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□真山先生と向井先生
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とにかく行事や体験学習が多い藤城学園ではあるのだが、さすがに保育士体験まであるのには驚いた。
男女共同参画社会を率先して担える人材を育成するというお題目は立派だが
こんなことまでさせるとはーー
しかも、うちのクラスは受験生だ。
進学理系クラスにまで強制するとは、ほとほと呆れて物が言えない。

それでも、学園が下した決定事項は守らせなければ…真山恭一郎は、溜め息をついた。
既に推薦で進路が決まっている者を中心にメンバーを選び引率をする。

(3年の2学期までこうも行事に縛られるとはな…。)

前の方に苗字名前ーー唯一真山の心を乱す存在、の姿を確認できたことに柄にもなく心が浮き足立つ。
あいつなら…こういうことが似合いそうだな、と思うと行事の多さにささくれだっていた気持ちが自然と凪いで行くのを感じた。

不安そうにしている名前。
自分のクラスが落ち着いたら側について指導してやろうか…と思い彼女の方を見遣ると、すでに彼女の隣には男がべったりと寄り添っているのが見えたので真山の内心が波立つ。
とはいえ、彼女一人にかまけている場合ではないーー
同じく、引率の一ノ瀬と保育園の園長へ挨拶に行くと何事もない顔をして最終確認のミーティングを始めた。

彼女は、どうやら実習生に付き添われているらしい。
真山は舌打ちをして、遠くから様子を見守るようにした。
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