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□9月25日
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昼休みもどうせ保健室は女子で溢れ変えるだろうと予測を立てた名前は、
あまり誉められることではないが
仮病を使い世界史の授業を抜け出すと保健室へと向かった。

「若桜先生、おはようございます。」

「あ、名前ちゃん。おはよう?」

いつもと変わらぬ若桜にほっとするが机の上はいつもの光景とは違っていた。

「どうしたんですか?その机。」
「ん?ああ、これ?女の子達が誕生日プレゼントに持ってきてくれたんだ。
誰かが、俺の誕生日を覚えて、祝ってくれるなんて…ありがたい、ね?」

机の上には今にも落ちそうなほど山積みのプレゼント。
若桜の隣で腕組みをしていた真山が眉間にシワを寄せている。

「いい加減にしろ。本来教育を与える立場にある教師が生徒に貢がせてどうする。」
「人聞きが悪いなぁ。俺、別に、ねだったり、してないよ?
こう言うことは、女の子の気持ち、でしょう?
生徒の想いは、大切にしないと…ね?
真山センセー。
あ、もしかして僻んでる?」

若桜は真山へ悪戯っぽい笑みを浮かべると、真山は表情を変えずに

「俺は手紙だけは受け取る。物は受けとらん。下手に受け取って、後で賄賂だ何だとは言われたくはないからな。」

とだけ言うと、そのまま保健室を後にした。

「やれやれ。真山先生にも、困ったものだね?
本当に、いつも怒ってばっかり。」

若桜は肩をすくめると、そのまま保健室に鍵をかけてから人のいないベッドに腰かける。

「授業中に来るなんて…どこか悪いのかな?
…おいで。診てあげる、よ?」

若桜の言葉に頷くと、
名前はトコトコとベッドへ歩み寄る。

鍵はかけているが、窓から見えることのないようにベッドのカーテンを閉めた。

若桜の隣に座ろうとすると、
ひざに座るよう促されたので
彼の膝に対し、横向きになるように座る。
若桜は、気を良くしたのかそのまま名前の背中に腕を回した。

さっきまで、他の女の子たちからの
プレゼントに微笑んでいた若桜に。
小さな胸の痛みと、嫉妬を感じていた名前は。
彼が、今、自分だけに触れてくれることにほっとする。

名前の額に頬を寄せた若桜は囁きかける。

「んっ…熱はなさそうだね?
気分はどう?」
「う…ん。大丈夫です。
実は…先生が女の子たちに囲まれてるのを見て、びっくりしちゃって。
それで、先生にすごく会いたかったの。」

普段真面目な名前が、わざわざ授業をサボってまで会いに来るなど余程の事だ。

若桜は少し驚くが、彼女らしい素直な言い分にふわりと微笑む。
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