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□そうだ、映画に行こう。
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程なくして映画館へ到着する。
話題の映画ではあったが、封切りしてから時間が経っていたこともありすんなり見易い席を選ぶことができた。
真山はチケットカウンターで席を選んでから、名前に座席券を手渡す。
「あ、ありがとうございます。」
真山はふっと微笑みかけると
映画館の中へと促した。
ふと、売店の前で名前の足が止まる。
(キャラメルポップコーン美味しそうだなぁ…)
「おい、ぼーっとするな。こっちに来い。」
「はい、すみません!」
いつの間にかほどかれた手を、再度繋がれて。
指定された席へと促されたところで真山の携帯が音を立てた。
「すまない、俺は少し外す。」
マナーやルールに厳格な彼はスクリーンを出て電話の相手と話すのだろう。
そんな真山の生真面目さを微笑ましく思うと、名前は自分の携帯の電源を落とした。
暫くして、真山が戻ってきた頃には
映画上映中の注意が始まっていた。
「待たせたな。これは、おまえにやる。」
「先生、おかえりなさい。
えっ!?これ…本当に、いいんですか?!」
真山に渡されたのはさっき気になっていたキャラメルポップコーンと飲み物だった。
あまりのうれしさについつい顔がほころんでしまう。
「あんなに物欲しげにされたら、誰でも気づく。」
ふい、と伏し目がちに呟く真山に
名前は恥ずかしさと申し訳なさでうつむき、顔を赤らめた。
「予告、か。そろそろだな。」
「はい。」
真山からもらったポップコーンを早速頬彫りながら名前は答えると。
間もなく始まった映画に引き込まれていった。