世界を君は救えるか×NARUTO

□世界を君は救えるか 番外編
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  野郎ども、お嬢様を護れ!!

  結界師×NARUTO連載「世界を君が救えるか」の夢主がもしも一国のお姫様で、暁が従者だったら。
  ※従者のくせに暁の口調はほぼそのまま。結界師のキャラが出る暇がない。



「…姫様。」

『……。今日は朝から勉強は無かったでしょ』

「ですが朝食があります。主治医がまた来ますよ。」

『…嫌。何とかサソリに言ってよ。』



 途端にばぁん!と扉が開いて1人の青年が入ってくる。
 振り返ったイタチは「ほら、来た。」と眉を下げて言い、力任せに布団を引っぺがしたサソリに呆れた様にため息を吐いた。
 サソリが片手で持ち上げている布団にしがみ付く黒凪にサソリの眉間に更に皺が寄る。



「さっさと起きろ黒凪。お前栄養失調で死にてえのか。」

『…お腹空いてない…』

「食えば空くんだよ。お前いっつもそうだろうが。」

『…デイダラー! 飛段ー!』



 布団にしがみ付いたままでそう叫んだ声に反応して扉が開かれる。
 はいはーい。と能天気な返答を返した飛段と「またか…」と言いたげなデイダラの顔が覗いた。
 それを見て黒凪がサソリをちょいちょいと指で刺す。



『見て、これ暴力だよね。』

「……。サソリの旦那はあんたの主治医だろ。」

「俺等は侵入してきた奴等殺すのが仕事だからなぁ、サソリは殺せねえわ!」

「退け。」

「痛って!」



 ゲハハハ、と笑っていた飛段を退けて角都が姿を見せる。
 彼は布団にしがみ付いている黒凪を見ると呆れた様にため息を吐き、手元の手帳を1ページ捲った。
 そしてそのページを見るとつかつかと黒凪に近付いて行く。



「朝食の時間を3分遅刻している。俺の手間を増やすな。」

『…今日は予定ないでしょ…』

「生憎だが予定が入った。隣国の王子との会談だ。」

『えー!!』



 るせえ、そんだけ元気なら飯食え飯!
 そう言ってサソリが布団ごと黒凪を引き摺って行き、その後をイタチと角都が何食わぬ顔をしてついて行く。
 その後にデイダラと飛段も続いた。
 この5人が姫である黒凪の従者。通称アカツキ。
 執事長の角都を筆頭に世話係のイタチ、主治医のサソリ、護衛担当のデイダラと飛段。
 彼等はこの周辺の国の中でももっとも実力が高く仕事のできる従者であると有名で、その甲斐もあって黒凪の命を軽率に狙うような輩は存在しない。


























「(…ま、狙ってくる様な馬鹿は殺気ダダ洩れのこういうのばっかだな。)」

「ゲハハ、あいつらぜってェ黒凪の事殺しに来たよな。」

「だな。うん。」



 巨大な一室の中央で食事をする黒凪と隣国の王子の様子を気配を消して監視するデイダラと飛段。
 黒凪の側ではイタチが静かにお茶を注いだり料理を運んだりと動き回っている。
 そんなイタチを監視する様に執事長の角都が少し離れた位置に何も言わず立っていた。



『……。(こいつら絶対私の事殺しに来てんじゃん…)』

「…お嬢様」

『ん?』

「あまりじろじろなさらず。王子も気恥ずかしいでしょう。」



 無表情にそう言ってデザートを出したイタチに「分かった分かった。」と運ばれたケーキに目を落とす。
 …あまり警戒した目で見るなって事ね。はいはい分かりました。
 そう自分の中で呟いてフォークを伸ばす。
 途端に微かな断末魔。声からして男。そして。



「ソォラァ!」



 扉が勢いよく開き5人程男が流れ込んできた。
 全員ぐったりとしていて、その様に王子とその側に立っていた側近2人が目を見張る。
 そんな彼等の視線の先で気だるげに首を鳴らしたサソリが不機嫌な顔で言った。



「俺ァ主治医なんだよ…余計な手間かけさせんな。」

『…元警護係筆頭のくせに。』

「オイオイサソリの旦那、あんたもう引退したんだから無理すんなよ。うん…。」

「ゲハハハ、こうなりゃ全員ぶっ殺すかァ?」



 …どうする。
 そんなイタチの低い声が真後ろから掛けられる。
 ケーキを一切れ飲み込んだ黒凪がゆっくりと目を王子に向けた。
 王子の顔は青ざめている。余程先程サソリにやられた男達を信用していたらしい。



『…隣国も盗ろうか。うちの敷地にしちゃおう。』

「お前がそう言うならそうしよう」

「…やれ。飛段。」

「ひゃっほう!」



 黒凪の言葉に写輪眼を開いてイタチが走り出す。
 途端に角都が飛段に向けてそう声を掛け、窮屈なスーツの上着に手を掛けた。
 飛段は笑顔で鎌を振り降ろし、デイダラはイタチに続いて外へ。
 サソリもにやりと笑うと部屋を出て行った。恐らく傀儡達を取りに行くのだろう。



「…ば、化け物…ッ」

『あれ? 飛段、殺し損ねてる。』

「んあ?」

「……たった5人で国を落とすなど…馬鹿げてる…!」



 5人?誰忘れてんだお前。
 飛段の素っ頓狂な声に虫の息で話していた護衛の男が血走った目を飛段に向けた。
 俺等は国を落とすっつーより邪魔者の排除だぜ?…国を落とすってのは…。
 飛段が眺める視線の先に必死で目を向ける。
 大きな窓から隣国を見ていた黒凪がゆっくりと片手を上げた。人差し指と中指をピンと立てて。ただ、静かに。



『…結。』



 白い膜のようなものが広がっていく。
 それはやがて隣国を包み、そして護衛の男は信じられない状況に額に汗が拭き出した。
 国と国とを分ける柵が瞬く間に消え去り、それを見て飛段が「あ。見えねえ?」と見当違いな事を言って男を持ち上げる。



「…馬鹿な…」



 隣国に無数の傀儡を率いたサソリ、起爆粘土の鳥に乗ったデイダラ、そしてイタチと角都が向かっていく。
 その様子に歯を食いしばり、男が震える手で胸元に手を差し入れる。
 そんな男に目も向けず黒い煙を上げ始める隣国を見ている飛段はまだ気付いていない。



「(此処で…この女を…っ)」



 ガウンッと音が響く。
 うお、と振り返った飛段は黒凪の背後に立つ人物と己が持っている男の首元を見ると男から手を離した。
 乾いた音を立てて倒れた男を一瞥して飛段が笑って顔を天井に向ける。



「よー。やるじゃねえかお前ら。」

「何が"やるじゃねえか"だ。こいつに何かあったらてめえバラバラ所じゃ済まねぇんだぞ…」

「飛段さんも良ければ行ってください。此処には僕と再不斬さんが居ますから。」

「そうかぁ? んじゃあ行ってくるわ!」



 窓に足を掛けて黒凪の隣を通り飛段が降りていく。
 その様を眺めてからちらりと己の背後に立つ再不斬に目を向けた。その再不斬の隣に白も静かに降り立つ。
 彼等は黒凪の側に立つと先程の彼女と同じように隣国の様子を見下した。



「…余計な犠牲が出ていなければ良いんですが」

「あいつ等なら大丈夫だろう。」

『…うん。あの子達器用だからね。』

「それもあるが、あいつ等は不思議と好き勝手にしているくせにお前の命令だけは聞くからな…。」



 ま、でも駄目そうだね今回は。
 そう言って眉を下げた黒凪の視線の先には各々武器を構えてアカツキの面々に向かって行く隣国の人間達。
 彼等の様子を見ている白は少しだけ眉を寄せて目を逸らした。
 そう。我々は決して正義ではない。先程死んだ王子はきっと国に愛されていたのだろう。



『……。』



 全ての始まりは2年程前だ。巨大なこの帝国を落とそうと攻めて来た国を壊滅させた。
 それから帝国内部を除いた外側の国には常に我々は恐れられている。そして不思議と此方に媚び諂う様になったのだ。
 毎年大金を寄越して来たり、国の国産物を送ってきたり。まるで此方には手を出さないでくれと懇願する様に。



『…余計な正義感を持った人もいるものだよね。…いや、貧困に困り果てて襲って来たのかな。』

「…我々はもう十分に事足りているのに、どうしてそれでも大金や食料を献上するんでしょうか。」

「恐れているからだろう。俺達を。」



 あの有様を見れば仕方がない事だ。
 そう言った再不斬の視線の先では大量の人間が一斉に襲い掛かっても何食わぬ顔をして往なしていくアカツキの面々がいる。
 そしてちらりと黒凪にその視線を向けた。



『…。』

「(死んで行く隣国の人間等どうでも良い、か。そんな顔だな。)」



 途轍もなく冷淡で、そんな彼女の横顔を見ていると彼女には慈悲と言う気持ちが欠如しているのではないかとさえ思ってしまう。
 彼女は自分と関わりの無い人間には驚く程に興味が無いから。…いや、皆誰しもそうなのかもしれない。ただ彼女ほど分かり易くはないだけで。
 それでも我々やアカツキが彼女の側に居る理由は――。




 今でも鮮明に思い出す。


 (手を差し伸べてくれた)
 (不思議と自分のこの虚しさを埋めた)
 (認めてくれた)
 (信用出来る居場所を与えて来た)
 (彼女と居れば退屈の無い日々がやってきた)
 (彷徨っていた俺達に安全な場所をくれた)
 (大切な人を共に護れる場所をくれた)

 (自分にとって貴方は希望なんだ。大切な人と自分を、助けてくれた。)


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