竜胆

□昔々の話 (カイザー編)
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昔々の話。


コンクリートの壁に覆われて一面灰色の部屋。
通気口の風の音がビュウビュウと聞こえる。
そんな部屋。
俺が生まれた部屋はそんな部屋だった。
近くには白目をむいて痛みに気を狂わせた男が横たわっていた。
多分、この男の中に俺はいたんだろう。
気持ち悪い。
俺はこんなんで人間なのか?
それとも俺は狂っているのか?
後ろを見るとガスマスクをつけた人間がたっていた。
すっと男を見たあと俺に視線を向ける。

「生まれたのか……」

人間はそっと俺を抱き上げた。
プラスチック越しに見えた目は冷たく、しかし、奥に渦巻く好奇心が見えた。
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