中編・短編
□名もなき罪
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俺は不倫は悪だと思っていた。
でもそんな考えはすぐに覆された。
俺の親父は俺が小学生の時に突然いなくなった。
その時俺には原因がわからなかった。
その一年後離婚届とまだ何カ月にも満たない赤ん坊の写真が送られてきた。
親父は部下の女子社員との不倫の末に子供を作り出ていったのだ。
俺はとにかく親父を恨み、母親を哀れんだ。
俺が中学生になったある日。
その日は急な雨により部活がなくなりいつもより何時間も早く帰ることになった。
そんな日はいつもは友達と遊び時間を潰して帰ったのにその日はなぜかそういう気になれずまっすぐに家に帰った。
玄関を開けたら俺のではない男物のスニーカーがあった。
客でも来ているのかと思いリビングに入るが客ばかりか、いるはずの母親もいない。
母親の寝室の扉が少し開いていた、どうしたのかと思い近づくがすぐに後悔した。
中からは短い悲鳴に似た女の声と男の荒い息づかい、汗のニオイ…。
中学生でもその意味はわかる。
音を立てないように傘も持たずに家を出た。
どんどん酷くなる雨足を気にも止めずただがむしゃらに走る。
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