CONAN

□マイヒーロー
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3月の終わりの日のこと。
黒の組織が壊滅し、江戸川コナンが工藤新一に戻って1年が経とうとしている。
同じく幼児の姿の宮野志保は小学生として、灰原哀として生きていくと決めた。

一年前の今日、
『宮野志保は死んだのよ。私は…自分のやったことを償わなくてはならないの……いえ、償っても償いきれないわね…。』
『…灰原。』
『だから、もう一度灰原哀として人生をやり直したい…。だめ、かしら?』


つらそうに笑うその灰原の表情が今でも新一の脳をかすめるときがある。

それから1年経ったいま…

「あら、今日学校は?」
「春休み。…ってか、おめーこそどうした?」
「小学校はもうとっくに春休みよ?」

俺と灰原は隣どうしで暮らしている。


あの日、あの哀しそうな顔をした後、いつものように『なーんてねっ!』とおどけた調子に言った灰原。


1年経った今では少し表情が豊かになった気がする。もうあの哀しそうな顔をすることはなかった。
…すくなくとも、俺の前では。


「あ、じゃ、じゃあ俺ん家来るか?母さんが送ってきた珈琲、俺だけじゃ飲み切れなさそうなんだよ、だから…。」

「ええ、じゃあお邪魔するわ。」

かみかみの俺にクスッと笑ったそこ顔に思わず釘付けになる。

これだから、最近家に誘うとなると妙に緊張してしまうんだ。
表情が豊かになり、笑顔を見せることが増えた灰原。灰原の笑顔は、何というか、可愛いという形容詞をそのまま表情にしたような…。
とにかく可愛い。




工藤邸に迷うことなく入っていく灰原。
それはどれだけ灰原がうちに来ているのかということ、そして、どれだけ自分のことを男として意識していないか、ということ…。
 

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