戦勇(雪飴)

□出会い編
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魔王・・・ルキメデスを止めるために旅にでて間もない頃だった。


出会い編





「へぇ〜、お前すごく強いな!」

静になったこの空間から、突然誰かの声が響いた。
後ろからそう話かけられたのは、周りにいる三下モンスター共を薙ぎ払い、少し気を抜いた時だった。

オレ…シオン、いやクレアシオンは驚き、後ろに飛び話しかけて来たやつから距離をとった。
急いで臨戦態勢をとる。

「あ、ごめん…驚かせちゃったな」

悪い悪いとヘラヘラしながら手をふっている男。
男の格好は、オレンジのシャツに緑の短パン、そして襟や裾がボロボロになっている真っ黒いマントというものだった。はっきり言って、魔王よりも魔王らしい格好をしている。
だが、その男の容姿はというと、柔らかいキツネ色の髪に、オレと同じ様な赤色のはずなのに、どこか暖かな色を持っている丸い瞳というものだ。
ここだけを見ると、格好だけですごく弱そうな男だが…

こいつ、何者だ。

人の気配には鋭いはずのオレにさえ、こいつは気配を全く感じさせなかった。

魔王…ルキメデスによって作られた魔族か何かか?

「そ、そんな見ないでよ。あ、自己紹介がまだだったね。ボクは…う〜ん、そうだな。戦士ロス、とでも名乗っておくか!お前は?」
「…………」
「え、無視!?」

戦士とか訳のわからないことを名乗った男は、この状況がいたたまれないのか慌て始めた。

「…クレアシオンだ」

…先程の警戒心はどこにやら。ついオレは、ポツリと自分の名を呟いてしまった。こいつが刺客か何かかもしれないのに。

その姿が彼奴…クレアに似ていたから。

クレアが使っていた名前と一緒だったから。


「お!クレアシオンって言うんだな!じゃあ、よろしくな、勇者さん!!」
「…は?」

勇者……?
こいつは何を言っているのだ。
俺が勇者?何の話だ。

「だって、クレアシオンって言ったら勇者だろ?だから、勇者さん!」
「…オレは勇者なんて呼ばれたときないんだが」
「え…あ、そうか。この時間的にはまだこいつは勇者じゃないのか…。う〜ん…」
「何をブツブツ言ってんだ」
「あ、ごめん、気にしないで。まぁ、ボクはお前の事勇者さんって呼ぶから!ボクのことは戦士とでも呼んでね。そこの所よろしく!」

全くもって意味がわからない。
というか、なにこいつはオレと名前(とは違うが)を呼び合う関係になろうとしているんだ。何がしたい。
・・・こいつと一緒にいるとオレまで馬鹿になりそうだ。

「って、無視して行くなよー」
「うるさいな。てか、ついてくんなよ」
「いいじゃん、行き先が一緒なんだから。それに旅は道連れってな!」

本当にこいつはオレについてくるようだ。




こうして、一人きりの魔王を倒す為の旅は、よく分からないやつの乱入で二人になってしまった。







(絶対一人になんて、させない)

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