戦勇(雪飴)
□実力編
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この日の魔物はいつもより数が多く、そして強いものが多かった。
実力編
「(くそ、キリが無い・・・)」
心でそう悪態を吐きながら、オレは魔物をなぎ払っていた。
一方、その頃戦士のほうは・・・
「頑張れ〜勇者さん」
戦闘に巻き込まれないようなところでのんきに手を振っていやがった。
「え、ちょっと勇者さんこっちに向かって魔法放たないでよ!危ないだろ!?ってやめて!!魔物までこっち飛ばさないで!!」
「・・・・・・」
自業自得だ。
「無言やめて!・・・って勇者さん危ないっ!!うしろ!!!」
「・・・っ!?」
オレは戦士に気をとられすぎたせいか、背後から来ていた魔物に気付かなかった。
急いで振り返り魔法を放とうとしたが、間に合わなかった。
その魔物の攻撃は俺の体にぶち当たり、思いっきり後に飛ばされた。
ああ、これはアバラの2,3本はいったな。
「ろ・・・っ、勇者さん!!!」
戦士は目を見開き・・・一度オレではない誰かの名前を呼びそうになっていた。
・・・ツクール君がボワリ、と反応した。魔力が生産されて行く。
俺の気持ちを糧に、だ。
モヤモヤした気持ちが広がる。・・・なんだ、これは。
「そこをどけぇ!!!」
戦士が懐から短剣を取り出してこちらに向かってくるのが見える。
そこには見たことも無い戦士がいた。
無駄の全く無い素早い動き。確実に相手の急所を狙う正確さ。体から感じる魔力は、オレや魔王と同等、いやそれ以上かもしれない。
素直に強い、と思った。
オレなんかより、何倍も。
いつもバカみたいに笑い、おちゃらけてる戦士を見てきたオレは、その光景が信じられなかった。ものすごく悔しくなった。そして、
何故か、こいつの全てをオレのものにしたいと思った。
「(ああ、そうか)」
オレはいつの間にかこいつのことが好きになっていたんだ。
バカみたいに笑ったり、よく分からない行動をしたり、怒ったり・・・。
全てが、愛おしく感じるようになっていた。
「(そんなこと、している暇はないはずなのにな…)」
「勇者さん、大丈夫!?」
心配そうにオレのことを覗き込んでくる戦士の息は全く切れていなかった。
体の痛みが取れていく。どうやら戦士はオレに回復魔法をかけたようだ。
「お前・・・強いじゃねぇかよ」
「強いんじゃないよ、強くなったんだ。
ボクだって昔はスライム一帯に苦戦してたよ。」
懐かしそうに笑うその姿は、今のオレにはどうしようもなく愛おしく見えた。