夢見がちな絵本たち
□一万打企画!!
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昔から思ってたことなんだけど子供のおもちゃってそれなりに尖ってたり重かったり危ないものが多いんだと私は声を大にして主張したい。
「だからおもちゃを踏んで足首を切っても仕方がない、とお前はいいたいのか?」
『話が早くて非常に助かります古橋さん。』
床に無理矢理座らせられて古橋さんに左足を掴まれてるこの状態。正直逃げたい逃げ出したい。
そもそも事の始まりは私が子供部屋の中を古橋さんと調べてるときだ。
...足を怪我しましたすいません。
古橋さんに黙って痛みを我慢してたはずなのに。
なぜか古橋さんのところに駆け寄っただけで「足見せてみろ。」と言い放たれてしまったなぜばれた。
『やっぱり古橋さんってエスパーなんじゃ、』
「寝言は死んでから言え。」
『死んだら寝言なんか言えませんよね!?』
古橋さんはうるさい、と淡白に呟くと
「歩き方が、おかしかったら気づく。」
と言って長い人差し指で私の切れて血の滲んだ傷口をなぞった。地味に痛い...というかぞわぞわした。
「ふっ。」
『怪我人虐めるのやめません?』
無表情のまま、古橋さんは突拍子もない行動をするからびっくりする。そんなスリル求めてない。全然求めてない。
「救急箱は黒子が持ってたな。」
『はい。』
私がそう頷くと不意に古橋さんに腕を掴まれて引っ張り上げられた。お?お?お?
痛いくらい乱暴に腕を引かれ、そのまま米俵みたいに担がれてしまった。
『あ、あのー...古橋さん?』
「なんだ。」
『これは一体?』
「担いでいる。」
『それは分かります。』
黒子に救急箱を借りに行くんだろう、と古橋さんが呆れたように言う。いやいやいやいや、一人で歩けますけど!?
「お姫様抱っこ、なんてキャラじゃないだろう、お前。」
『私が言いたいのはそういうことじゃなくてですね!?』
...もういい諦めた。
古橋さんは歩き出しちゃったし下ろす気無いみたいだし足痛いのは事実だし、うん。
古橋さんは(最近太って重いはずの)私を軽々と担いだまま歩く。
「お前。」
古橋さんはそのまま口を開くと淡々と言葉を紡ぐ。
「何で俺がわざわざ重いお前を担いでるのか分かってないだろ。」
『色々余計でしたけど図星です。』
私がそう答えると古橋さんがため息をついたのが分かった。
「俺にお前の小さい嘘は通用しない。覚えておいたほうがいい。」
『え?』
「傷、深くは無いが浅くも無い。それに。」
刃物の傷は変に痛むからな、と言って古橋さんは私をゆっくりと担ぎ直す。
『な、何言ってるんですか?私の傷はおもちゃを踏んじゃって、』
「おもちゃを踏んでも足首は切れないと思うんだが。」
...古橋さんには全部お見通しみたいだ。
「痛いだろ。」
『ぜ、全然、』
「正直に言うんだな。」
『今まで生きて来た中で一、二を争う痛みでござります。』
私がそう答えると古橋さんは「刃物傷は見た目より痛む上に治りも悪い。」と言って再び歩き出す。
「大方子供部屋に足元に刃物が飛んでくるトラップでもあったのか。」
『古橋さんマジエスパーですか。』
子供部屋を捜索してたらなんか足元に変な模様があるのに気づかずに踏んでしまって。
そしたら刃物が飛んで来て。
小さい刃物だったし、掠っただけだったから大丈夫って思ってたのに。ていうか刃物飛んでくるとか怖すぎなんだけど。なんなのここもう帰りたい。
『痛かった、です...。』
「傷口を見れば刃物傷ってことくらい分かる。そういうことは早めに言え。」
面倒臭いやつ、と古橋さんが呟く。
...だって心配かけたくなくて。
それに。
『あの、このこと...』
「なんだ?」
『高尾くんたちには黙っておいてくれませんか。』
「怪我はばれるだろ。」
『そうじゃなくて。刃物のトラップのくだりです。』
高尾くん達、変に心配してくるから。
...刃物のトラップとかばれたら特に。
「次からは俺にくだらない嘘をつかないと約束したらな。」
古橋の珍しく穏やかな一言に私はぶんぶんと激しく首を縦に振った。
(俺には分からない。お前が嘘をつく理由が。心配をかけまいとする意図が。)
(あっ、古橋さんがなんか抱えてる...ってなまえちゃん!?)
(私を「なんか」呼ばわりですかそうですか、高尾くん。)
(...なまえちゃん。あんまり軽々しく担がれんなよ?)
(はい?)