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□お留守番(立海)
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夏休み真っ只中。大半の学生が宿題に手を付けず、部活に没頭している。けれど毎日炎天下でのハードな練習は、精神的にも身体的にもくるものがある。
しかし、今日は日曜日。すなわち部活がオフであることを意味する。それは王者立海も例外ではない。今日は前々から約束していた通り、赤也の家にレギュラー全員が集まっていた。
「今日も暑いっスね〜」
「こんなんじゃお菓子を食う気にもなれねぇよぃ…」
「え!丸井先輩がそんなこと言うなんて‼︎」
「俺だってそういうときくらいあるんだよぃ」
「とか言って丸井はアイスを馬鹿食いするんだろう?」
「あったりぃ〜!さすが幸村くん」
現在赤也宅にはレギュラー全員がいるはずなのに、主に話すのはこの3人だけでいつもの部室より静かだった。
「…暑さは大敵ナリ」
「仁王君、もっとシャキッとして下さいよ」
「仁王は暑さにも寒さにも弱くて大変だよね」
「それに加えて今年は異常気象だからな」
「こんなときは精神統「真田は黙ってて」…すまん」
こんな日はクーラーをかけ、キンキンに冷やした部屋にこもるのに限る。
「う〜、アイス食いたいっス」
「冷凍庫に入ってないのかよぃ」
「さっき丸井先輩が食ったやつでラストだったんスよ」
「…わりぃ」
一言二言交わすとすぐにグダグダするのが今日のサイクルであったが、さすがにこの状況に飽きたのか赤也がある提案を出す。
「あの〜、誕生日の前借りみたいなのってありっスかね?」
「はぁ?突然何だよぃ」
「いや〜、今夏休みってことはレギュラーの中で次に誕生日来るのって俺じゃないっスか。どうせ9月は先輩たちの修学旅行とかいろいろ忙しくてろくに誕生日祝えなさそうなんで今日に前借りしたいんス」
「えー。この金欠時に誕プレ買わなきゃなんねぇのかよぃ」
「いや、誕プレは9月でいいっスから。とりあえずケーキが食いたいっス!」
赤也の無邪気な笑顔に皆顔を見合わせた。
「で、一応聞くがどんなケーキが食べたいんじゃ?」
「んーと…。あ!駅前のサーティーワンのアイスケーキがいいっス‼︎」
「サーティーワンってたしか今真夏の雪だるま大作戦やってるよな?」
「む!なんだそれは」
「夏季限定でアイスのダブルを頼むと、タダでトリプルにしてくれんだ…。ってそんなことも知らないのかよぃ‼︎」
「まあそう短気になるな丸井。弦一郎は普段サーティーワンのアイスとは全くといっていいほど縁がないのだからな」
「別に短気になってねぇ。ただ驚いただけだろぃ?」
皆最初は渋っていたが、丸井のアイスがトリプルになる話を聞いて支度をし出した。
「んじゃ、ぼちぼち行くかのぅ」
「切原君。しっかり留守番するんですよ?」
「んなガキじゃないんスから心配しなくても大丈夫っスよ」
「本来先輩をこき使うなどとは到底許されぬのだからな」
「う、うぃっす!」
「いや、これは赤也の誕生日だから別にいいんだよ。相変わらず真田は頭が固いよね。嫌になるよ」
喋りながら幸村は笑顔で真田相手にプロレス技をかけていた。その様子に皆さっさと玄関へと急ぐ。
こうして皆が出かけ、赤也の留守番が始まったのである。