中編・短編
□名もなき罪
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冷静に考えると先に不倫を始めていたのは母さんだったのだろう。
両親は共働きだったのになぜか母さんの帰りが遅いことが多々あり、朝まで帰ってこないというのは珍しいことでもなかった。
親父は耐えきれなかったのだろう。
その後俺は何事もなかったかのように帰った。
元々子供のことなんか気にする人じゃなかったので帰りが遅かったことには何も触れられなかった。
それから俺はあの壊れた家から出ることばかり考えていた。
高校は寮のある所に入学した。
大学は奨学金やバイトをしながら通った。
母親とは大学に入った辺りからすでに絶縁状態だ。
そんな俺の不倫は悪だとかいう感覚はない。
貞操観念と言ったものも無いに等しい。
現にさっきまでホテルで人妻と密会していたところだ。
恋や愛は所詮まやかし、いつかは終わる。
だったら楽に適当に生きていく。
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