みじかいの

□鏡越しのキミ
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「渡草さんって、今フリーなの?」


いつものワゴン車の中。
今日はドタチンがいないので、私が助手席に乗せて貰っている。
このバンにはゆまっち達とアニメイトや何やに行くときに乗る程度だが、まぁ頻度が高いのでここの人達とも仲が良い。
因みにゆまっちと私は付き合っていて、切っ掛けはアニメ話と言うヲタカップルである。


「残念ながらな。
こちとら心に決めた子がいるから」


アニメイトへの道を辿りつつ、渡草さんは答えてくれる。

…うーん、もっとドルオタを隠してればモテると思うんだけどなぁ。
ほら、渡草さんって顔は悪くないし。

そんな思いを込めて


「ドルオタ自重しろー」


と言ってやった。
うるせぇな、って返されたけど、気にしない気にしない。
そんなんで挫けてたら、この車内じゃやっていけない。
何たってここには、重度のヲタク二人が────

───って、あれ。

何か今日二人とも、静かじゃない?
狩沢さんだって、一人言いいながら本読んだりするし。
その一人言に相槌を打つのがゆまっちだし。

そう不審に思っていると、渡草さんが私に耳打ちした。
青信号なのに、危ないよ。
そう言おうとしたけど、渡草さんの言葉を聞いたら何も言えなくなった。


『お前の彼氏、妬いてるみてぇだけど?』


私の彼氏────ゆまっちのことだ。
直ぐ様後ろを向こうと思ったけど、怒っていたらどうしよう。
いつも怒らない彼だから、怒ったら恐いかもなぁ。

だから、“何とかミラー”みたいな名前の車内にある鏡を覗いてみた。
すると、鏡越しにゆまっちと目があった。
少しムスっとしてる、ゆまっちと。









鏡越しのキミ









(…何笑ってるんすか)

(ほら早く、こっち向いてくださいよ)

(…じゃなきゃ、ちゅーしちゃうっすよ。)

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