世界を君は救えるか×NARUTO

□世界を君は救えるか
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  面食いお嬢様のヒーローは誰だ


「サソリー!!!」

「ギャーギャー喚くなうるせェ…」

『(あれ、ヒルコ脱いでる…?)』



 おやおや増援ですかぁ?
 そう嫌味に言ったリーダー格の男の真上に起爆粘土が落ちていく。
 目を見開いて顔を上げたリーダー格はそのまま爆発に巻き込まれ、降りてきたデイダラが黒凪を抱きかかえて爆炎から飛び退いだ。



『デイダラ、』

「偶然オイラ達の標的があのガキを狙ってこっちに来てたみたいでな…、うん」

『そっか、ありがと。…あ、そうだ飛段』

「サソリー!」



 サソリの方もすぐに忍の相手は終わったらしくナホ様が涙ながらに今朝の様に抱き着いていた。
 その様子を苦笑いで眺めて首を抑えている飛段の元へ駆け寄っていく。
 見事に斬られた首元の所為で上手く息が出来ずにいるらしい。



『あちゃー…、思いっきり斬られたね』

「っ、…」

『…サソリ、あんた医療忍術出来るよね?』

「傷を塞ぐ程度ならな…」



 そう言ってしがみ付いているナホ様を引き摺りながら此方に来ると徐に飛段の首元を治療し始めた。
 すると爆炎の中から「やれやれ…」と声が聞こえデイダラと黒凪が顔を上げる。
 炎の中から姿を見せた男は表面が黒く焼け焦げていた。



「いやー…、やられましたね。これがあると衝撃には強いんですが、どうもこう言った攻撃にはねえ…」



 そう言いながら身体の表面を崩していく男に「成程なぁ」とデイダラがにやりと笑った。
 土遁で身体の表面を覆っててオイラの爆発の衝撃を殺しやがったのか、うん。
 その言葉に「その通り。」と本来の姿を見せた男がニヤリと笑う。



『まあでもその表面が崩れたんなら私の結界も効く筈よねえ。』

「そうですねえ。ですが鎧を脱いだ私は――…」



 一瞬で姿を消しデイダラが即座に振り返り、黒凪もちらりと背後に目を向けた。
 物凄い速度で背後に回った男が拳を振り上げる。
 速いですよ?そんな男の声が掛けられたと同時に何かに気付いたデイダラが黒凪を抱えて飛び退いだ。



「ぐふっ!?」

「あ゙ー…。やっとうぜえ奴を呪い殺せるぜ…。」

『…。教育上良くない場面を見る事になりそうだからナホ様の目を隠してあげてサソリ…』



 男の血を掠め取った鎌が飛段の元へ戻って行き、その血を舐めて飛段が徐に己の腹部を槍で突き刺した。
 ぼたぼた、と響く鈍い音に「なんの音じゃ?」とサソリに両目を隠されているナホ様が問う。
 何でもねえよ。と返答するサソリに「そうか♡」と答える辺り、単純な少女だ。



「何をしているんです…?」

「テメェはジャシン様への生贄だァ…。光栄に思いやがれェ!」

「ぐあ!?」

「ゲハハハァ!痛ェか!?痛ェだろあぁ!?」



 ありゃだめだ、どうにもなんねえな。うん。
 そんな風に呆れて言いながらデイダラがナホ様の両耳を塞いだ。
 ザクザクと物凄い勢いで腹部を突き刺していく飛段に男の断末魔が響き渡る。
 そして最後に心臓を突き刺した飛段は笑顔で空を見上げた。



「…あ゙ぁ…キモチイイ…」

「チッ、相変わらず頭のネジが飛んでやがる」

「気持ち悪ぃな…うん」

『飛段、すっきりした?』



 黒凪が声を掛けるも飛段は痛みの余韻に浸っていて何も返してこない。
 そしていそいそと儀式に入ろうとしている飛段を見てため息を吐くとくるりとサソリとデイダラに身体を向けた。
 2人の手は依然ナホ様の両目と両耳にある。



『こりゃ駄目だ、時間かかるだろうからナホ様を村まで連れてってくれる?』

「あ?俺等が送んのか」

『嫌なら飛段の面倒見てる?どっちが良い?』

「……。送り届ける」

『よろしい。』



 じゃあオイラも旦那と行って来るぜ、うん。
 そう言ってナホ様を起爆粘土に乗せて2人が空高く飛び上がる。
 恐らく今頃は飛段は何処だと騒いでいる筈だが、心臓に槍をぶっ刺して気持ちよさ気に寝転ぶ飛段は見せるべきではない。絶対に。
 起爆粘土が見えなくなるまで見送った黒凪は徐に飛段に目を向けて近場の岩に座った。



『鋼夜、おいで』

【……】



 影からずるりと抜け出した鋼夜が「何の様だ」と言う様に目を向ける。
 その目を見た黒凪はにっこりと笑うと膝をぽんぽんと叩いた。
 即座に嫌な顔をする鋼夜を引き摺って上半身を膝に乗せるとやはり犬とは言っても妖で、予想以上の重さに思わず笑みが零れた。



『やっぱり思ったより大きいね。』

【…】

『もー、なんで黙ってんのよー。話し相手になってよー』

【…随分と気に入ってるらしいな。暁の連中を】



 え、何嫉妬?
 半笑いで言った黒凪に「本当にそう思うか?」と低い声が掛けられる。
 その言葉に「うん。」と頷けばギロッと黒凪を睨んで呆れた様にため息を吐いた。
 そんな鋼夜の首元を撫でながら黒凪は徐に再び飛段に目を向ける。



『言っちゃえばあれよ、私が好きな不幸な子達だからかなぁ』

【…フン。自分で理解していたか】

『当たり前でしょ。こんだけ生きてれば自分がどんな人間が好きでどんな人間が嫌いか分かるって。…そんで、私が嫌いな人間には優しく出来ないわがまま野郎だって事もね。』

【…。】



 目を細めた鋼夜の脳裏に正守の言葉が過る。
 過る、とは言っても随分と昔の事だ。言ってしまえば100年前、それよりも昔。
 …裏会の総帥を倒して裏会を再建し、鋼夜が改めて黒凪と出会うほんの少し前。
 俺が何としてでも戻りたいと願っていた森の封印を完全に解く事が出来る可能性のある術者が間もなく現れると、あの男に呼び出された時。



《これから来る人はさ、良く言えば分かり易くて悪く言えば単純すぎる感じの人なんだ》

《あ?》

《好きな相手にはあり得ないぐらいに優しくて、嫌いな相手にはかなり無慈悲になる。》

《…俺に気に入られろってのか》



 まあそう言う事だね。
 笑って言った正守に「俺は媚を売る様な真似はしねぇぞ」と唸ってやる。
 すると「そんな事はしなくて良いよ」と眉を下げて言ってから笑顔のままで襖に目を向けた。



《大丈夫、お前は絶対に好かれるよ》

《…?》



 あの時はどうして俺が好かれるなどと言い切れるのかと不思議なものだったが、実際に出会って共に生きれば嫌でも分かってくる。
 確かに黒凪はあの男の言う通り、良く言えば分かり易く悪く言えば単純すぎた。
 簡単に言ってしまえば、彼女は可哀相な奴が好きなのだ。
 自分と同じように悲しい人生を歩んできた人間が好きで、恵まれた人間は大嫌いなのだ。



「黒凪」

『!…あれ?デイダラだ』

「一応迎えに来たんだが…。…まだ終わってねーみたいだな、うん」

『もうちょっとだけ掛かるみたい。サソリは?』



 旦那も居るぜ。あのガキを連れて行ってからそのまま来たからな。うん。
 そんなデイダラの言葉に少し離れた場所に立っている起爆粘土を見るとサソリも無表情のままで此方に歩いてきた。
 その様子を見た鋼夜は何も言わずに影の中に戻っていく。
 それを見送った黒凪は徐に隣を叩いて2人を呼び寄せた。
 右側にデイダラが座り、側の木にサソリが凭れて立つ。



「ずっと待ってんのか?うん」

『そだよ。あんまり煩いと怒るから声は小さめにね』

「ったく…宗教の話になると煩ェ奴だ…」

『いーのよあれぐらい。代わりに飛段は私のお願い聞いてくれるし』



 お願い?と2人して問い返して来た言葉に頷いて「抱えて歩いてくれるし…」と言った黒凪に「おいおい」とデイダラが眉を下げた。
 そんなの誰でもやってんだろ、うん。そう言ったデイダラに「でも嫌々ながらやってくれてるんだよ?」と黒凪が飛段に目を向ける。
 サソリとデイダラも起き上がった飛段に目を向けた。



『私だって好きで待ってるわけじゃないんだし、これで五分五分かなって。』

「あ゙ー…」

『終わったー?飛段』

「…おー…」



 気だるげに片手をあげて槍を抜いた飛段が立ち上がる。
 そしてけろっとした顔で此方に歩いて来ると笑顔で片手を上げた。
 悪かったなァ、テメー等。そう言った飛段に「いいよ」と黒凪が笑って立ち上がる。



『んじゃあ帰ろっか。デイダラの起爆粘土があるからすぐ帰れるね』

「おう。晩飯には間に合う様に帰ってやるぜ。うん」

『ありがと…、うわっ』

「あぶねー…」



 歩き始めた黒凪の首根っこを突然掴んで引き寄せた飛段がぼそっとそう呟き、顔を上げる。
 どうやら今頃飛段にやられた男の仲間が此処に辿り着いたらしく、今しがた黒凪目掛けてクナイを投げて来たのだ。
 すぐさまサソリとデイダラが応戦し始め、その様子をぼーっと見ながら片手で持ち上げたままの黒凪の顔を飛段が覗き込む。



「危なかったなァお前。今頃俺様がいなけりゃ脳天にクナイぶっ刺さってたぞ」

『それは恥ずかしい。ありがと』

「おー…」

『……。…楽しかった?殺戮。』



 笑顔でそう問いかけた黒凪に「おぉ」と緩い笑顔で言った飛段。
 久々に好き勝手暴れて眠いのかもしれないなと彼の様子を見て思う。
 しっかりと眠れる環境を作れば彼はよく昼寝をする様になったし、もともと平和な国の生まれだったから子供の頃からよく眠る人だったのだろう。
 …と、勝手に結論付けているのだが。



『眠たい?』

「おー…」

『じゃあ今日の夕食は無し?』

「おー…。…ん?」



 夕食は居るでしょ?
 そう問いかけて来た黒凪に一瞬だけ考えてまた「おぉ」と返答を返す。
 忍の残党は見事にサソリとデイダラが一掃してくれた。
 そんな2人が振り返れば眠たそうにしている飛段とそんな飛段の背中に担がれている黒凪。



『よし起爆粘土に乗ってささっと帰ろう。』

「おー…」

「…ったく、眠そうな顔しやがって…うん。」

「黒凪、手ェ貸せ」



 差し出されたサソリの手に己の手を重ねて彼の身体を人間のものに戻す。
 そうして起爆粘土に乗り込み、里の間一族の屋敷へ向かった。



 じゃじゃ馬姫は喧しい

 (クソ美味ェ…)
 (食事中にクソとか言うなよ飛段…)
 (クソ美味しい…)
 (いやそこじゃなくて…)
 (クソ美味…)
 (だから違うっての!)
 (こらこら良守こそ食事中に立たないの。)


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