小説
□孤独の決意
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ゴンガガの朝はよく晴れて、そしてとても静かだった。ユフィはその穏やかな日光を浴びながら夢の世界を堪能していた。集合時間になっても。
ユフィをその世界から呼び戻したのはドアを叩く音だった。続いて「起きて!もうみんな朝ごはん食べちゃうよ!」とレッドXVの声。
ユフィは驚いて飛び起きた。いつもはティファかエアリスが必ず起こしてくれるはずだが今朝はそんな気配すらなかった。慌てて横のベッドを見るとそこにエアリスの姿はない。
ーーーエアリスホントに起こしてくれなかった!!しかもわざわざレッドに起こしに来てもらうってコトは、何か相当怒ってんのか……?
普段優しい者こそ怒ると怖い。ユフィは恐怖で身震いすると、手早く身支度をして部屋を出た。
ドアの前には案の定レッドXVがお座りの格好をして待っていた。
「ねえ、エアリスは?」
ユフィがそう聞くとレッドXVは思い切り眉を寄せた。そればかりか「ユフィ、寝呆けてるの?」とバカにしたように口した。
「それはこっちの台詞だよ。エアリスが寝坊なんて珍しいよね。まだ準備中?」
「は?エアリスならもう部屋にいないよ」
「え?食堂にも来てないよ。だからオイラが呼びに来たんだけど……」
二人の間に沈黙が走った。しばらく顔を見合わせ、そして同時にパニックになる。
「どーいうコト!?何で!?散歩とか!?」
「エアリスが時間守らないでどこかに行く訳ないよ!それにいつもユフィのこと起こしてくれてるじゃないか!」
メンバーの中でも最年少の二人は大いに慌てふためき、大人たちに知らせようとやっとのことで思いついた。レッドXVは風のような速さで食堂に戻り、ユフィは部屋に戻って浴室やベッドの中や、ゴミ箱の中までエアリスを探した。
そしてふと、机の上に見覚えのない紙が置いてあることに気付いた。悪い予感が身体中に駆け巡る。ユフィは破れんばかりの勢いで二つ折りにされたそれを開いた。
「ユフィ!やっぱりこっちにもエアリスいないの。どこに行ったのかな………ユフィ?」
そう言いながらティファが部屋に入ってきた。そのティファの視界に飛び込んできたのは床にぺったりと座り込み、明らかに動揺した表情で肩を震わせているユフィだった。
慌ててティファが駆け寄ると、ユフィは黙って持っていた紙をティファに手渡した。紙には綺麗で控えめな字が並んでいた。エアリスの字だった。それを読んでティファも絶句した。目の前が真っ暗になり、思わずよろける。しかし、動揺している暇もないのは事実だった。
「ユフィ、みんなのところに行こう。立てる?」
こくん、とユフィが頷きティファの手を借りて立ち上がった。二人で食堂まで降りて行き、ティファが仲間たち全員にエアリスからの手紙を読み上げた。
『みんなへ
突然いなくなってしまって本当にごめんなさい。みんな優しいから心配してくれてると思うけど、私は大丈夫。少し、確かめたいことがあるの。勝手に単独行動してしまってごめんなさい。必ずみんなのところに帰ってきます。気にせず旅を続けてください。みんな無理しないで、自分を大切にね。クラウドにも、そう伝えてください。
エアリス』
ティファは手紙を読み終えると元のように二つに畳み、そっとテーブルに置いた。押しつぶされそうなほどに重い空気が場を満たしていた。
「何てったってこんな大変なときに……どこ行っちまったんだ?」
シドがそう言ったがもちろんそれを知る者などいるはずもなかった。
「もしセフィロスが、エアリスが一人でいること、知ったら……」
途切れたティファの言葉の先は口にせずとも全員が予想できた。セフィロスの野望を実現するのにエアリスは少なからず邪魔な存在であることは明らかである。一刻も早く居場所を突き止めないと取り返しのつかない事態になる。
「オイラ、ここからコスモキャニオンの方ならこの中で一番詳しいと思う。とりあえず、先に出ようか?オイラ一人ならかなり速く行けるよ」
レッドXVの提案にティファが頷くと風のような速さで赤色が走り抜けた。もしエアリスがそちらの方向に向かっていればレッドXVが追いつける可能性も僅かにある。
その後、シドはタイニーブロンコで念のためもう一度古代種の神殿跡地へ、ユフィ、ヴィンセント、ケット・シーは住人に目撃情報を聞き込みした後レッドXVとは反対側のコレルエリアの方へ捜索、そしてバレットとティファは引き続きクラウドを看ておくこととなった。