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□とある昼下がりの保健室 ver.真山
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真山には、若桜の意図が全く読めなかった。
とはいえ、自分の眼前で他の男と名前が唇を重ねているのは(例えそれが医療的な措置であったとしても)耐え難い。

何も深読みしないそぶりで、言われたことを粛々と受け入れる。

真山は若桜から渡された冷たいポカリを口に含むと、彼女の下顎を上げ口が開いたのを確認した後に口移しで飲ませた。

口唇を離し、彼女が嚥下したことを確認すると彼のそれまでの固い表情がほんの少しだけ和らいだ。

(へぇ…。ためらいもなく口移しするんだね。)

若桜は内心で真山の一挙一動を面白がっていた。
あれだけ厳しく、真面目で禁欲的な彼があんな顔をするとはーしかも相手は生徒だ。

「後は任せました。私は持ち場に戻ります。」

普段の真面目な教師の顔をして、真山は保健室を後にしようとした。

「あ、先生。今夜空いてる?」

若桜が声をかける。

「いや、大丈夫ですけど、何か…?」
「じゃあ、飲み行こう?後でメールしとく。」
「わかりました。一ノ瀬先生にも声をかけときますね?」
「うん。じゃ、また。」

若桜は校庭に向かう真山に軽く手を振った。
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