
『――女優の警護?』
「うん。とは言っても"警護"ってのは建前で、本当の所は国盗りかな」
『国盗り?…何処の国?』
「雪の国。」
どうやら雪の国では10年前にクーデターが起きたらしくてね。
今回の任務はそのクーデターで奪われた雪の国を奪い返して先代君主の娘である風花小雪に献上する事。
これが風花小雪ね。そう言って正守が差し出した写真を見た黒凪は「成程ね」と肩を竦めた。
『女優ってこういう事か。…これ風雲姫シリーズのメインキャストじゃない。』
「お、珍しい。見てたんだ?」
『人気だからねえ。名前と顔だけだよ。…えー…っと、確か名前は富士風雪絵だったっけ』
「そうそう。凄い凄い」
馬鹿にしてんでしょ、と目を細めた黒凪に「あはは」と笑って正守が資料の下の方を指で示した。
うん?とその部分を覗き込んだ黒凪は「え゙」と目を見開き正守を見上げる。
「凄い報酬でしょ?俺も0の数を数えた時驚いたし」
『…これだけ出されたら断れないね…』
「うん。それに失敗も出来ないし。」
富士風雪絵が女優として稼いだほとんどを払うから必ず奪い返してくれってさ。
笑って言った正守にため息を吐いて黒凪が後頭部をがしがしと掻く。
分かった、じゃあどうにかするから。そう言って歩き出した黒凪は少し歩いて足を止め、思い出した様に振り返る。
『ねえ、そう言えばあの2人はまだ帰ってこないの?』
「ん?…あぁ、あの2人ね。結構遠くまで行ってるからついでに色々と任務任せちゃっててさ。」
『雪の国ならあの2人が適任だと思うし呼び戻しといてよ。』
「良いけど急いでも2日はかかるよ?」
あ、それか距離的に近いなら先にあの2人を雪の国に向かわせても良いよ。そこの所の判断はあんたに任せる。
そう言って歩いて行った黒凪に「はいはい」と返答を返して正守も自室に戻って行った。
「ちょっと!聞いてないんだけど!?」
「落ち着いてください、雪絵様」
「なんで船に乗ってるのよー!!」
そんな叫び声を尻目に目の前に次々と結界を作り上げて行き、1つの作品の様に仕上げていく。
その様子を「悪くない…」と呟きながら眺めるヒルコの中に居るサソリと「さっさと作っちまえよ、うん」とイライラした様子で眺めているデイダラ。
いびきを掻いて寝ている飛段に雪の国についての資料を淡々と読み進める角都。
そんな5人が海の上を進み続ける船の端の方を陣取っていた。
どたどたと足音が響き、今回の護衛対象でもある富士風雪絵が姿を見せる。
「何なのよこの忍は!」
「雪絵様の護衛を担当する間一族の方々でございます」
「間!?何よ間って!」
「落ち着いてください」
私は雪の国には行かないの!ですがもう船は出ております。降ろしてー!
そんな会話を聞きながら結界で作る作品を終わらせ、黒凪が立ち上がった。
まあまあ落ち着いて。大層な事でも言うのかと思いきや、にっこりと笑ってそうとだけ言った黒凪に雪絵が額に青筋を浮かべる。
「落ち着けるわけないでしょ!?今この船は何処に向かってるのよ!」
『雪の国です』
「なんで雪の国…!」
『雪の国を奪い返す為です…って言ってなかったんですか、三太夫さん』
雪の国の話題を聞くと怯えてしまわれるもので…。
困った様に言った三太夫。彼は女優である雪絵のマネージャーで、元は雪の国の先代当主に仕えていた忍であると言う。
おーい雪絵!化粧をしろ、撮るぞ!
そんな声に振り返った雪絵は「え、撮影するの!?」とこれまた驚いた様に叫んだ。
『いやー…、それにしても女優である彼女を雪の国まで連れていく為とはいえ、映画監督やスタッフまで同行させたのはやっぱり危ないんじゃないですか?』
「仕方がないのです。雪絵様は現在映画を撮っている真っ最中…。連れてこない訳には…」
『"仕方がない"で他人を巻き込む辺り、忍ですねえ』
「そうですか?」
ええ。目的の為なら危険もいとわない所が特に、ね。
笑って言った黒凪の前では化粧を施された雪絵が仕方がないと言う様に船の上で映画のシーンを撮影している。
恐らく映画監督やスタッフ達の様子だと国盗りの事など聞いてもいないだろうし、ましてや今から何処に向かおうとしているのかも分かっていないのだろう。
『雪の国にはいつ頃着く予定ですか?』
「明日の朝には。」
『分かりました。皆にもそう伝えておきます』
「か、監督ー!大変です監督ー!!」
「何だ朝っぱらから…」
そんな声に顔を上げる。
目の前の巨大な氷河に目を見開いたスタッフ達がわらわらと動き始め、寝起きの監督も「おおおっ!?」と驚いた様に叫んでいた。
その様子を船桁の辺りに座って見ていた黒凪は目の前に聳えたつ氷河、基雪の国に目を向ける。
「あれが雪の国か?うん」
『そだね。雪の国の端っこ。』
「起きろ飛段。」
「んぐっ!?」
どすっと鳩尾を角都に殴られ飛段が飛び起きる。
その様子を呆れた様に見ていたサソリも黒凪と共に雪の国を見ると「これは絶好のロケーションだ…!」と言う監督の声に視線を降ろした。
下の方では監督の指示でスタッフ達が雪の国への上陸を始めている。
「…呑気なモンだな…」
『此処で国盗りするなんて誰も知らないしね。思ってもみないだろうし』
そんな会話をしながら黒凪達も船から降りて監督達の後ろで雪絵の演技を眺める。
しかしやはりそう呑気に撮影を続けていられる筈もなく、撮影の最中に爆発の様なものが起き役者陣も驚いた様に目を見開いた。
その様子に「やれやれ」と動き出したサソリとデイダラは雪絵の前に、飛段と角都は爆発が起きた場所に向かって走り出す。
「ちょっとちょっと!映って貰っちゃ困るよ!」
『全員下がって下さいね。死にたくはないでしょう』
「は…?」
「――ようこそ、雪の国へ。」
そんな声が聞こえて顔を上げれば飛段と角都の目の前に爆発の中から現れた男が立っている。
はっと角都が振り返れば少し離れた位置に女の忍が立っていた。
「お帰りなさい小雪姫。六角水晶は持って来てくれたかしら?」
『(六角水晶?…なんだそれ、聞いてないなあ)』
「…あっちにももう1人居るな…」
サソリがそう言って振り返った先にぼこっと雪の中からまた男が1人現れた。
手練れの忍がいる様だな…。これ以上は近付けなんだ。
そう言った男に目を細めたサソリはチャクラ糸を伸ばして映画監督やスタッフ達を持ち上げ船に放り投げていく。
その様子を見た爆発の側に居る男、ナダレが徐に口を開いた。
「ミゾレ、フブキ。小雪姫は任せるぞ」
ナダレの言葉にニヤリと笑って飛段が鎌を構えて走り出す。
飛段とナダレが戦い始め、角都は走り出したくノ一であるフブキの方へ向かって行く。
スケートボードの様なものに乗って近付いてくるミゾレにはデイダラが向かった。
「氷遁・ツバメ吹雪!」
「ほう…氷遁か」
向かってくるツバメの様な氷を角都が避け、デイダラが片手間に爆発でその氷を破壊する。
そして迫ってくるミゾレの攻撃を避け、起爆粘土を放り投げるがミゾレが身に着けている鎧から放たれる風圧で起爆粘土が弾かれてしまった。
舌を打ったデイダラは動けない様子の雪絵の側に立つ黒凪と監督達を移動させているサソリを見て再びミゾレに目を向ける。
『雪絵さん、早く船に戻らないと』
「雪絵様!」
「嫌だ…行かない…っ」
怯えた様子の雪絵に目を細める。
恐らく爆発や氷を見て何かを思い出したのだろう。
…例えば、国を奪われた時の惨劇だとかを。
お命が危ういのですぞ!そう言った三太夫に「死んだって良い、雪の国にはいかない」そう叫んで雪絵が倒れた。
上手くデイダラを掻い潜って鎧の腕を伸ばして雪絵を捉えようとするミゾレの腕を結界で弾き、ミゾレ本体もデイダラの元へ吹き飛ばす。
しかしやはり吹き飛んで来たミゾレに対応したデイダラの起爆粘土は鎧の風圧に弾かれるだけ。
「チッ、変な鎧着けてんじゃねえよ、うん!」
『それは雪の国が独自に開発した鎧だって話だよ。チャクラを増幅させたり術を無効化したりするらしい』
「ククク、その通りだ。我等の鎧は最強無敵!」
「ジャシン様の前じゃ皆等しく虫けらだァ!」
笑いながら振り下される飛段の鎌を鎧で受け止めて氷遁・破龍猛虎の術で作り出された巨大な虎が飛段に襲い掛かる。
その虎に吹き飛ばされた飛段が黒凪達の側まで落ちてきた。
それを見た黒凪は角都に目を向け、その視線に気付いた角都が拳を硬化させて地面に叩きつける。
途端に氷河が崩れ始め、氷の破片で視界が悪くなった。
「っしゃあオラァ!ジャシン様の元に――」
『飛段、雪絵さん持って』
「あぁ?雪絵ェ?」
『ほら早く。』
倒れている雪絵を片手で持ち上げて鎌を持ち上げる飛段の頭を叩いて角都の名を呼ぶ。
ちらりと此方に目を向けた角都が腕を伸ばし黒凪の首根っこを掴んだ。
私の方かい、と眉を寄せた黒凪は飛段の腕に抱き着き飛段も角都の腕にぐんっと引っ張られる。
そうして全員がサソリによって船に乗せられていたスタッフや監督の元に戻り黒凪が振り返って口を開いた。
『急いで出してください』
「は、はい!」
「チッ、邪魔しやがって…。…なーこの女何処に寝かせりゃいい?」
『中のベッド…ってあんたまた服ボロボロにして…』
気だるげに雪絵をベッドに持っていく飛段を見送り、呆れた様に息を吐いて黒凪も船の奥に入っていく。
雪絵をベッドに寝かせて「うあ゙ー…」と言いながら飛段やデイダラが床に腰を下ろし、サソリと角都も徐に座った。
お疲れ。と黒凪も彼等の側に座ればがばっとデイダラが身を乗り出して口を開く。
「あのだせぇ鎧どうにかなんねえのかよ、うん!」
『何よ自分が苦戦してるからって。自分の身一つで戦わないの何てサソリと一緒じゃないの。』
「俺の傀儡とあの鎧が一緒だぁ…?てめぇ目が腐ってんじゃねえのか…」
「なー俺腹減ったー」
あ、おにぎりあるよおにぎり。
そう言って黒凪がおにぎりを差し出せば飛段と共に「んなもん何処で買ったんだよ」とヒルコから出てサソリとデイダラも手を伸ばす。
角都にも差し出せば彼も徐に手を伸ばした。
「このおにぎりは修史さんが作ってくれたから美味しいよ。あとケーキもあるけどどうする?」
「あ?ケーキィ?」
「ケーキなんざ何処で買ったんだよ、うん」
『良守君が作ってくれた。』
良守が作ったのかよ!?おもしれえ、俺様が食ってやらァ!
そう意気込んで箱を開いた飛段は完璧な見た目をしているチョコレートケーキに「おおお…」と声を漏らし恐る恐るフォークを突き刺した。
そして素晴らしい形だったケーキも崩れその破片が飛段の口に運ばれる様をサソリやデイダラが眺める。
「…え、うまい」
「マジか、うん」
「マジだマジ。食ってみろよ」
「……マジで美味ぇぞ旦那!」
デイダラの感想も聞いたサソリはフォークを受け取り徐に黒凪に手を伸ばした。
その手を暫く見ていた黒凪は「あ。」と呟くとその手を掴んで彼の身体を傀儡のものから生身に戻す。
『(そうだ、任務の前に傀儡にしてたんだった。だからおにぎりも食べなかったんだ…)』
「……。悪くねえ」
「オイ角都!お前も食えよ!」
「俺はいい」
おにぎりを食べながらぴしゃりと言った角都に「んだよノリ悪ぃな…」と言いながら飛段とデイダラが次々に食べていく。
その様子を携帯の写真に収めて良守に送っておいた。
携帯が良守の元へ写真を送った事を知らせる様にピロン、と音を鳴らしたと同時に扉が開き三太夫が顔を見せた。
「港に着きました。」
「お!遂に雪の国上陸かァ!」
『さっき1回上陸したけどね。』
「いちいち訂正してたらきりがないぞ」
そうか、それもそうだね。
そんな風に会話をする角都と黒凪に「テメェ等俺を馬鹿にしてんだろォ!」と飛段が噛みついた。
そんな飛段を放って外に出れば積み荷を降ろすスタッフ達が見える。
三太夫は雪絵を呼んでくると言ってもう一度船の奥へ歩いて行った。