Long Stories
□世界を護るには
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『へえ…大きな屋敷だね。君の家?』
「いや、これは各隊長に与えられる屋敷だ。厳密には俺のものではない。」
『すごい待遇だねえ。』
「まあな。…とりあえず1部屋用意しておいた。現世に戻るまではそこで…」
そう話しながら角を曲がろうとしたとき。
意図せず黒凪が反対側の角から歩いてきた乱菊の胸にダイブする形となった。
しかしすぐにその弾力に押し返され、黒凪は「おっとっと」と体制を崩す。
『ああすみません。意図して胸元に突っ込んだわけじゃ…』
「いやいや、私こ…そ…」
「…松本?」
「…え、あ、はい…?」
どうしたお前。ぼーっとして。
眉を顰めて言った日番谷に「いや、その…」と珍しく歯切れ悪く返した乱菊。
そんな乱菊を見上げていた黒凪も先程己が突っ込んだ彼女の胸元へ目を向ける。
『…。(可笑しいな、彼女と私はかつて会った事があっただろうか?)』
【緊急事態発生!緊急事態発生!】
「「『!』」」
【護廷十三隊、三番隊に通達!断界内二○三地点にメノス出現!現在断界内を尸魂界に向かって進行中!…数は13体です!】
13体だと?
そう微かに目を見開いて言った日番谷は同じく驚いた様子の乱菊に目を向けた。
黒凪はその13体と言う数がどういう意味を表すのかいまいち理解出来ていないが、彼等の様子からただ事ではないのだと理解し目を細める。
「メノスがそんなに断界に…?」
「…馬鹿な…」
【――…通達。護廷十三隊三番隊はこれより断界に出現したメノスを排除。速やかに出撃準備を整え、断界に突入せよ。】
「!…早速新隊長が就任したばかりの三番隊に…?」
「…。良い機会なんじゃねえか?隊長職に就くぐらいなんだ、メノス相手にそう手間取りはしねぇだろ」
…間、悪いがこの騒動が収まるまで現世へは戻れねえ。
此方を見て言った日番谷に「なら私が道を創るよ」と笑顔で黒凪が言った。
その言葉に目を見開き「いや、」と日番谷が目を逸らす。
「テメェがそんな事をしたら余計にややこしくなる。」
『?…ああそうか。"此処"ではあまり好き勝手にやるとね…』
「……。」
『ねえ、さっき言っていたメノスというのはどこから来るんだい?』
「…虚圏っていうところだ」
『そっか…そんな名前だったんだ』
「あ?」
なんでもない。
振り返った日番谷にそういった黒凪はまた空を見上げる。
「尸魂界に自力できたことがあるお前なら、虚圏にも行っていたりしてな」
黒凪の反応を見るようにそういった日番谷。
対する黒凪は少し笑っただけだった。
モノを捨てたことはある。
(あー…また失敗した。)
(ていうかなんか消せないし。)
(そういえばさっき悪霊っぽいのが出てきた穴があったな。)
(…よし。捨てよう。)
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