戦勇(雪飴)

□新たなる世界と冒険へ!!
1ページ/1ページ

ボクは次元の狭間から戻り、魔界にあるあいつの故郷に立ち入った。
夢で見た時よりも廃れてないその場所にあいつが住んでいた、と思うと少し懐かしく、それでいて悲しくなる。


「…あ」

色々見て回っていると、村のそばには小さな山があった。
そういえば、クレアさん…というか、クレアさんを乗っ取ったルキメデスが林檎の木、とかなんとか言っていたな。
そちらの方にも行ってみる…と。

「…少し、枯れてるな」

大きく育ち始めてはいるが、この魔界での影響だろうか。枝先など、ボロボロと崩れ始めていた。
これだと実をつける前に枯れ切ってしまうだろう。

「…それは、やだな」

これは、あいつとクレアさんの友情の印でもあるのだから。

ボクはその林檎の木に手を添えると、自分の中にある魔力をありったけ注いだ。
大きく、立派に育つように。こんな世の中に、人生に負けないように。








「…やりすぎた、かな」

いつの魔にか目の前には、沢山の林檎の木が出来ていた。どうやら一本だけに注いだつもりが、魔力が大きすぎて周りにも影響が出てしまったようだ。

「ま、いっか」

ボクは林檎の木に背中を預けながら座った。
体に力が入らない。魔力を一気に放出させたせいだろう。

体内にある魔力ツクール君は既に活動を停止させてある。魔力を生み出すことはもうない。



「長い人生だったなぁ」

思い出してみると、ボクの隣にはいつもあいつがいた。
確かにその人生の中では、あいつのそばにいなかった時期もあったが、それよりも一緒にいた時間の方が圧倒的に長い。
あいつの最後まで、ボクは隣にいれたのだから。

「予定より、大分遅くなっちゃったな」

絶対殴られるな、と頭の隅で思う。うん、絶対に痛いやつ食らわされる。アバラにヒビはいるレベル超えて粉砕されるな。
だから、






「早く行かないと。あいつ、ちゃんと待っててくれてるよな?」


ボクは笑ってその場から姿を消した。
















「…遅いです、よ!!!」
「グフゥ!!思ってた通りやっぱり殴られた!しかも本気で重いやつだ!!」
「当たり前じゃないですか。オレが何年待たされたと思ってるんですか?しかも、あんた嘘までついてたんですね」
「ごめんって…って、嘘?」
「オレがクレアシオンを名乗っていた時の事ですよ。…『またね』って?」
「………」
「確かに、オレにとっては嘘じゃなかったかもしれませんけど、貴方にとっては嘘じゃないですか。貴方はもう、生きているロスには会えなかったんですから」
「それは、そうだけど…」
「…ま、いいですよ。仕方ないですから許してあげます。それじゃあそろそろ行きますか?」
「え?」
「『ボクはもう一度君と旅がしたい』っていったじゃないですか。自分が言ったことも忘れたんですか?そうでしたね、勇者さんは鳥頭でしたね!この長い間に忘れてました!!」
「いや忘れないからね!?てか三歩歩いたくらいじゃ忘れないから!ただ少し驚いただけで…」
「で、どうするんですか?行かないんですか?」
「…行くって、どこに?」
「そりゃあ、新たな物語の始まりの場所に、ですよ」
「いいの?今までのこと、全部忘れちゃうかもよ?」
「まあ、それは仕方が無いことでしょう。オレだって忘れたくないですよ」
「だったら…」
「でも、どんなことがあっても、オレは貴方の隣に必ずいます」
「…ロス」
「で、どうするんですか。何回も言わせないでくださいよ」
「………うん、行こう。ここにいても、何も始まらないもんね」
「分かりました。心の準備はいいですか?」
「うん。バッチリだよ。それじゃあ、」






新たなる世界と冒険へ!!

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ