Long Stories

□京紫が咲いた
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「変若水…?」

「ええ。これを飲めば著しく戦闘能力が向上し、また驚異的な治癒能力を手に入れます」

「しかし同時に理性を失い、正気でいられなくなっちまう。…アイツの様にな」



 土方達の口から先程の男は元はこの浪士組の隊員である事が知らされた。
 皆一様に嫌な顔をしたが続けられる綱道の言葉に耳を傾ける。
 変若水を飲んだものを羅刹と呼んでいる事、そしてその力を奮う事が出来るのは夜だけだと言う事。
 それらを一通り説明し終えた所で土方が口を開いた。



「芹沢さん。俺はこの薬に関しての実験は反対だ」

「私も同意見です。あれでは戦力としては…」

「これは幕府からの命令だ。武士ならばどんなに理不尽な事であろうと受け入れろ」



 変若水に改良の余地はある。問題無い。
 そう言った芹沢に皆が一様に黙る。
 これからは綱道を中心に新見も加わり変若水の改良を行っていく。
 芹沢の言葉に新見が驚いた様に振り返った。



「せ、芹沢先生!?」

「良いな。新見」

「っ!…はい…」

「では私も手を貸す形で協力致します。」



 山南の言葉に土方達が振り返った。
 確かに芹沢さんの言う通り、我々に上からの命に背く権力も地位もありません。
 彼の言葉に皆一斉に押し黙った。



「…解った。とりあえず会議はこれで終わりだ。この事は他言無用…良いな」

『……。』



 皆何も言わず立ち上がり部屋から出て行く。
 黒凪も最後に芹沢を見ると部屋から出て行き自室に戻った。
 するど中゙で「おい、」と龍之介の戸惑った様な声が響く。



「(大丈夫だったのか?羅刹って奴と戦って…)」

『(問題無い。あれぐらいの奴なら次はもっと楽に殺せるさ)』

「(…そっか)」



 とにかくお前が無事で良かったよ。
 ボソッと呟く様に言った龍之介に目を向け眉を下げた。
 …一著前に女扱いすんなって言ったろ、龍之介。




 変若水と羅刹と、そして


 (人間は昔から勝つ事しか考えてない。)
 (…変わらないね、ホントに)


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