小説

□デートの裏側
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「ん?」

エアリスは突然後ろを振り返った。

「どうかしたか?」

クラウドが聞くとエアリスは怪訝そうな顔をした。

「なんかユフィみたいな声聞こえなかった?」

そう言われてクラウドもホテルの方を見たが誰の姿も見えない。

「ユフィぐらいの歳の奴がたくさん泊まってるだろうからな。似た奴がお化けでも見て大声出したんだろう」

「ふふっ。そうね。ユフィ、私が部屋から出るときもう寝てたし。さ、早く行きましょクラウド!」

エアリスはクラウドの背中を押した。





その頃間一髪でエアリスの視線を逃れた二人は大きくため息をついていた。

一瞬立ち止まったエアリスにユフィがいち早く気付いてシドを突き飛ばす勢いで側の柱に隠れたのだ。



「ふぅー!アタシの忍の勘ってやつが働いて助かったね!」

「助かったが、いてぇ…」

「ほらシド早く行くよ!今度こそ見失っちゃう!」







エアリスとクラウドがメインターミナルに出ると、係員が何やら叫んでいる。

「さあ、今夜はマジカルナイト!全てのアトラクションは無料になっているよ。あっ、どうです?そこのお二人さん。今からこちらのイベントスクウェアで楽しいショーが始まりますよ」


係員に促されすっかりその気になったエアリスはクラウドを引っ張るようにイベントスクウェアに向かった。


「おめでとうございます!あなた方が本日100組目のカップルです!あなた方がこれから始まるショーの主人公です!!」


イベントスクウェアに入るなり今度は他の係員に叫ばれた。

「はぁ?」

そう答えたのはもちろんクラウド。

「難しいことはありません。あなたは好きにしてくださればショーのプロが話をまとめますので、ささ、こちらへ」

「お、おい」

「わあ、面白そう!早く行きましょ、クラウド」

エアリスは今日俺に何回早く行こうと言う気なんだ、と思いながらされるがままにクラウドは舞台裏へと引っ張られて行った。







「シド、今の聞いてた?」

ユフィは笑いを堪えきれないといった表情で言った。

二人は側に設置されていたデブモーグリの巨大な人形の影に隠れていた。

「おう、あいつらがショーの主役だと?こりゃあ面白いことになるぜ!」

シドはもう我慢ならないといった様子で腹を抱えている。



最前列で見たい気持ちは山々だったがもし二人に見つかるとまずいので人がたくさん座っている中央付近の席に座った。


「ねえ、シド…。端から見たらさ、アタシたちどんな関係に見えんのかな」

「うーん、カップルとか兄弟にしちゃあ歳が離れすぎてるし、親子にしては、ちっと近すぎるな」

だよね、アタシがこんなオッサンと付き合ってるようには見えないよね、とユフィは心の中で安堵した。

「シドってさ、ちょうどアタシの倍くらい生きてるよね」

「おうよ。お前の倍は賢いってことだな」

「ちょっと!!せっかくみんな生きてる場所も目的も年齢もバラバラなのにこうして一緒に旅してるってすごいね、出会えてよかったねって言おうとしたのにさ!そうやって余計なこと言うかなぁ!?もう、取り消し取り消し!」


「その取り消したこと全部聞こえてんぞ」

「シドの部分だけ取り消しってこと!クラウドとエアリスとティファとバレットとレッドとケットとヴィンセントには会えてよかった!」

「何だと!このすっとこどっこいめ!」




二人がだらだらと下らない会話を繰り返していてもなかなかショーは始まらなかった。

シドがどうせクラウドが文句でも言ってんだろ、と笑った。








「ティファ、このこと知ったら、どう思うんだろ」

ユフィが他人のことを気にしたのでシドは少し驚いた。

「そりゃー、ちっとは妬くんじゃねえか?ジェラシーってやつだな」

「シド、もしシエラが他の男の人とデートしてるとこ見たらどう思う?」

「シエラは女房でもなんでもねえって言っただろうがよ!それにあんなノロマとデートする物好きいるわけねえだろ!」





何て下手くそな誤魔化し方だよこのオッサン!
こりゃ絶対好きだな。いや、好きってことに気付いてないのかも。アタシの倍は賢いんじゃなかったのかよ!





ユフィが口には出さずに悪態をついているとまたシドが口を開いた。




「ユフィこそいねえのか?他の女にとられたくない奴はよ」


ユフィは思案を巡らせた。
しかし物心ついたときから彼女が探していたものは彼氏なんかではなくマテリアだった。




「まあ、これからこれから!」




ユフィが自分に言い聞かせるようにそう言うと、ようやくショーが始まった。









内容はエアリス演ずる姫君ルーザが悪竜王にさらわれてしまい、それをクラウド演ずる伝説の勇者アルフリードが救い出す、というものだった。





しかしエアリスはとにかくクラウドはひどいものだった。

セリフは棒読みだし身振り手振りもめちゃくちゃである。

会場からはクスクスと笑い声が聞こえたが、ユフィとシドからすればクスクスどころでは収まらない面白さであった。


「普段、興味ないねとかクールに言ってるクラウドがー!!」

ユフィは笑いすぎて涙が出ている。


「笑い過ぎてベロ噛んだ!いてぇ!」

シドは痛がりながらも笑いを止められずにいた。





しかしラストのアルフリードがルーザの手にキスをするシーンは多いに盛り上がり、結局拍手喝采でショーは幕を閉じた。
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