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□聞こえる、星がぼくらを呼んでいる。
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藤城学園の2年生は、林間学校と称して
ここ、『星降る里』と呼ばれる
天文台もある宿泊施設で2泊3日を過ごしている。

自然科学が好きな白川は、当然この星空に大きな関心を寄せていたので
名前は自由時間に白川を誘って星空探索に出掛けたのだ。

名前と白川は同じクラスで、
会えばそれなりに会話が弾む
ただのクラスメイトだった。

もっとも、名前の方が白川に特別な感情を抱くのはあっと言う間だった。
優しくて、一見頼りないけれど実は頼りがいがあって。
白川の持つ優しさとしなやかな強さを知ってからは彼から目が離せなくなっていた。

だけど、彼は傍目から見てもすぐにわかってしまうほど
あの娘(こ)に心を奪われていた。

あの娘はーーかわいらしくて、おっとりしていて、それでいてまっすぐで。
彼女に微笑みかけられて堕ちない男はいないとまで噂されたこともあったが
悪いことに本人にその自覚が全くない。 

聞けば、四天王・九条生晋が雨の中
わざわざリムジンを降りて彼女を歩いて自宅まで送り届けたとか。
生徒会長・西園寺蓮と二人で温室に消えていったとか。
あの堅物教師、真山恭一郎が
他の生徒からのバレンタインのチョコは受け取らなかったのに
彼女のだけは受け取ったとか。

その上、幼馴染みのガードが
堅すぎて彼女と接点を持つことすら難しいとまで言われ。
もはや高嶺の華となっていた。

白川もそんな彼女に魅せられた一人だ。

下手に想いを打ち明けても玉砕は必至だと判断したことと。
今の、この関係を崩したくなかった名前は
彼と、学校という繋がりが一旦はリセットされるその日までこの想いを胸に秘めておこうと決めていた。

しかし、転機は思わぬところで訪れる。

2-Dのみんなで、七夕ステージイベントの
ベストカップルコンテストを見守っていた時のこと。

彼の友人である鷺坂柊と彼女がステージに現れたたのだ。
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