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□夏休みの憂鬱
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(今年の夏休み、真山先生の2年の夏期講習は赤点講習だけなんだ…。)
期末試験返却と同時に出された、夏期講習希望票を見た名前は愕然とした。
藤城学園では、学校主催の夏期講習がある。
講習の内容は赤点講習と希望講習、進学クラス講習の三種類。
今年、進学理系クラスを持っている真山はそちらにかかりきりのようで
他の学年は殆んど持っていないようだ。
去年は、真山の講習会があり夏休みも宿題にかこつけて質問に行ったりしていたのでこんなに長い期間真山に会えないのは初めてだった。
(真山先生に会いたいなぁ…。)
夏休みも中盤に入った8月。
友人たちとも楽しく遊んで過ごしていたが
真山先生に会いたい、けれど会えない。
もちろん、個人的に会いに行けるような間柄ではない。
どこかぽっかりと心に穴が空いたような日々の唯一の癒しは、
先日の酪農体験でたまたまその場をとおりかかった真山も巻き込んで、友人たちと一緒に撮った写真を眺めることだった。
(この真山先生のドヤ顔、かっこいいなぁ。)
友人から、みんなで学校図書館で宿題しよう!と誘いがあったので、二つ返事で返す。
ーーもしかしたら、真山先生を一目見れるかもしれない。
そんな淡い期待を抱きながら。
その日が来るのが待ち遠しく、できる限りの宿題を捌いた。